ひと掃き ひと掃き
3月11日
今朝はしっぽりめです
そんな日もそんな時もある
そんな 今 をゆっくりじっくり味わう
濡れた新聞紙を撒きながら
ほうきで埃を掃きながら
今日の私が想う
無理に元気になる必要もないし
なんでこんな気持ちなんだろうって
理由を探しにいかなくてもいいってことを知る
どんな自分も
抱きしめ 愛し 受けいれてあげよう
自分が自分に
寄り添えて生きていけたら
物事はとってもシンプルになっていく
ゆっくりゆっくりと。
ひと掃き ひと掃き埃を集める
今 の自分を感じながら
そう。ゆっくりと。
生きていればそんな日もある
そんな日があってこそ
生きている奇跡がわかるのかもしれない
静かにわたしの息に耳を傾けて
そっと手を胸にあてて
瞼を閉じる
そんな風に感じるわたしを
ちょっと笑顔になれない自分を
なんだか愛おしいな
なんて
思えるようになってきたなぁ。
今日の自分を
愛でてあげよう
愛する人を愛でるように
大切に壊れてしまわないように
わたしがわたしを感じて
わたしがわたしを生きれたら
なにも怖くないよ
あなたが、おしえてくれた。
泉があると、おしえてくれた。
森のしげみのおくふかく、
草がぼうぼうとおいしげるところ。
石ころだらけのその場所に、
泉があるなんてしらなかった。
わたしの森なのに。
あなたを見ているだけで泉には水があふれだす。
あなたをだきよせると泉は
こんこんわきでてくる。
あまくて、やわらかくて、きよらかな水。
「どうぞ、のどがかわいたら、
いくらでものんでください!」
わたしたちの泉の水を、
たくさんの人にわけてあげましょう。
たくさんの生きものに、
たくさんの草花にわけてあげましょう。
あなたのやすらぎは、わたしのやすらぎ。
あなたのくうふくは、わたしのくうふく。
あなたのかなしみは、わたしのかなしみ。
からだとからだをくっつけると、
たましいとたましいがよろこんでわらう
わたしとあなた
せかいに、うつくしい音色をひびかせるの。
あなたに見つめられると、
わたしはとてもつよくなれる。
あなたのねがおを見ていると、
わたしの不安はきえてしまう。
いつだって、あなたのそばにいたい。
だいじょうぶ。泉はけっしてかれないから。
あんしんして、わたしのそばで、
ぐっすりおやすみ。
とわの庭〝いずみ〟 小川 糸