「テッド・バンディ」茶番のような映画
概要
★IQ160の頭脳と美しい容姿で司法とメディアを翻弄し、"シリアルキラー"の語源となった稀代の殺
人鬼テッド・バンディ。被害者は30人以上とされ、3度の死刑判決を受けるが無罪を主張。そんな彼
の裏側を唯一殺されなかった恋人の視点を通して描き、観客を予測不可能な迷宮に誘い込んでいく。
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世の中に溢れている犯罪者というのはほぼ我々が想像する以上に何も考えていない暴力的なアホだが、そのイメージを映画という媒体から塗り替えたのがハンニバル・レクター博士であり、現実の世界で塗り替えたのが本作の主人公であるテッド・バンディだ。
爽やかなハンサムで容姿端麗な男が自分で自分を弁護する姿にはある種のカリスマ性が漂う。
本作が意図的に避けたのは明らかな殺人シーンを描かないという決断は大間違いだと思う。
誰が本作で描かれたような人間関係をリアリティを持って観賞出来るでしょうか…この映画で描かれているのはかなり恣意的に歪められた乳繰り合いのみに感じました。
コロラドの裁判所から脱走して再度捕まるまでの6日間だけで女子寮に侵入し何人もを強姦殺人しているその刹那的殺人衝動を抱えた人物像の欠片すらこの映画では描かれない。
誰がその辺の小枝を膣から突っ込み直腸を突き破るような殺し方をするだろうか…その異常性のカケラすら描かないこの映画に私は誠実さを感じませんでした。
テッド・バンディが殺す女性たちにほぼ完璧になんの非もないというところが際立った特徴です。
女性が犯罪に遭遇する可能性をポイントで評価していく時にほぼ0という人たちが被害者なのが彼の異常性を際立たせている。
怪我人を装い声をかけて助けてくれた人を襲うという悪魔の所業。
ほぼセンター分けの女性を襲っているのも彼の特徴だ。
一つだけ良かったのは、将来像を女性と語るときに必ず「海沿いの大きな家と犬」というステレオタイプなことしか言わないこと。
要するに彼にとっては「どうでもいいこと」というのを暗に示していてとても良かったです。
そして今作の見所はあの天才子役だったハーレイ・ジョエル・オスメントが小太りヒゲモジャおっさんとして登場するところ。
独特の垂れ目で悲しげな瞳は健在だ。
我々一般人から見ると無計画であり無軌道な刹那的行動に見えるのだが、彼の衝動的行動は全て「女を犯して殺す為」という一点に集約されているので実は全ての目的を果たしていると言える。
彼のような人間は恐らく誰1人に対しても執着というものをしたことがない。
恐らく自分自身に対してもだろう。
要は、最初から頭の構造が違うのだということを理解しない限りこんな人間とのコミュニケーションは成り立たない。
悲しいことだが絶対に分かり合えない存在というのがこの世には存在するのだが、この映画はまるでそれが可能かのような印象を与えようとしているところに私は嫌悪感すら感じました。