【連載第1回】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHI『Coffee』について聴く(1)
「『ももクロを聴け!ver.3』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHIの音楽について聴いてみることにした」*1の第二弾。今回は『Coffee』について聴いてみることにしました。収録されたリード曲「Blow Your Mind」がこれまでの最速で25万再生を達成するなど注目のミニアルバムだが、前回のアルバム『Drop』に続き、現在のAMEFURASSHIの音楽性や戦略がますますはっきりしてきたようなところがある。(ZOOMにて5月24日収録)
中西理(以下中西) インタビューという場では異例なのですが、最初に私がAMEFURASSHIにこだわるようになったきっかけというかこのように個人でのインタビューまで企画して彼女らを応援したいと考えている思いを少し話したい。私が最初にAMEFURASSHI(当時はアメフラっシ)を最初に見たのは3Bjuniorの解散ライブ。3Bjuniorは解散したこととさらにスタダ(スターダストプロモーション)の社長(当時)である「理事長」が「川上は失敗した」などとtwitterでつぶやいたこともあり、モノノフの一部から、かつての3Bjuniorのプロジェクトそのものが失敗だったように思われている節もあるが、当時応援していたファンには申し訳ないが当初から「育成グループ」としていたわけだから、26人という大所帯のグループをそのままデビューさせようという気はない。いわば既定路線だと考えていた。そして、そこから最後に選び出された4人(発足当時は5人)がAMEFURASSHIで、その意味ではあえて言えばこのプロジェクトの本命、これを生み出すために磨いてきた究極体だ。そして、『Drop』に続くこのアルバムでそのポテンシャルがついに全面的に展開されたと考えている。いささか大げさな前振りとなったが、ここから堀埜浩二さんにこのアルバムについての分析をしてもらいたいと思う。
スタプラ論からスタート
堀埜浩二(以下堀埜) アルバムやAMEFURASSHIの話をする前にまずスタプラ(スターダストプラネット)全体の話をしようと思います。アイドルの一番アイドルらしい「ぶりっこ」みたいな部分はスタプラの中では超ときめき宣伝部が一応担っていて、とき宣と例えばFRUITS ZIPPERとそんなに差がないところまで来ている。ももクロが全体の中央にいるのですが、とき宣と逆サイドがKーPOPとか洋楽志向、今の洋楽というのは欧米の洋楽とアジア向けのものがものすごくないまぜになっていますが、そこに一番振り切っているのがAMEFURASSHIだと思います。アメフラととき宣のジャンルの幅というのは同じアイドルといってもかなりの幅なんです。それがスタプラというひとつの組織でやっているというのはなかなか面白いことだと思います。
中西 たぶんなんですが真ん中にいるのがももクロだったというのが大きいんじゃないでしょうか。
堀埜 そういうことですね。
中西 ももクロの場合、いろんなところに足場を延ばしているから、どこからもめちゃくちゃ遠いということがない。
堀埜 結局、先日もお話ししたようにもうやってないジャンルないんちゃうかと思うぐらいにほとんどの音楽ジャンルにももクロは首をつっこんでいる。
中西 ハードロック、プログレもメタルもパンクもアイドルソングもKーPOP的なのもラップもEDMも全部やっていますからねえ。
堀埜 だから、ももクロがセンターにいることでその両ウィングというのをどこまで広げていってもどこかに収まるみたいな部分をスタプラは持っている。それゆえ、アメフラというのはある種アイドルからすると一番ぶっとんだ部分を持っているグループといえそうです。
中西 結局アイドルというのはいまいろいろ出てきてしまったせいで、自分たちがアイドルだと名乗るかどうかみたいな区別しかなくなっています。でも、昔風の分類であればAMEFURASSHIはいまでもそう呼んでいる媒体はありますが、ダンス&ボーカルグループですよね。
堀埜 ダンス&ボーカルグループとかガールズグループとかいう呼び方をして、あまりアイドルというような言い方はしなくなっている。
中西 AMEFURASSHIは歴史的に見たらSPEEDとかMAXとか主としてAVEXとかが生み出してきたグループの系統に近い。www.youtube.comwww.youtube.com
