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ホセ・ラミレス(1968)調整

松本在住のギター製作家、中野潤さんの工房にお邪魔し、先月仲間入りしたラミレスを見ていただきました。

中古で入手したギターは、必ず製作家の方に見ていただく事にしています。

表面板やネックなど全体的な状態だけでなく、私が最も大事だと感じるのは『過去に施された修理への評価』です。過去にどのような手が入っているのかを知らないままでは、安心して弾き倒すことはできません。
それにはどうしても専門家の判断が必要なのです。

表面板のネック脇の割れ補修など数箇所リペア跡がありましたが、おおむね問題ない処置が施されており安心しました。
しかし…

見た目は気さくなお兄さんですが、極上の名品を生み出す孤高のギター製作家「中野潤」
内部を隅々まで調べると・・・・
ブレーシングに隙間が!ヘラの先端が入り込んでしまっています。

表面板の、低音弦側のブレーシングに隙間を発見しました。
ラミレスは、低音弦側のみブレーシングがアーチ状に施されていますが、アーチの根元の箇所、つまりしっかり接着されているべき箇所のサイドに近い付近がはがれています。これだとおそらくブレーシングをアーチ状にした効果も減少してしまう。
ということで、ニカワにて再接着していただきました。

ニカワを温めているところです。

ニカワを塗り込み、内側にはつっかえ棒をかませ、外側からはクランプで固定。
両面から圧着します。

ニカワを塗り込んで圧着して3時間ほど置き、クランプをつっかえ棒を外してから72時間は弦を張らずに更に乾燥させます。

患部がしっかりくっついています。アーチ状のブレーシングも確認できます。

これでようやく本来の状態に戻りました。
弦を張って音を出してみてびっくり。こんなにも音の抜けが増すとは!

ラミレス特有の豊かさに加え、スパニッシュらしい軽さも加わりました。表面板の機能が正しく発揮されているのがわかります。ヴィンテージ特有のこなれた音色も相まって、いきいきと生まれ変わりました。

たまらんです。

やはりその道を極めた人に見ていただくことは大事です。

ギターの良い状態をキープすることは、愛器への「礼儀」であると思います。
今後も素晴らしい製作家の皆さんのお世話になりながら、弾き込み育てていきたいと思います。

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