【連載7回目】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHI『Coffee』について聴く(7)
「『ももクロを聴け!ver.3』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHIの音楽について聴いてみることにした」*1の第二弾。今回は『Coffee』について聴いてみることにしました。収録されたリード曲「Blow Your Mind」MVがこれまでの最速で30万再生を達成するなど注目のミニアルバムだが、前回のアルバム『Drop』に続き、現在のAMEFURASSHIの音楽性や戦略がますますはっきりしてきたようなところがある。
(ZOOMにて5月24日収録)
中西理(以下中西) 「Love is love」は「Fly Out」同様に先行配信していた楽曲。配信の際にMVも公開されましたが、その時にすでに欧米での90年代ソウルのリバイバルブームがあり、流行になっていてそうした流れの中からの楽曲と紹介されていました。ビヨンセもそういう楽曲を出したりしていて、ここに「Love is love」を持ってきたのもそういった流れに沿ったものではないでしょうか。ダンスはヴォーギング*2なんですよね。かつてマドンナがMVで踊って一世を風靡したダンスで、ファッション誌である「VOGUE」のモデルがよくとるようなポーズをつなぎ合わせたようにできていることからそう呼ばれました。これ自体昔あったダンスからの引用だったわけですが。
堀埜 そうですね。我々にとっては90年代は最近なわけですが、今や90年代は30年以上前だからもう懐メロでしかない。ビヨンセだったり、デスチャ*3とかTLC*4とかあの辺の感じはもうすでにちょっと懐かしめのテイストを持ってきていることになる。それもそこのドンピシャの音ではない。その時のトラックを聴いたら、今作っている音とは全然違うのだけれど、味としてそういうテイストを持ってくる。人間の耳が面白いのはなんか聞き覚えのある音色だなとかメロディだなというのがちょっと入ってくると既視感があって、見てないので既聴感ですか。それがあって、そこの部分でノスタルジックなイメージというのを音楽は演出できるので、そういうのをしっかりと入れてきたりしている。
中西 そして、その次が問題作というか、いわゆる早口言葉の歌なんですが「Tongue Twister」になります。これはコミカルな歌に感じますが実はトラック自体は割とスタイリッシュというか、カッコいい系の音作りになっている。
堀埜 トラックはカッコいいけれど、ここも言葉遊びをこの子たちにやらせているのはやはりMOMONADYが主となってやっているんだろうなと思っています。そういうちょっとトリックスター的な遊びというのをやらせて、はなちゃんとかこういうのうまいじゃないですか。そこを分かっていて、やらせている。
中西 これはこちらの方が断然おしゃれに仕上がっているけれど、ももクロの「笑顔百景」なんかを連想させる部分もあると感じました。似たようなノリだと思うのですが。
堀埜 ラップ的なものの入れ込み方としてはそれに近い部分があるかもしれませんが、違うのは「笑顔百景」は楽曲の世界観も含めて「じょしらく」というアニメのエンディングテーマでもあったので前山田(健一)さんはそういう形での遊びを入れていて、トラックからしてそういう感じに仕上げている。「Tongue Twister」というのはタイトルが語っていますが、そこの部分でベーシックなトラックの部分では非常におしゃれなサウンドを鳴らしながらも早口言葉で遊んでいるので、これはライブで盛り上がる曲だと思います。
中西 確かに盛り上がっていますし、遊びに関して言えば最近は原曲通りに歌うだけではなく、早口言葉部分の言わせあいなんかもしています。どういうことかというと愛来とかがほかのメンバーを羽交い絞めにして、自分のパートじゃない人がそれを歌わなければならないように仕向けたりしている。はっきりしたルールが決まっているわけじゃないのですが、そのパートが来た時に一番ステージの真ん中前の歌うポジションにいた人がそれを歌うということになっているんです。
堀埜 そういう意味では全員が全パートを歌えるような修行をしないといけないということですね。
中西 そうですね。ただ、収録の段階では全員がすべてのパートを歌って収録した後で歌割りを振り分けたようですが。
堀埜 アイドルって割とそういう取り方しますから。基本的には歌割りを完全に決めて録音するというよりは全パート一応歌わせて、ここはこうかなというようなやりかたをすることもある。
中西 こういう新曲があるという話だけをフォーク村で小島はなが披露したことがあって玉井詩織がさっそく食いついていました。ももクロも好きそうな曲なんじゃないでしょうか。令和版ドリフターズなどと呼んでいる人もいますし(笑)。
最後を飾る「グラデーション」はカラーソング
堀埜 最後の「グラデーション」だけちょっとほかの曲と違う感じがします。これだけタイトルもカタカナ書きにしていますし。なんかの意図がこれはあるのだろうなと思います。
中西 この楽曲はもともとはマイナビ進学のコマーシャルソングでしたよね。新入学の学生なんかをイメージした。
堀埜 そうですね。
中西 ただ、ここにすわるとまたちょっと違うものに見えてくる。
堀埜 ニュアンスが変わってきます。この歌は個人的にはすごい好きな歌なんです。それというのもスタプラの楽曲でメロディを追いかけなら聴く楽曲が好きなので非常に素直にいい曲だなあと思える。
中西 これはももクロの「モノクロデッサン」がその代表ですけれど、メンバーカラーのイメージを重ねた「カラーソング」ですね。ほかにはチームしゃちほこ(現TEAMSHACHI)にも「Colors」という歌がある。いずれもグループおよびメンバーにとっては非常に大切な歌ですが、色がメンバーを象徴しているだけにメンバーが脱退した時にはセンシティブな問題も起き、「モノクロデッサン」はそれで一時歌われにくかった時期もありました。AMEFURASSHI の「グラデーション」も今後グループがより成長していくにつれ、より特別な歌になっていくかもしれません。
堀埜 この曲は一番素直な歌でそういう意味でラストにアルバム全体をしっかりと締めていると思います。そこまでの曲でいろいろとんがった試みやいろんな実験的なこともしてきているが、これが全体の落ち着きを生み出している。
中西 「Fiy Out」でぶちかまして、これでしっかりと締めるという感じですね。
堀埜 トータルな完成度は高いのでどこかでいいバズり方をしないかと考えています。
中西 「Blow Your Mind」がちょっとバズりかけてはいるのだけれど……。
堀埜 それと言い忘れていたのだけれど、今のヒット曲というのは基本的にはカラオケで歌われないとダメだというのがあるので、それを早いうちになんとかしてほしい。
中西 どういう契約上の問題分からないけれど、アメフラの楽曲はカラオケに入ってないみたいですね。
堀埜 だから、そこはひとつハードルとしてあるのかなと思います。カラオケは大事ですよ。カラオケに入ることでヒットの可能性はどんどん広がるのだから。
中西 これはなぜなんですかね。レコード会社の力不足なんですかね。
堀埜 その辺は私は全然分からないです。
中西 これはほかのことが忙しくてそこまで手が回らないのか、あるいは手続きが難しいのでそこまでする必要はないと思っているのか。どちらなんでしょうか。
堀埜 アメフラの場合、今の子がカラオケで歌いたいというタイプの曲も多いというか、全部そういうタイプの楽曲なんで本当にもったいないと思います。
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