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#13 サラミス海戦勝利の立役者テミストクレス|なぜ彼はアテネを追放されたのか?

こんにちは、クロノ(@chrono_history)です。

サラミスの海戦を勝利に導いたアテナの将軍が、理不尽にも追放された理由を話します。

テミストクレス(前524年~前460年ごろ)


アテネの軍人、政治家です。

紀元前480年、アケメネス朝ペルシアの大群が襲来します。このとき戦った艦隊の主力は彼が提案&準備しました。

大群が押し寄せてくる数年前に、ラウレイオン銀山で鉱脈が発見され用途をめぐり議論されます。テミストクレスは軍船の拡充を提案します。


銀山の使い道を巡る議論では、「みんなに配れ」と主張する民衆が多く、このまま多数決をしたら銀が分配されるところでした。

テミストクレスは来たるべきペルシアとの戦いに備えて船を造るのがベストだと考えていました。

「ペルシア戦争に備えて」と言っても、戦争に参加していない民衆にはリアリティ不足、自分ごととして考えてもらえないリスクがありました。

そこで彼は、遠いペルシアではなくアテネから近いアイギナ島のポリスとの戦争に備えるためとウソをつきます。

一気に流れが「みんなに配れ」から「船を造ろう」に変わりました。

アテネを守るためとはいえ、ウソが許されるかどうかは議論の余地がありますが、大局観に優れるテミストクレスの優秀さが分かりますよね。

ちなみに、彼の一言で議論の流れが一気に変わったように、ほとんどの民衆が大局をみず目先の損得で動いてしまう傾向がありました。

これが、後にテミストクレスがアテナから追放される原因となります。


当時、アテネの軍船は70隻ありましたが、200隻に増加させました。これがサラミ海戦の主力艦隊になります。

作戦の立案だけでなく、婦女子の疎開を提案するなどもしました。

サラミス海戦の内容をざっくり言うと、、、

1.全市民を船に乗せてアテナから退去

2.ペルシア軍がアテナに入場、都市を焼き払う

3.テミストクレスが、アテナは西へ逃げたとデマ情報を拡散

4.ペルシア軍はデマ情報にひっかかりサラミス海峡にやってくる

5.狭い海峡で身動きのとれないペルシア軍に対しアテナは三段櫂船で総攻撃して勝利

テミストクレスのアテナ勝利への貢献度は計り知れないものがあり、それは誰の目から見ても明らかでした。


紀元前470年代、彼は陶片追放(オストラキスモス)に処せられます。

陶片追放とは市民の投票で、僭主※の出現を防止する制度です。

※非合法的に政権を獲得した支配者

僭主になる恐れがある人の名前を陶片に記入し、定足数6000票で最多得票者を10年の間、国外追放します。

独裁者を生み出さないためのシステムでしたが、悪用する人もあらわれて前5世紀末には廃止されます。

テミストクレスは優秀すぎたのです。ゆえに彼が僭主になったらとんでもないことになると考えた。

もしくはテミストクレスの政敵が仕組んだ罠かもしれません。いずれにせよ、陶片にテミストクレスの名が大量に刻まれました。

その後のテミストクレス


アテネを追放されたテミストクレスを受け入れたのは、なんとペルシアでした。地方長官に取り立てられました。

自分を打ちのめした相手でも、受け入れる寛容さがアケメネス朝ペルシアにはありました。「寛容さ」は世界史を学ぶうえでのキーワードです。

長期間存続した帝国や国は「寛容さ」を持っています。これは現代にもあてはまる考え方で、例としてアメリカ合衆国が挙げられます。ただし、現在はその寛容さが失われているように感じます。

彼以外にも、政争で敗れた人々を受け入れています。さすが大帝国、懐が深い。

おまけ


優秀な人材の能力を使うだけ使い、自分に害を及ぼす可能性を感じたら追い出す。これが今回のポイントです。

これは古代ギリシア全般に言えるのですが「平等」が最優先事項なんですよ。だから、優秀な人材を使って最大風速で行かないのがギリシアです。

対してローマは、優秀な人材なら異民族でもどんどん受け入れます。だから最大風速で動けるから、あんな大帝国になったわけです。(逆にいうと人材がいないと全然ダメになるし、移民によるトラブルなど負の面が目立つこともあります)


あくまでも私の感想ですが、今の日本はローマではなくギリシア型だと感じてます。

優秀な人材がいなくても回る仕組みを作りましょう。

↑こんな言い方をします。たしかに、そのと通りだと思うのですが、優秀な人からすると、それ言われたら一気にやる気をなくすと思うのです。

あなたがいなくても良いように回る仕組みを作ってください。

なんて言われたら、自分の能力を発揮できないのですから、何が楽しいのかとなります。やる気をなくすので優秀な人には絶対言わないほうが良いですよ。

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