フリーアドレスの導入を志願する
僕の会社は、基本的には昔ながらのひな壇とシマ制度の組み合わせの、旧来型の座席配置ですが、固定席を持たないフリーアドレスについても、数年前から、一部の職場で試験的に導入されています。
働き方改革推進部門としては、来年度は一気に拡大していきたい意向のようで、フリーアドレス化を希望する部門を社内で募集することになり、僕の部門は手を挙げることにしました。
フリーアドレスについては、5割近くのオフィスで導入されているとの調査もあり、社会全体では進んでいるようですが、うちの会社のように、全社的に進んでいない中で先行して導入するのは、いろんな意味で大変です。ただ、僕としては、次の理由で、手を挙げようという判断をしました。
1.備品類の新調による若手のオフィス環境の改善
かなり不純な動機ですが、現在の机や椅子をそのままでフリーアドレスにはできませんので、オフィスの備品はフリーアドレス仕様に新調されることになります。
オフィスの備品は、大事に使われており、おそらく30年近く使われ続けているような机は多くありますし、デスクチェアも壊れると新しいものに替えてもらえますが、
部門長とかでなければ、倉庫にストックされているお古がよこされることが多く、新品のデスクチェアは異動の際に奪い合いになります。デスクチェアを自前で購入している人もあるぐらいです。
また、机については、部門長が執務スペースと収納の引き出しの数が多く、若手は部門長の半分の広さであり、出世すごろくを上がらないと、執務環境がなかなか改善されないという環境にあります。
このため、フリーアドレスにすることで、特に若手の執務環境を改善したいと考えています。
2.別室を多く持つ部門であること
僕の部門は、部門長のいる本体オフィスとは別に、分室や作業部屋を多く持っており、実質的に複数の座席を持っている人も多いです。
当然ながら、フリーアドレスになると、本体オフィスの座席数が削減されるわけですが、トータルとしては座席数が確保できそうなので、他の部門に比べて、何がなんでもテレワークに社員を一定数追いやらないと、座席が足らない、ということはないように考えています。
3.ある程度チームごとに分かれても組織が回ること
前に僕が部門長をしていたところは、最前線の戦場のようなところで、常に全員野球でしたし、部門長が全体を視野に入れてリアルタイムで物事を動かさないと、戦線が崩壊しかねない環境でした。
今の部門は、ある程度チーム内で完結する業務が多く、いきなり攻め込まれることはないので、僕自身にリアルタイムに情報が入らなくても、何とかなります。来客や電話もあまりないため、本体オフィスに人がいなくても、特定の人に負担がかかるようなことは、あまりないです。
一方で、職場をフリーアドレスにすることによるデメリットもあると思っています。
1.居場所の流動化によるリスク
固定席がないことによって、自分の居場所が定まらず落ち着かない、毎回異なる場所に座ることで、物の管理が難しくなる、重要な資料や個人情報の保管にも工夫が求められ、業務効率が低下するリスクもあります。
2.社内コミュニケーションの不安定化
完全に自由な座席選択を認めた場合、チームのメンバー同士で顔を合わせる頻度が少なくなり、チーム内の一体感が損なわれる可能性があり、ある程度のルールは必要になると思います。
3.心理的負担の増加
常に新しい環境に順応することを求められるため、特に人間関係が不安定な、異動直後の時期は、心理的なストレスが強くなることが想定され、席が離れても、少なくとも同じチーム内でサポートができるような体制を確保する必要があります。
ただ、現状のフリーアドレスは、旗振り役のデジタル部門と、オフィスが新しくなることで無理やり導入された部門の、ごく一部にとどまっており、とても全社的に参考になるような事例ではありません。
このため、導入に向けたハードルが低い僕の部門において、実情にあわせたフリーアドレスの運用について、試行錯誤を重ねることで、いわば「普通の職場」にフリーアドレスを普及させる試金石にしたいと、考えています。いずれ来る波であれば、先に乗っておいた方が楽です。