膀胱顛末記。第五話 ~驚愕! 膀胱内に隠された第二の真実
https://note.com/sin_kou_hyou/n/nb7c164bf21a4
の続きです。
尿道口から麻酔ゼリーを挿入されて。
それが効果を発揮するまで待機して。
麻酔がかかったそのあとに、先生が静かに宣告されます。
「じゃあ、カメラ入れますね」
そうしてぐい、と。
麻酔が効いているはずの尿道口から、しかしなにか、確かな圧力を感じさせるものが、ぐいぐいと逆流してくるのです。
同時に、カメラの映像をリアルタイムで映し出すモニターは、一面のピンク色に染まります。
(ああ、これがわたくしの尿道口内 ――なか―― なんだ)
よくエッチなコンテンツでみる、なんちゃらの中と、色合い的には非常に似ているようにも思えました。
(男も女も体の中身はおんなじ色をしているのかしらん)
とかのんきなことを思っていると、喉が勝手に声を発します。
「おごっ」
先生がすかさず教えてくださいます。
「いま狭いとこ通ってますから、違和感あるかもしれません」
違和感。
確かに違和感です。
尿と精液――液体の他には何物も通るようになってはいない尿道から、膀胱へとつながっていく、
そのおそらくは非常に狭いであろう部分を、膀胱内視鏡が、このえげつないビジュアル
https://kitsukawa-clinic.jp/images/cystoscopy1.png
をもって通過していくその感触。
麻酔が効いているにもかかわらず、下腹部から固形となった吐き気が喉元までせり上げられてくるような、
それはかなり強烈な違和感で。
「おごっ」
という、マンガの擬音でしかみたことのないような音と息との混合体が、喉から勝手にでていくのです。
「……膀胱本体の中には出血無いですね。憩室、憩室――あ、入り口ここか」
モニター内の膀胱
(イメージ参考画像)
に、はっきりと穴が開いています。
そこがどうやら、膀胱憩室の入り口のようです。
「狭いな。入るかな――」
「っ――んぐっ――」
「あ、入った」
膀胱憩室の中に入ると、モニタ内の視界が急に悪くなります。
「これ、残尿ね」
――検査前にしっかり排尿したはずだったのですが、膀胱憩室内の尿は完全に排出しきれいでいたようなのです。
<膀胱は収縮できるが、膀胱憩室はできない。ゆえ、膀胱憩室内には尿が残りやすく雑菌が繁殖しやすい>
という、教えていただいた知識がまさに現実であるところを、わたくし目の当たりにさせていただいたわけですが――
「自分の残尿をモニターで目の当たりにする」
というのはかなり気恥ずかしいものもございました。
が、先生はプロですので、一切そのようなことを気にせず膀胱憩室内を内視鏡でぐるり観察され――
「おかしいな、どこから出血してるかわからない――見落としたかな?」
「おぐうっ!」
と、内視鏡を憩室から出し膀胱本体の中に戻され。
「もう一度……あれ? これ――ああ」
モニターでじっくりみせていただき、わたくしも状況を把握します。
「これ、膀胱憩室ふたつありますね」
なんということでしょう!
変形を重ねたわたくしの膀胱には、憩室がふたつ! ダブルで出来ていたのです!
「さっき入ってなかったほうの憩室みてみましょうね」
「あぐうっ!」
「あーーー、ここだ。傷口、出血、わかりますよね」
もうはっきりとわかります。
残尿は第二憩室の中にもあり。
その残尿の海のゆらゆら、赤い煙が揺れているのです。
赤い煙は、赤い切れ目からでています。
つまりはそこが、出血源です。
「ほかは……うん、大丈夫かな」
「おぶぶぶぶぅ」
もう一度憩室&膀胱を丁寧に確認くださり、しかるのち、先生は内視鏡を抜いてくださいます。
「――はぶっ!」
開放感と、なぜかはしらねどな喪失感。
そのふたつが押し寄せてくるなかで、先生が診断をお聞かせくださいます。
・はっきりとした膀胱がん(腫瘍)は認められない。
膀胱がんだとブロッコリー状のぼこぼこが見えるのだが、それはなかった。
・ので、膀胱がんである可能性は低いが、ぼこぼこになってない腫瘍の可能性もゼロとは言い切れない
・ので「出血を止める薬」と「抗生剤(バイキンを殺す薬)」を2週間飲んでもらって、様子を見る
(それで血尿がとまるようなら膀胱炎→完治、といってる可能性が高い)
・前に一ヶ月分処方した「尿の出を良くする薬」が切れた頃に、また来てください。
(再出血があるようなら、再出血あり次第で来てください)
――ということでした。
で。
受診からもうすぐ2週間となる本日現在。
わたくしの血尿は、再発しておりません。
とはいえ、前のときも「抗生剤が切れた次の日」に血尿再発してしまったので、
まだまだ油断ができないことも事実です。
薬が切れても血尿が止まったままに治まってくれるのか。
それともさらなる試練がわたくしの膀胱に襲いかかるのか。
現時点ではわたくしにもまったくわかりませんが――
なにかはっきりとした変化でましたら、
この膀胱顛末記にて、そちらお知らせさせていただければと存じます。