私たちの遊ぶべきクトゥルフ神話TRPGとは


昨今、ネット卓なるものが多く普及し始め、筆者も様々なキーパーの元でプレイさせてもらった。

しかし、その多くはこのゲームの応用的なところが抑えられていないように感じた。

これから列挙するのはキーパー側の問題点だ。

確かに、CoCにおけるマスタリング術は難しい。が、より良い時間を過ごしたいと思ったなら目を通してほしい。


前提として、この項では「新クトゥルフ神話TRPG」をDiscordで初対面の人間と遊ぶ際の内容になる。

主にXや公式鯖で募集した際の形式だ。

なので、特定の少数コミュニティのみで既に楽しめている人間はこれからの話を読む必要が無い、

どのような卓でもそのプレイグループが楽しめているのなら、それが一番だ。


①導入が適当


TRPGは"納得感"のゲームであると思う。


少し前に白い部屋系のシナリオがpixivで流行った経緯がある。

ストーリーの背景にニャルラトテップが存在するのは構わない。

だが、彼の神聖を無視して「ただ面白いから白い部屋に閉じ込めた」などは背景としてそぐわない。

それはクトゥルフ神話TRPGの趣旨がおぞましいクリーチャーと遭遇するものであり、脱出ゲームをするシステムではないからだ。

公式シナリオをひとつひとつ見ていっても、単調であるにも関わらずワクワクする背景が多い。


また、正気度ロールが一切ないシナリオがあったとしよう。

これも先ほどと同様で、クトゥルフ神話TRPGでおこなう必要があっただろうかと感じる。

これらはクトゥルフ神話TRPGを遊んでいる"納得感"を薄める理由の1つである。

すべての事柄に理由を紐づけてほしい。


また、この納得感を突き詰めていくと「探索者同士がなぜ一緒に行動するのか」の壁にぶち当たるのだ。

もちろん理由はいくらでも考えられるが、ここでは今一度面白いものを検討してほしい。

一番つまらないのが「危険だから」「効率がいいから」だ。

これらは探索ファーストな考え方で、ある種の楽しみ方を無視している。

今一度、探索者同士の関係性を構築し、情報共有以外の会話もしばしばすべきだ。

また、NPC側からも探索者に情報以外の話(探索者の背景情報など)を振っても良いのだ。

探索者の新しいバックストーリーも生まれるかもしれない。


ここで冒頭に書いた導入の話に戻ってくる。

探索における動機付けも同じくらい重要と考える。

キーパーがここをおざなりにすると、プレイヤーはそもそもの探索における行動方針を決めづらい。

また、一番よくないのは探索者全員をいきなり場面に放り出すことだ。

これは、「そもそも今まで何をしていたのか?」「全員が今集まったのか?」など探索者同士で話す前に不自然なポイントが多い。


職業に合わせた個別導入がおすすめだ。時間やシーンも定めておくと尚よい。

警察や探偵のPCから済ませてしまい、他のPCを徐々に参加させていくやり方がベターで遊びやすい。

特に、公式シナリオはかなりカスタマイズ性に優れている。

導入パートはプレイグループに合わせてどんどん改築すべきだ。


また、エンディングも同様だ。発狂しているなら探索者たちのその後も描写しよう。

ここはとてもホラー的に遊べる場所だ。マスタ描写だけで終わらせるのは勿体ない。


②クリーチャーの描写が寒い


様々な募集に飛び込んで遊んだが、熟練者たちはこのゲームがホラージャンルであることを忘れてしまったのだろうか。

ミ=ゴの語尾はミ=ゴではないし(そもそも喋らないし)、ティンダロスの猟犬のイラストにいらすとやの犬の画像を使うな。

とにかく、一度基本に立ち返ってほしい。


夜道のゾンビ一体を出す場合、あなたならどのようにするだろうか。

クリーチャーをルールブックに記載されている名前のまま使用してはいないだろうか。

「暗闇の中から赤黒い眼がこちらを見ている」「ひたひたと足音が近づいてくる」

など、ワクワクさせるような描写ができているだろうか。

たかがゾンビ一体だからといって、手を抜いてはいないだろうか。


名前と描写を工夫するだけで、慣れたプレイヤーでも正体を掴むのは難しくなる。

