『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2018』参戦記ももクロライブレポート
ROCK IN JAPAN FESTIVAL参戦は昨年に続き2回目。昨年は知人の好意で車に同乗させてもらったのだが、今年は勝田駅経由のJRとシャトルバスを乗り継いでのひとりでの参加となった。目的はももクロのライブだが、その前にゴールデンボンバー(金爆)を見たいなとも思っていた。
だが、シャトルバス乗り込みにけっこう時間がかかったせいで会場に着いてみるとちょうど目の前のLAKE STAGEで金爆と時間が重なっているでんぱ組がやっていて、それを2~3曲聴いているうちに時間がたってしまった。金爆とももクロのライブ会場は入り口から離れた場所にあるGRASSSTAGEだということもあり、そこに着いてみると金爆はとっくに終了し、ダウンタウンももクロバンド(DMB)の音声チェックを兼ねたリハーサルがはじまっていた。
DMBの存在はこうしたロックフェスでは本当に大きい。ロック通が多いロッキンの客層にはモノノフ以上にインパクトがあったようだ。特に今回は前週に千葉幕張のZOZOマリンスタジアムであったワンマンライブ「ももクロマニア」に参加したバンドメンバーが数人を除いてほぼそのまま参加していた。そこには宗本康兵、浜崎賢太、佐藤大剛のおなじみのメンバーに加えて浅倉大介(access)、大渡亮元(Do As Infinity)、柏倉隆史も名を連ねており、特に浅倉の参加はももクロマニアでもかなりの反響だったが、ここロッキンではそれどころではなく、「何で?」「分かっていたらそちらの会場に行っていたのに」などと相当以上の衝撃を与えていたようだ。
昨年のロッキンは初めてダウンタウンももクロバンドを帯同してフェスに乗り込んだこともあってももクロとしてそれまでの中で最高到達点といっても過言ではない出来栄えで、5人のももクロはロックファンに対しても大きなインパクトを与えたが、特に素晴らしかったのが有安杏果のボーカルから始まる「BLAST!」だった。果たして4人のももクロのパフォーマンスがそれに並ぶような結果を残すことができるのかという危惧は始まる前には若干あったものの夏菜子のパワフルなボーカルからその「BLAST!」がスタートするとそんな杞憂は一度で吹っ飛んだ。夏Sでもももクロマニアでも感じたことだが、4人とか5人とかを感じさせないような厚みのあるボーカル、それが4人そろってユニゾンとなるといまだかつてないような無敵感が醸し出される。ももクロについてはいまだに「歌が下手」などとくさす人が後を絶たないのだが、この日でんぱ組、あゆみくりかまき、チームしゃちほこといくつかのアイドルグループを続けて見てはっきり分かったことがある。それは小手先の歌の技術などではなく、ボーカルがその歌の世界で客席を支配する力において、ももクロと他のグループには比較にならないほどの違いがあることだ。そういうとファンの欲目みたいにみられるかもしれないが、将来はともかく現時点の力量において先に挙げたグループは会場を埋められるかという人気の差を度外視しても観客を巻き込んでいく空間把握力に明らかに差はあった。そして、それはスタジアム級の単独ライブを何度も経験してきたからこそつかんできた力なんだろうと思う。
今年のももクロは「BLAST!」で観客を圧倒した後も、野外ライブで盛り上がる「Chai Maxx」「ココ☆ナツ」とアゲ曲を連発。特にヒャダインの「ココ☆ナツ」は初めて聴く人でもすぐに覚えてしまうような「ココココココココ」の連続をはじめ振付もインパクト抜群でこういう夏のアウエーでは抜群の威力を発揮するキラーコンテンツだ。この日も会場の後ろの方まで一体となっての大盛り上がりを見せた。
ただ、この日の暑さではこれ以上激しい曲が続くと熱中症で倒れていたかもしれず新曲の「Re:Story」はそういう意味でもいい挟み込みのされ方だった。その後は「走れ!」「行くぜっ! 怪盗少女」と「ももクロといえば」という有名曲2曲によって初めてももクロを見た観客も満足させ、5人になりZになって最初の自己紹介曲を4人バージョンに改作した「Z伝説 ファンファーレは終わらない」で4人の新生ももクロの新たなる門出をアピールした。
最後にはももクロ結成10周年を記念して発表された「クローバーとダイヤモンド」を歌い上げ、余裕を残してその存在感をまざまざと示した。
先述したがこのライブを見ると、もはや国内にももクロにとってアウエーのライブ環境というのはないのではないかと思われてきた。このロッキンも昨年初めて参加した時は「ももクロってどうなの?」と懐疑的な観客もけっして少なくなかった。しかし、今回のライブを見ているとロッキンでもホームに近いような感覚を演出しつつある。それは昨年の評判でモノノフが増えたからというようなことではなく、会場に分散しているモノノフの力を借りながらもファン以外の観客を引き付けて味方にしてしまうような魅力がももクロにはあって、そこが他のグループと決定的に違うところだと思えた。
