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音楽を録る

レコーディングは本当に面白い。

7枚目となるソロアルバムを録音中なのですが、今回は楽器が前回と違ったりマイクを変えたりして、かなり新鮮です。

前作『Another Frame』では、自分が考えている「アコースティック・サウンド」というものをほぼ録ることが出来たので、4作目から進めてきたその方向性は一旦終了としました。

『Another Frame』Amazonで買えます。

今回ももちろんアコースティク・サウンドには違いありませんが、よりドラマを再現するというか、前作が「佇まい」を捉えているとしたら今作は「言葉」を感じさせるような作品にしたいと考えています。


ところで

私がライブの時にいつも考えているのは、お客様に
「この場に来て良かった」
と感じてもらいたいという事です。

自分は「旗を振る」のが嫌いなので、自分の音楽や活動について誰かの賛同や同意を得たいとはほぼ思ってないんですけど、

ライブの客席にいて、何かしら合点がいったり、視野が変わったり、笑ってしまったり、印象に残ったり、そういう心の動きは本当に大事だなと思っています。

レコーディングも同じだと考えていて、「より良い演奏をする」ことより「あの感じを音にしたい」という方向が、私自身は強いタイプだと思います。

「あの感じ」
というのが自分の中に色々あるんですね。

・マーラー第9のあそこのティンパニのような低音を出したい。

とかは音楽繋がりなのでわかりやすいのですが、

・本割で一方的に負けた貴景勝が、決定戦では見違える立ち合いで圧勝した時のようなCメロの入りにしたい

・ガードナーのエッセイのような、もっともらしさを出したい

・○○さんと話した、あの時の心の動きを表したい。

とか、まあ色々とあります。
自分はかなり真剣にそれらと向き合って、音に表してきたつもりです。そのためには、ライブのような「自分とギターだけ」では不可能です。
マイクやアンプなど良い機材が不可欠であり、何より良いエンジニアがいてくれなければ何もできません。

私がお世話になっている林慶文さんとは、こういう具体的なイメージについて共有する事はほとんどありません。
何故なら、私がどういう方向に行こうとしているのかを常に観察してくれて、沿うような音像を後押ししてくれるからです。説明する必要が無いんですね。
これはレコーディング現場という極限状態にいる演奏家にとっては、本当にありがたい事です。


今作では今のところ、自分の中の様々な「あの感じ」がとても良い状態で再現できています。

このアルバムを聴いて、何かしら合点がいったり、視野が変わったり、笑ってしまったり、印象に残ったり、そんな心の動きがたくさん生まれる事を今から期待しています。

伊藤賢一
https://kenichi-ito.com/

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