「ある男」〜人間の臭さを見たい
2022年
平野啓一郎の原作を以前読みました。
すごく面白かったんです。
そして昨日
Amazon Primeで映画版を見たんですが
面白いのは面白いですけれども
本っていいなと痛感しました。
謎を登場人物たちと
一緒に追いかけているようなスリリング。
最後の最後まで
これどういうこと?どうなってんの?
って。
でも映像になると
そういうのって割と簡単に
すっとわかってしまうじゃないですか。
自分じゃなくて映画の中の
登場人物たちが解決していってくれて
ただそれを追いかけていくみたいな。
本だと
自分も考えながら推理しながら
複雑な迷路の中で登場人物たちと
生きてる。
今は映像が勝っている世界ですけれども、
やっぱり活字っていいなって思います。
・・・・・
俳優について
安藤サクラは、
薄幸な中に、しっとりした色気があって
しかも
安藤さんの持ち前の明るさ、お茶目さが出ていて、
男を惹きつける匂い
出してるなと思いました。
窪田くんは
不幸を背中にドカンと背負っている
雰囲気を醸し出すのは
大変だったと思います。
柄本明は、気色悪すぎて
この人いなくなったら
誰がこのポジションにつくの?
希少価値。
・・・・
1つ気になったのは、
弁護士役の妻夫木聡。
この人、
何やっても善人で好青年。
絶対悪いことしないって思わせますよね。
映画「悪人」でもそうでした。
悪いことをしても、
"ううん、あなたは全然悪くないわよ゛
とおばさまに言わせちゃうような。
そう思わせるとこが、薄っぺらい。
(あ、最近でもそういうのあるなあ。
なんだか怪しいのに
好青年すぎて
みんなで庇っちゃう的な、、、)
まぁそれはその人の持ち味だから、
文句を言ってもしょうがないん
ですけど
そして
日本人はみんなそういう人が大好きで、
求めているとは思いますけど
そういう人が、
この映画の中にポンと混ざると
二元論になってしまう。
つまり、
妻夫木だけが善で
周りは悪。
でも、
そんな世界ってこの世にはなくて
最後の方で真木よう子が浮気していた
らしい的な場面が出てきますけれど
原作読んだら、
弁護士のほうも、
未亡人に
ちょっと恋心を抱いていて
ひょっとしたら、あの人と自分は…
みたいな、そういうものも感じられたんです。
まあぼやかして描かれていましたが。
スケベ心を抱いていないようで
ビジネスだよという顔して
実は奥底では、
もしかしたら、この人とチョメチョメ?
みたいなことも考えていたりするのが
人間の阿呆なところなんじゃないかなって
思います。
そんな人間の臭さっていうか
どうしようもない、だめな部分を
役者の中に見たいなって思ってしまうんです。
そういうのを出せるか出せないかが
役者の力量なんじゃないかと
偉そうに思ってしまいます。