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医学部入試小論文対策1 「安楽死/尊厳死」
1. 安楽死/尊厳死の定義と種類
安楽死
患者が自らの意思で苦痛の軽減や死を選ぶことを指す。
• 積極的安楽死:医師が薬物などを用いて患者の死を助ける行為。
• 消極的安楽死:延命治療を中止することで自然な死を迎えさせる。
尊厳死
延命治療を望まず、人間としての尊厳を保った形で死を迎える。
2. 賛成意見
・患者の苦痛を軽減
治療不可能な病気で苦しむ患者の痛みや恐怖を取り除くことができる。
• 自己決定権の尊重
自分の人生の最期を自ら選ぶ権利を守るべきだという立場。
• 医療リソースの最適化
治療の見込みがない患者への医療資源を別の患者に振り分けられる。
• 家族の負担軽減
経済的・精神的負担を軽減し、家族にとっても穏やかな見送りを可能にする。
3. 反対意見
• 生命の価値軽視
安楽死を認めることが生命の尊厳を損なう危険性がある。
• 悪用の可能性
社会的弱者(高齢者や障害者)が経済的・社会的理由で安楽死を選ばされる恐れ。
• 医師の倫理観の問題
医師が「命を救う」役割ではなく「命を終わらせる」役割を担うことへの抵抗感。
• 乱用の恐れ
一度安楽死を認めると、条件が緩和され、乱用される可能性がある。
4. 現状と法的課題
• 日本の現状
日本では安楽死も尊厳死も法律で認められておらず、明確な基準がない。
• 諸外国の例
オランダやベルギー:積極的安楽死を合法化。
アメリカ一部州(オレゴン州など):医師の幇助による自殺が合法。
• 課題
法的整備がないことで、医師や家族が不安定な状況に置かれる。
5. 解決策や提案
• 法整備の必要性
患者の意思確認や厳格な基準設定を法的に定める。
• 緩和ケアの充実
安楽死の選択肢だけでなく、痛みを軽減する医療の拡充も重要。
• 倫理的議論の深まり
社会全体で生命の尊厳や終末医療のあり方を議論する場を設ける。
6. 小論文での書き方ポイント
• 序論:安楽死・尊厳死の定義とテーマの背景を述べる。
• 本論:
1.賛成意見と反対意見を天秤にかけて議論を展開。
2.自分の体験や価値観、具体例を交える。
• 結論:両意見を踏まえたうえで、自分の立場を明確に示し、現実的な提案を述べる。
7. 例
<賛成>
安楽死・尊厳死は、患者の苦痛を和らげ、自己決定権を尊重する重要な選択肢だ。治療の見込みがない患者が自らの意思で最期を迎えることは、家族の負担を軽減し、医療リソースの適切な配分にもつながる。一方で、生命の価値を軽視したり、不本意な選択が生じたりするリスクがあるため、厳格な法整備や社会的合意が欠かせない。患者の意思と生命の尊厳を両立させるために、安楽死を慎重に制度化し、現実的な選択肢として考えるべきだ。
<反対>
安楽死・尊厳死は、生命の価値や医療倫理において重大な懸念があり、慎重に考えるべきだ。生命はどのような状況でも尊重されるべきであり、安楽死の制度化はその価値を軽視する恐れがある。また、制度の乱用や社会的弱者への圧力、医療倫理の揺らぎといったリスクも無視できない。患者の苦痛に向き合うには、安楽死ではなく緩和ケアや精神的サポートの充実が必要だ。生命を尊重しつつ、安心して最期を迎えられる社会を目指すべきである。
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