堀埜 やっぱり、LDHに楽曲を提供した人が噛んでいて完全にAVEXの音にはなっていますよね。だから、中西さんの話を聞いて思ったのはこのアルバムについてはまず1曲ごとの音楽の中身というよりはまずアルバムの音楽の大きな背景の部分の話をする方がいいかもしれないと思います。
中西 そうですね。
AMEFURASSHI楽曲の音楽的ルーツ
堀埜 よくAMEFURASSHIというのはK(ーPOP)の文脈で語られたり、ガールクラッシュと言われることが多いのですが、それのちょっと前のすなわちすなわち90年代のルーツは基本的にはブラックミュージック、R&Bとかです。今の若い人はR&Bとは言わないでRBって呼んでるようですが。昔のR&Bというのはそこそこモータウンとかスタックスとかそういうものでしたけれど、今の若い子ら聴いているRBはそれこそTLCとかビヨンセとかその辺。あるいはそれ以降の話なんですね。ということはほぼほぼ生楽器がない世代で、その世代の人たちがいまのRBとして聴いていますよというのがデフォルトになっている。
(興味のある人は下記の映像を参照のこと)
www.youtube.com
すごくこだわりを持ってそこをやっている人たちにはブルーノ・マーズとかがギターのカッティングとかを入れてきているのがオールドスクールに感じるぐらい全部打ち込みでやるのが当たり前でその音をずっと聴いて育っている人たちの感性というのが、いまのアメフラの感性につながっている。現在AMEFURASSHIを全面的にサポートしているDigz*2のチームの連中というのはそこをすごく自覚的にやっているというのはあります。
日本のダンス音楽の中核にいるDigzという音楽事務所
中西 Digzのことが最近気になったのでまた調べてみたのですが、前の「Drop」についての話を堀埜さんからお聞きしたときにDigzの存在とその中核にいるHIROのことを聞いて意識したのですが、今回の場合はsty、この人は初期の三代目 J SOUL BROTHERSに楽曲を提供していていて代表曲である「R.Y.U.S.E.I.」が日本レコード大賞受賞していたり、最近ではBE:FIRSTに「Bye-Good-Bye」を提供するなど、この事務所の中でも実績がある人で、sty、HIROが中心だとは思うのだけれど……。
堀埜 実績があるのはsty、HIRO、そしてSHOW(グラデーション、Tongue Twisterに参加)の3人ですね。この3人がいろんな意味で実績も持っていてこのプロジェクト全体にいろいろとかかわっている。
中西 それで彼らがこれまでかかわってきたものを確認して思ったのですが、前に言及したKというのもあるのですが、完全にダンス&ボーカルグループの楽曲というかジャンルというか、簡単に言えば日本の場合ならLDHということにもなるんですが、ダンスミュージックというジャンルがあるとしてそのど真ん中にいる人たちがかかわっている。さらにDigzのホームページを見て思ったんですが、AMEFURASSHIの扱いが大きくて、めちゃめちゃ力が入っている。アルバムもでっかく載っているし、他の参加作家の経歴を見てみるとAMEFURASSHIの作品が事細かく全部書いてある。
堀埜 そういう意味ではDigz的にもどこでどうブレイクするかは別にしてすごくインターナショナルなマーケットを意識していて、特にアジア圏に対するプレゼンスは高いのでそこでアメフラがキラーコンテンツになりうるということをかなり事務所として自覚的に彼女らの曲を作っていると思います。
中西 たぶん、スタダというよりは佐藤守道さんだと思うのだけれど、彼とDigzの中心的な人たちがどこかの時点で意気投合して、AMEFURASSHIをもって世界と勝負するぞということになったのではないか。
堀埜 そして、それはそれだけのスキルが彼女たちにあるということも佐藤さんもDigz側もかなり認めているというところでやっているというのははっきりと音とか、素人が目に見える部分にもかなりしっかりと出てきていると思います。それは「Drop」と今回のアルバムにも出ている。今回ミニアルバムという言い方をしていますが、実質的にはアルバムだと思います。我々のLP世代からしたらちょっと短めのフルアルバムのボリュームは十分にありますから。
アーティスト:AMEFURASSHI
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