強いペン
イアン・ショーンという男がいる。
ショーンデザインというブランドでペンを作っている男だ。ショーンデザインのペンは、ぜんぶこのイアン・ショーン氏が作っているという。
ステンレスや真鍮、チタン等の素材を削り出し、一本の堅牢かつ、美しく、すさまじくシンプルなペンを作っている。
パーツに劣化しやすいプラスチックなどを使用しておらず何世代にもわたって使い続けられそうな信頼感がある。
そういうペンを作る男がいて、そういうペンがある。
その姿は、ペンというものがこの世に存在する前から存在するペンのようだ。
時代の最先端で活躍する気鋭のデザイナーとかが持っていても様になるし、秘境の神殿の石室の中、太古の遺物といっしょに収蔵されていたとしても違和感がないと思う。そういうデザインであり、年月の経過に磨耗しない、ほとんど魔法のような強さを感じる。
この手に所有して、筆記したい。という気持ちはあるが、手に余るようにも思う。
価値を知った上で購入し、使用する――というより、例えば、どこか遠い国の農園で、作付けの進捗をメモするのにジーンズのポケットからこのペンを取り出して、仲間から「えらく時代がかったペンを使ってるんだな」と言われて、「ああ、俺もよく知らないが外国の友人から贈られてきたんだよ」とか言いながら使いつづけてる。
そういうのがキレイだ。
キレイってなんだろうか。それは、りきみのない必然性だ。自然であること、気がついたら手にしていることだ。
なら、欲しいと強く思ってしまっている時点で、ベストな出会い方は出来ないのか。
そんなことはないと思う。恋愛だって必ずしも友だちから始まるわけじゃない。遠くに見つけて一目惚れして、それからはじまるドラマもある。
ショーンデザインのペンは商品なので、購入することは告白することだ。それはゴールじゃない。必然のことであったのかは、そこからの日々の中で決まっていくのだ。
そんなペンで何を書くのがいいのだろうか。きっと家族のことを綴った絵日記とかを書くのだろう。そういうのがいい。
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