それを象徴するのが間違いなくアドリブだと思うが、誰かが「ももクロのファンじゃなくて、興味もない人」と会場に呼びかけてある程度の数の観客が「そうだ」とウオーという声を上げたのに対して、高城れにが「そういう人もももクロを好きになってください」と突然卑屈にお辞儀をするような仕草を見せると一度は他のメンバーが「そんなみっともないことをするな。10年続けてきたプライドはないのか」と制止に入るが、それを今度は夏菜子が再び止めて、今度は全員で「ももクロのことを好きになってください」と深くお辞儀する。ここまでの一連の流れるような進行こそ、歌とダンス以上に「これがももクロだ」と思わせるもので、会場にはそれで興味を持った人も少なからずいたのではないかと思う。
さらに言えば左側、右側、遠くの方などと煽りを入れるのはこうしたライブの定番となっているが、それに加え遠くに見える観覧車に向かって「観覧車のみなさん」などと声掛けをしたのも笑わせてもらった。確かにGRASSSTAGEについては観覧車から撮影したと思われる観客の集まり方の写真がよくネットなどにも上げられているから、風向き次第では音も聴こえるのかもしれないが、観覧車に向かって声掛けしたのはロッキン史上でもももクロが初めてじゃないだろうか(笑)。
ももクロを見終わると次はGRASSSTAGEで予定されていたのはmiwaだったのだが、お腹も減ってこのままだと熱中症で倒れそうなこともあり、フードエリアで休憩、食事、飲み物をとり、次に見たのが近場のBUZZSTAGEのあゆみくりかまきだった。実はこのあゆみくりかまきとこの日の最後に見たチームしゃちほこはどちらも今回がロッキンに5回目(5年目)の出演。とはいえこのBUZZSTAGEではライブとライブの間に時折DJタイムが挟み込まれるため、あゆくまが最初に出演したのはこの同じ会場でもくりかまき時代のDJとしての出演だった。それがボーカルのあゆみが加わりあゆみくりかまきとなり、今回は初めて主催者側がセッティングした(?)と思われるバンドを帯同しての登場となった。
それは彼女たちにとって相当に嬉しいことだったようで、いつもノリのよい彼女らのライブだがこの日は特にノリノリのステージだった。私はももクロファンだが、アイドルファンとは言えない。あゆくまも単独ライブに行ったことはないが、ももクロがライブ前に本会場の周辺に設営した会場で開催しているミニアイドルフェスの常連となっていて、特に野外ライブでの客の乗せ方(ステージング)のうまさにはいつも感心させられている。
それゆえ、この日も観客の盛り上がりは十分でその中に自分も入っているともの凄く楽しいものではあったが、楽しんでいるオタクとそれ以外の観客の熱量の差は歴然としていて、外への広がりはあまり見られなかった。
ももクロのライブの後に見たせいもあるが、まず思ったのは3人で歌っていて、それぞれが交互にソロをとるスタイルなのだが、中にいると臨場感で楽しめても歌自体は歌詞があまり分からない。ももクロはある程度歌詞を知っているし映像と一緒に歌詞も流されるからということもあるがそれだけではない気がする。
夏Sでももクロの後輩グループを見た時にも同じようなことを感じたが若いグループほど歌詞をシャウトしすぎたりしていて聞き取れないのだ。
もちろん、あゆくまはそういう若いグループとは比べられないぐらい高い技術を持っているし、いわゆる歌唱力ということでいえばももクロよりも上だという見方をする人がいてもおかしくない。
GRASSSTAGEとBUZZSTAGEでは音圧や客の集まり具合も違うのだが、アイドルファン以外の観客への届き方は実力派のあゆくまでさえ、ももクロとは全然違っていて、両者の間に集客力だけではない差というものを感じてしまった。
チームしゃちほこも5年連続の参加。毎年少しずつ主催側の評価を高めて今年はついにSOUND OF FORESTのトリを射止めた。ももクロあるいは欅坂もそうだが、ロッキン初出場にしていきなり最大のGRASSSTAGEというのは特例中の特例なのかもしれない。毎年出演し実績を積み重ねながらステップアップしていくのが普通なのだ。
チームしゃちほこもそうした道を通ってここまで来たが、MCなどでそのことに触れることも一度もなかったが卒業を秋に控える伊藤千由李が今年で最後のロッキンということもあり、より一層熱の入ったものとなった。
こちらも緩急などというものはいっさいなく最後まで攻めの姿勢を見せたライブパフォーマンスでしゃちらしさを出した。といえばそうなのだが、ももクロとの埋めがたい差を感じた。加えてここで1人欠けることはももクロ以上にきついかもなあと感じてしまったのも確かだ。
救いは最後の最後にアンコールの声に催促されて再びメンバーが登場した際に咲良奈緒が「ロッキンではアンコールで出てきて歌うのが許されて歌えるのはGRASSSTAGEのトリだけというのが決まっている」と説明した後、私たちもGRASSSTAGEに行きたいし、いつかそこでトリを務めてアンコールにもこたえたい」とファンに向けての挨拶で闘志を見せたのにはちょっとやられた。やはり相当危機感を感じているに違いない。それでも夢を諦めたくないという強い意志を感じさせてくれたことにぐっと来るものがあった。しゃちほこのステージは笠寺・ガイシホールで一段落した感もあり、しばらく行ってなかったが、名古屋まで遠征はできなくてもチャンスがあればまた見に行こうという気にさせられたパフォーマンスだった。
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