5分間の探検
家族で旅行はときどきするけど、娘はまだ小さいから移動手段は周りを気にしなくてもいいレンタカーがいいよなぁとずっと思ってたけどもう4歳になるし、高速バスに挑戦してみたら全然だいじょうぶだった。
行きも帰りもお話するときは声をおさえていた。何か話したいことがあるときは、席から身を乗り出してこちらを伺って、目があうと、小さな声で、
「ねえねえ、おとうちゃん」
と言ってから話しだした。
外の景色を楽しんだり少しお菓子を食べたり、バス移動を満喫していて、車酔いすることもなかった。
途中、あれ静かになったな、と思って顔を覗き込むとくぅくぅ眠っていたりした。
高速バスは道中一回サービスエリアに停まる。
そのときも娘はよく寝てたしトイレは出発前に行ってたから、そのまま寝かせておこうと思って、ぼくと奧さんで交代で休憩しに行ってバスにもどると娘が起きていた。
「わたしもおそと行きたい」
「えー、もうあと10分くらいしかないで」
「でも行きたいの!」
「ちょっと行くだけやで」
娘とバスを降りて夜の駐車場を、売店に向かって歩く。
「わたし、とうちゃんとたんけんしたかったんだ!」
手をつないで歩きながらそんなことを言う。
売店に着くと、土産ものを見て回った。
「あっ、これおうちにもいるねこちゃんやん!」
「ほんまや。ひげまんじゅうの忍者バージョンやん。欲しい……」
「みるだけいうてたやろ?」
「……せやな」
ぼくの好みをよくわかっている。
ちなみに伊賀のSAである。
文具コーナーには、忍者運勢うらないルーレットペンがあった。
「これは? どうやってあそぶん?」
「ペンのここにルーレットついてるやろ? こうやって回して……」
「めっちゃまわるー! ……とまったで。これなんてかいてるん?」
「末吉やって」
「えー! だいきちがいい!」
「次はとうちゃんの番やで。……あっ、中吉や! いえーぃ! とうちゃんの方がいい運勢~!」
ぼくが調子に乗ると、眉間にしわを寄せた達磨みたいな顔をしてくる。
「じゃあもっかいやろか」
「うん! こんどはわたしまわす! ……こう?」
「そうそう、めっちゃ回ってるやん、いい感じ!」
「…………これは? なんてかいてある?」
「おお! 大吉やん! とうちゃん負けたー!」
「へへへー! さ、そろそろいこか!」
満足したときの切り替えが早すぎる。
とかやっていたらもういい時間。
「よし、バス戻ろう。トイレはほんまに大丈夫?」
「うん!」
バスに戻ると売店でみたものや遊んだことをおかあちゃんに報告する娘。
「いい探検やったな」
と声をかけると、
「うん!」
と元気よく返事した。