膀胱顛末記~第四話。尿道口から麻酔ゼリー。これは即ち尿道スライムもの体験
の続きです。
迎えた木曜。
わたくしの尿道口にカメラが入る日です。
「食事制限等の必要はございません」とのことではございましたが、それでもひとつだけ、準備が必要となる事項がございました。
準備が必要となる事項――
それは「尿漏れパッド」でございます。
膀胱内視鏡検査――すなわち尿道口から膀胱へと内視鏡(カメラ)を遡上させていくという検査はやはり尿道口に大きな負担をかけるため、カメラの前に麻酔をかける必要があるそうでございます。
で、検査が終わった後。
出血があったら出血や、残尿があったら残尿などが、麻酔がかかって制御できない尿道口から漏れてきてしまう危険性があるそうなのです。
ので、要・尿漏れパッド。
しかしながら、尿漏れパッドはパッケージ売りされている商品であり、
「尿漏れパッド1枚だけください」という買い方はできないようでございます。
とはいえ例えば入り数22枚の
「ライフリー さわやか男性用快適シート 3cc」を購入したとして。
残り21枚にはわたくし、当面の使い道を見いだせなくなってしまいそうなことが、容易に予想されるわけです。
そうなるとかなりもったいない――と思い悩んでいたところ。看護師さんが「生理用ナプキンでも大丈夫ですよ」とアドバイスしてくれました。
ので、帰宅して奥さんに頼みこみ、ナプキンを1枚わけてもらうこととなり。
木曜、検査時のわたくしは
「ボクサーパンツに生理用ナプキンを貼り付ける」
という、今までに経験の無い下着状態で、検査に挑むこととなりました。
病院につきますと、まず指示されるのは排尿です。
これは検尿のために採取する等ではなく、
「膀胱の中に尿が残っていると内視鏡での映像が見づらくなってしまう」
との理由での排尿とのことでした。
ので、ご指示通りに、できうるかぎり一生懸命排尿します。
それがおわりますと検査室に入り、検査着に着替え、診察台に横たわります。
診察台はコレ
https://numazaki.clinic/images/equipment/equipment_03.jpg
です。
診察台よこたわると、腰の部分に目隠しカーテンが引かれます。
わたくしは、下半身側で何が行われているかを確認できない状態となったわけです。
(これは結構つまらないかも)
と内心がっかりしていると、診察台が持ち上がり、足が左右に開いていくではありませんか!
診察台のハイテクさに感動しているとすぐさま先生が、モニターを指し示してくださいます。
モニターには、先生が持つ内視鏡から送られてくる画像がリアルタイムで表示されるとのことで――
つまり、わたくしは、膀胱内視鏡検査を受けながら!
自分の尿道口の中身や膀胱の様子をリアルタイムでモニタリングできるわけです!
これはもう、めちゃくちゃテンションがあがります!
うかれ気分のわたくしに、下半身側から声が響いてまいります。
「ゼリー状の麻酔をゆっくりいれていきます」
――尿道口から、ゼリー状の、麻酔。
このnoteは全年齢向けですので詳細には書けないのですけれど。
わたくしの脳裏にはなぜか
「媚薬効果を持ったスライム」
というワードが瞬時にわきおこってまいりました。
美少年エルフが
「XXXXXからXXXXにされちゃうよぉ!」
と、甲高い悲鳴とも嬌声ともつかぬ叫びをあげるシーン――
そんなシーンで活躍するスライムの姿が、ぼんやりとですが浮き上がってきたのです。
「入りますよ」
――スカポンタンなことを考えている間に状況は進捗し。
「!!?」
尿道口から麻酔ゼリーをいれられたわたくしは……
しかし。
なにも。
感じませんでした。
どうやら尿道口内部には性感のようなものを感じる機構はないらしく。
尿道からスライム――ではなく、麻酔ゼリーが逆流してきても。
特段気持ち良かったり、逆に気持ち悪かったりするようなこともなく
(微妙になんかはいってきてるような……)
程度の、ひどくぼんやりとした感覚しかわたくしは覚えませんでした。
ので、麻酔が効き始めるまでの間ずうっと、
わたくしは
(この世のすべての尿道スライムものはフィクションだったのか……)
と、ひどく残念な気持ちを噛み締めることしか出来ませんでした。
その残念さはわたくしに、
(麻酔もかかってしまったことだし、尿道に関してこれ以上体験できるなにごとかは無さそうだな)
との諦観さえ呼び起こしました。
しかし
「じゃあ、カメラ入れますね」
――その静かな言葉の直後。
わたくしは自分の諦観が、まったくもっての勘違いにすぎなかったことを、体から教えこまれるのです。
(つづきます
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