【連載第2回】『ももクロを聴け!』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHI『Coffee』について聴く(2)
「『ももクロを聴け!ver.3』の堀埜浩二さんにAMEFURASSHIの音楽について聴いてみることにした」*1の第二弾。今回は『Coffee』について聴いてみることにしました。収録されたリード曲「Blow Your Mind」がこれまでの最速で25万再生を達成するなど注目のミニアルバムだが、前回のアルバム『Drop』に続き、現在のAMEFURASSHIの音楽性や戦略がますますはっきりしてきたようなところがある。
(ZOOMにて5月24日収録)
堀埜浩二(以下堀埜) 前回のアルバム「Drop」からこの「Coffee」を聴いてまず思ったのは曲のバリエーションが増えてるなあということでした。
中西理(以下中西) 個々の楽曲のジャンルがどうかということについても音楽好きにとってはいろいろと蘊蓄を語りたくなるようなところもあるし、そういうのは無関係にしても曲想の多様性は前よりもありますよね。
カギ握る MOMONADYの存在
堀埜 中西さんもブログで触れていらっしゃいましたが、今回のアルバムでいろんな意味でキーマンとなっているのは MOMONADYなんですよ
中西 そうですね。
堀埜 彼女が入ることによって前作の「Drop」はまあまあ素直なガールクラッシュの楽曲なので、MICHIとか一部の曲でそうじゃない曲もありましたがだいたいそうだった。ところが今回はMOMONADYが入ることで、雰囲気が変わった。MOMONADY自身がDJでボーカルもやってダンスもやっているというというアメフラの等身大のちょっと先輩ぐらいの存在。それがDigzの契約作家(パートナー)という形で入ってきていて、アメフラと一緒にその辺をやらせるためにぐっと引っ張り込んいるのじゃないかと思うんです。
中西 私も少し調べてみたのですが、BananaLemonというダンス&ボーカルグループに彼女は入っていて、そのグループはstyさんがプロデュースしている。
堀埜 そうですね。
中西 主として海外のマーケットで売ろうとしていたようなふしがあるけれど、少し売れかけたぐらいで爆発的に売れるということはできていない。
堀埜 完全なブレークはしなかったけれど、そこで得たエッセンスというものをアメフラに入れることでのケミストリーみたいのを狙って自覚的にやっているんじゃないかと思います。
参考映像:BananaLemon
中西 BananaLemonを少し映像で見てみたのですが、AMEFURASSHIの最近のボーカルと聴き比べてみると、それぞれボーカリストとしての個性が違うので、違うのだけれどテクニック的に教え込んでいるようなふしもある。だからクレジットにはないのだけれど、MOMONADY本人がボーカルディレクションをしている部分もあるのではないかと睨んでいるのですが。
堀埜 そうですね。かなりあるでしょうね。クレジットだけを見ていると歌詞を書いている量が多いんですけど、楽曲にかかわっている部分でいうと4曲目の「One More Time」。これはメロディーとかそういうところもしっかりとかかわっているんじゃないかと思います。まず単純に歌詞に関して言うと前回の「Drop」では恋愛ソングというのはあまりなかったですね。その部分というのはMOMONADYが入ることによってちょっとそういう女の子らしさというか、恋愛観というのが今回のアルバムには入ってきている。2曲目の「Batabata Morning」とかは聴いているとこういう歌い方もできるのかとも思う。それは実はアイドルらしさもあるのでしょうが、そういうテキストを入れて上手にやらせるというのがしっかりできてきている。
堀埜 しかもBananaLemonもそうなんですが、音に関してまあまあ無国籍。YoutubeでBananaLemonがやっている90年代ぐらいのMIXがあるんですけれどMOMONADYさんはDJ上がりで自分でMIXが作ったりというのができるので、以前の楽曲のメドレーのようなものをおいしいところどりしながらダンスでつないていくというのがあるのだけれど、これを見た時に「なるほどそういうことか」とも思いました。彼女らにとっては私が言ったようにR&Bというのはその時代の音で昔のモータウン、スタップスとは全然違う。90年代以降、80年代ですらない。そういうのが当然の環境にいて、彼女らにとってビヨンセぐらいが一番古いのかもしれないと思いました。そういう音を聴いている世代の音というのがあって、確かにそうなるともうすべて打ち込みなんです。