養分となるリスクの高い中で
昨日、10年国債の入札があったのですが、落札金利が早くも上限の0.5パーセントに到達したようです。現在は日銀が0.5パーセントの指値で国債を買い入れているため、国債入札に参加する金融機関も、また、国債を売買する債券市場全体も、日銀が最終的に0.5パーセントで引き受けてくれることを前提に、リスクをあまり意識せずに参加しており、ある意味、面白みのない市場になっています。
ただ、これは国債を持ち続けず、すぐに売買するという前提での取引であって、もう少し長いスパンで売買する投資家からすると、早くも金利が日銀のコントロールの上限に到達したことに加え、日銀は長きにわたって固定してきた金利変動幅を、年末に予告なく拡大したという事実がありますので、こうした金利の動きを受け、日銀は再び変動幅を拡大すると考える見方が高まります。
そうなると、金利がこの先も上がっていくという相場観を持つのが一般的であり、であれば、ここで国債を購入しても、金利が上がれば価格が下がり、結局、売却時に損失が出てしまう、ならば、待ってみようと考えたり、このまま金利が上昇すると、手持ちの国債の評価損が拡大するため、早く売却しようという動きが強まります。国債の入札は新規発行分ですが、その前後の年限には、過去に発行された国債について、相対の取引をしている流通市場があり、そこで売買される金利は、日銀は抑え込んでいる10年国債に比べて高くなり、金利の歪みが再び拡大していく、そうした方向になりかねません。
金利の不穏な動きに加え、株価の下落、物価の上昇、為替の変動と、お金に関する漠然とした不安要素が満載であり、よほどお金に余裕がある人以外は、何か行動を起こさなければという気持ちになりますし、既に投資をしてきた人も、株価の下落でダメージ受けていたりします。加えて、政府による金融取引の非課税枠を拡大するような改正が行われたこともあり、世の中のこうした動きをもっともらしく語り、それを梃子に過度に不安を煽りつつ、お金を確実に増やせる投資法とか、投資先への勧誘をする輩も、必ず出てくると思います。そうした輩につかまれば、養分となることが確定します。
昨今の状況は、投資をしてきた人にも、投資をしていない人にも、厳しい経済環境になりつつありますが、そうした中で、さして努力もしていない中で、美味しい話がやってくることはないわけで、ここは、これまでの投資スタンスを変えず、やみくもに損切りせず、美味しい話は飛びつかず、投資をはじめたい人も、まずは手数料の低いネット証券のバランス投信の積立からはじめるなど、浮ついた気持ちになる時こそ、手堅く動いていきたい、これは自戒を込めて、肝に銘じたいところです。