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連続殺人鬼を描き 不穏な空気感感じさせる舞台 モヘ組『せいなる』@浅草九劇
モヘ組『せいなる』@浅草九劇は松森モヘー作・演出による群像劇。シリアルキラーらしき人物による無差別連続殺人がモチーフとして描かれ、殺人犯により気がつかないうちに殺されたものたちが「あなたはもう死んでいる」と知らされるなど不条理で不穏さを感じさせる内容。
松森モへーの作品を初めて見たのがオンライン配信/リーディング公演『さよならの幕開け』*1という作品でも死者は重要なモチーフとなっており、これ自体は以前から松森モへーがこだわってきた主題なのかもしれないが、『せいなる』で新たに狂気をはらむような不気味な連続殺人鬼が出てきたことは松森が演出主演により青年団リンク キュイ『あなたたちを凍結させるための呪詛』を上演した綾門優季から受けた影響関係*2があるのかも知れないと感じさせた。
モチーフの近親性の一方でふたりの作風には大きな違いもある。連続殺人のような異常者が登場する場合でも綾門の作劇はあくまでロジカルであり、その世界内での首尾一貫した整合性を感じさせるのに対して、この『せいなる』もそうであるのだが、松森の作品にはより混沌を感じる。理屈で考えると作品内に辻褄が合ってない部分もある一方で上演された作品にはそれを強引に成立させていくようなエネルギーを感じるのだ。綾門と松森のシンクロしているようで対極的にも見える個性のぶつかり合いは何か新しいものを生み出すのではないか。
前回の綾門と松森の共同制作*3は面白くはあったが松森本人が主演したひとり芝居であったこともあり、群像劇でこそ、その真価が発揮されると思われる松森にはポテンシャルの全てを見せられていないようなもどかしさがあった。
幸い(というのには語弊があるだろうが)松森は自分の劇団「中野坂上デーモンズ」を事実上解散し、フリーな立場でもあり、スケジュール的にも余裕がありそうなのでこの舞台を見てますます綾門優季との共同制作作品を見てみたいという気にさせられた。
2023. 6.14 ‐ 6.20
*1:
*2:綾門は近作『蹂躙を蹂躙』で多重人格の無差別殺人者を登場させているが『前世でも来世でも君は僕のことが嫌』をはじめ、それ以前からこうしたシチュエーションは彼の作中に繰り返し登場している。
*3:simokitazawa.hatenablog.com