空をみていたボクが、前をみるようになった話
彼と出会ったのは
もう10年以上前になるだろうか。
同郷で同じハウスチームで踊り、
夢を追いかけて、世界を飛び回っていた。
ちょうど、一年前に家業を継ぐと
外国人の奥さんをつれて帰ってきて
周りをビックリさせた。
昨年、第一子が産まれ、
今日、コロナ禍ではあったが顔を見に行ってきた。
「ハウスのステップがちょうど縦回転の運動で
赤ちゃんには良いんですよ」なんて言って、
ステップを踏みながら赤ちゃんをあやし二人で笑いあった。
すぐ帰ろうと思ったが仕事の話を聞いていると、
あっという間に1時間半が経っていた。
家業ではあるが、都会と田舎の違い
二代目としての責務
従業員の声
自分の無力さへの失望感に苛まれていた。
その話を聞いて、
自分が新潟にUターンした時のことを思い出していた。
母の脳梗塞などを理由にUターンすることを決め
仕事も希望通りのところが見つかったと思った。
でも、現実はやはり甘くなく
東京で働く自分を捨てきれず
周囲との疎外感を感じた。
17年という歳月は、一人の田舎者を、都会人にするには十分な時間で、新潟に帰って初めて自分が東京人になっていることに気づいた。
そして、自分に対する無力感をずっと抱えていた。
そんな時は決まって空を眺めていた。
その後、今の社長に声をかけてもらい
新潟県柏崎市、に移住することにした。
ちょうど自分の無力感が身に染みていたから、
肩の力が抜けて周りの人たちの顔が
見えるようになっていた。
誰かに期待することもなく、
誰にも期待されない。
のびのびとした中で、
自分らしく生きることを大切にした。
空を見ていたボクは
いつしか、仲間と前をみるようになった。
この街のその先を、
自分の未来をみつめるように変わった。
Uターンとか移住は簡単な事ではないと思う。
描いていた夢みたいなものではないし、
生まれ育った土地でさえ、
しばらくすれば知らない土地に変わる。
でも、何も期待せず、
希望を持たずに生きていたとしても、
助けてくれる人はいるし、
心が動かされるモノは
きっとあるんじゃないだろうか。
ダンスの後輩は自分と話せて良かったと喜んでいた。
ボクは彼のあがいてる姿をみて、父としても、二代目としても初めてカッコイイと思った。