これらのノウハウは新マレモンに載っているし、日本語の怖い表現は奥が深い。これらを使わないのは勿体ない。

こういった表現の幅はやはり御大の原作小説から学べる。

原作は読みづらいと不評だが、最近はコミカライズ版もでてきて読みやすくなっている。


③難易度が適切ではない


これも前述の納得感に繋がってくるのだが、あまりにシナリオクリアが簡単だった場合、達成感がない。

シナリオボスが拳銃で一撃で死んでしまい、手番が回ってこずにゲームが終了することもある。

こういった事例は起こりうることだが、劇的とは言い難い。

マスタリングは常に面白い展開になればこそを意識すべきだ。

ダイスの結果がどんなものでも、プレイヤー全員が納得感に欠けるのであれば捻じ曲げてしまえばよい。


つまり、エネミーのヒットポイントはなるべく隠すとよい。

そして、ある種の誤差は現場で操作しよう。もちろんやりすぎは禁物だが。

完璧なロールプレイと共にダメージを与えた結果、HPが1残ってしまったのでは場がしまらない。

こういった場合は倒したことにしてしまった方がよい。逆も然りだ。

また、戦闘のバランスは、パーティメンバー1人を殺せるか否かほどのボリュームにしておくと丁度良い。


これはプレイヤーへの小言だが、ダイナマイトの扱いに関しても同じことが言える。

これらはここぞという場面で使うから映えるのであって、毎回同じ手法を取るのは芸術点が低い。

ここまではマスタリングに関して書いたが、プレイヤーはいわゆる"魅せプレイ"を心掛けるべきだ。

クリティカルやファンブルを出したなら、場が盛り上がるようなロールプレイを提案しよう。

戦闘中、どのような攻撃をしたのか、プレイヤーからも描写しよう。

ダイナマイトの扱いが上手いプレイヤーになろう。


④なぜか海外の未訳を好んでいる


君はなぜそれが好きなのだろうか。

他に誰も遊んでいないプレミア感からだろうか。


正直に伝えると、素人が翻訳しているのも相まって、描写が面白かった試しがない。

なんなら伝わりづらいところが多く、コミュニケーションのテンポ感が悪い。

素直に、国産の面白いシナリオで遊んでほしい。


⑤描写をしない


探索者ひとりひとりの描写をもっと大事に扱おう。

あなたはセッション中、探索者たちの名前を何回呼んだだろうか。

一度も呼んでなかったりしないだろうか。


描写は、ダイスの結果が出た時と、情報を得る時に"毎回"おこなうべきだ。

これができていないキーパーが大勢いる。

もちろんくどい場合など例外もあるが、基本的にはしつこいほど描写しよう。

ダイスに成功したなら、どのようなセリフを言うのかロールプレイさせてみよう。


⑥探索者の死を恐れるな


主に、プレイヤーに対しての項となる。

TRPGはある種プロレスなゲームである。

探索者が全員死亡した結果、それがドラマチックな展開になるならそれは大いに受け入れるべきだ。


プレイヤーが生に執着するのは当たり前だ。だが、それは本当に卓全体で見て"面白いのか"今一度考えてほしい。

確かにこれが通常のコンソールゲームであればその方法は正しい。

しかし遊んでいるのはTRPGだ。市販されているゲームと違い、探索者のドラマ性は自分たちで担保しなくてはならない。

シナリオのドラマ性に頼ってはいけない。シナリオから見たらあくまで探索者は部外者であるからだ。


もちろんTRPGの遊び方は千差万別だ。ここに書いてあることは偏見にまみれている。

しかし、あなたに幾ばくかの好奇心があるのなら、見え見えの罠に突っ込んでほしいし、耐久力が0になったならそこで死亡することも検討してほしい。



総じて、私たちの遊ぶべきクトゥルフ神話TRPGとは。

探索者の背景を掘り下げ、より狂気的なドラマを生み出す事なのではないか。

特に、新版になってその色が濃くなったように感じた。

キーパーは決してシナリオに書いてあることをそのまま垂れ流すマシーンにはならないでほしい。

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