ハナズメランコリー(HANAʼ S MELANCHOLY)STAGED READING VOL.1 『ジーンを殺さないで -Let Jean Live-』@中野テレプシコール
登場人物はすべて外国人で舞台は架空の国の物語。翻訳テキストを思わせる内容だが、すべて一川華のオリジナル戯曲である。以前この集団の海外戯曲の上演について、海外作品の翻案というよりは少女漫画やアニメの雰囲気を感じると書いたことがあったが、今回の舞台はオリジナルであるのにそうした色合いはより濃厚に感じた。
演出面では舞台下手にピアノが置いてあって、その生演奏を劇伴音楽として、舞台が進行していくのが雰囲気を感じさせていい。これが生み出す「生」っぽさがリーディング演劇という形式と非常にマッチしていた。
時の政府の迫害を逃れて屋根裏部屋的な空間に隠れ住む人々を描いており、これが「アンネの日記」的なナチスドイツによるユダヤ人迫害という歴史的な事件を下敷きにしたことは間違いなさそうだが、この国を支配する側にはアンドロイドを想定*1、SF仕立てにすることである種の寓話性を高めている。原作としてのアニメや漫画があるわけではない*2が、今回はリーディング公演という制約がある中でさえ、2・5次元演劇を思わせる部分もあり、今後舞台としてより完成していくうちにどのような舞台となっていくのかが、気になる舞台でもあった。
ただ、作品全体の構想にちょっとした疑問を感じるのは第一部と銘打たれたこの日の舞台だけでも換気のための途中休憩を一度挟んだとはいえ上演時間が2時間と相当な長尺作品になっていることだ。以前の作品で最終的にこの集団は中劇場以上の規模の劇場での上演を目指すことを前提として作品作りをしているのかもしれないという趣旨のことを書いた記憶があるが、このような作風で長尺な作品を上演するということになると杉原邦生のプロデュース公演やナイロン100℃のような形態(上演時間4時間程度)を意識せざるをえないが、そうであるならばもう少し娯楽性を意識した上演でないと観客の集中力が持たないのではないかと思う。
*1:治療という触れ込みで記憶改ざんや洗脳処理を行っているというのはアントニー・バージェスの「時計仕掛けオレンジ」など英国のアンチユートピア小説の系譜を彷彿とさせる。