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総合教育会議ルポ

竹尾緑地問題・2020年7月30日
 
この日の朝9時に、教育委員さんと教育部で開く「教育委員会」があった。この傍聴に出たかったのは、きっと教育部が教育委員さんに、総合教育会議への対応策を授ける時間だろうなと思っていたからでした。どんな対応策を授けたのか聞きたかったけど、予約してなくて入れなかった。出席した人によると「竹尾がいい、とか、手光がいや、とかは言わないように」っていう指示だったそうです。
 
9時に教育委員会を門前払いされたあと、図書館の前でぼんやり待って、10時半に総合教育会議へ。市長はたった1人、教育委員さん4名と教育長、副市長、その他15名のあちらがわのスタッフと、いちばん小さな部屋に入りました。そして定員70人いっぱいいっぱいになった傍聴者たちは、2つに別れた別室で中継を観ることに。600人入る公民館ホール空いてんのになぁ。何がいやってまず、この構図自体がいやですよね。あちら側さんが一生懸命考えた、市長を追い込む策なんだろうなっていうのがありありとわかる。市長孤立作戦。
 
隣の部屋でたった一人でいる市長に、「がんばれ!」と心で声援を送りつつ、会議スタート。はじめは市長がこれまでの経緯を話し(それも、自分がどれだけ教育部に騙され、陥れられてきたかは一切語らず!※)、自分のお願いする手光案がよく検討されてないように思うので、今日はそれをお話ししたいと切り出しました。
 
※どれだけ騙されてきたかというと、たとえば市長は昨年8月、竹尾案だけでなく手光含めて複数の候補地もコンサルに調べてもらうよう指示。手光の結果が出てないことをいぶかった市長が、手光を調査させたのか聞くと、教育部は「コンサルに調べてもらった結果、だめでした」と返事。協議録をもってくるよう言ったが、ぜんぜん持ってこない。市長がものすごく怒り、半年後ようやく持ってこさせたら、そこには教育部がコンサルに「手光案は調べなくていい」と指示していたことが明記。それで市長が、今度は自らコンサルに会って、手光案を調べるよう依頼した、等々。例を挙げるときりがないけど、こんなことが日常的に起こってるわけです。
 
市長は話があんまり上手じゃないから、ときどきよくわからないこともあったけど、でも、「まず、”確実に”安全な場所に学校をつくるべき」ということ。それから、「費用面でも竹尾はどれだけの追加費用がかさむかわからない」ということ。そして、「学校をつくるとは歴史をつくること。つくってすぐに学校として使えなくなるような竹尾ではだめだ」ということ。こんなことを順を追って話しました。市長が話し終わったあとは、こっちの部屋で拍手が起きました(禁止されてたみたいで職員に止めに入られた笑)。
 
次に話し始めたのが半澤さんという女性の元PTAとか元母代の方。まず「今、必要なのは中学校なのに、手光案では中学校の過密緩和になっていない」ということ。「校区再編で、今のコミュニティスクールの形を崩すことをしてほしくない」ということでした。それで終わるかと思ったら、最後に彼女は「これから教育委員4人がみんなで話していくので、市長は最後に質問に答えてください」と言ったのでした。あれ、今回の会議進行は市長のはずなのに。そして市長は、みんなで腹を割って話していきましょうと言ったのに。ご自分は持ってきた文章を立派に読み上げ、その後の進行まで、ここで決められてしまったのでした。ちょっとこわかったです。
 
市長の弁を封じたあと、次に話し始めたのが今村さんという男性の元教諭。「私は大規模校や仮設校舎も経験してきて、それがどんなに生徒に悪影響かわかっている」、そして「中1ギャップ(中1になって、環境の違いに戸惑う子どもたち)をなくす5−4制のすばらしさ」について話されました(中1ギャップ、これ動かしても、単純に小6ギャップになるだけじゃない?と思うんですが・・・)。
 
次に話されたのが、藤井さんという女性。彼女は遠慮がちにだが、「中学が過大規模になると、学校周辺の交通量も、コロナも、部活動も大変になる」、「市長は、竹尾のグラウンドが狭いとおっしゃった。手光だともっと狭くなるのに、どうして手光か」と話されました。
 
最後に青木さんという男性の、元教諭で現在お寺の住職の方が、「竹尾案は問題多いが、やはり子どもたちの教育効果が大事」、「やはり今は中学校が足りてないので、竹尾に中学校をお願いしたい」とおっしゃいました。さらにここで驚いたことに、最後に青木さんが、「ふだん交流する機会がないので、副市長さんの考えも聞かせていただきたい」と言い始めました。会議進行は市長のはずなのに、完全に出来レース感。こちらの会場でもどよめきが上がりました。
 
そしてマイクを握った副市長。「若い方と会うたびに、コミュニティスクールのすばらしさを聞かされる」(ほんとかな)。「SDGsの福津市には、環境教育の整備が必要」(環境を壊して?)。「社会、経済、環境、対立せず共生する道筋を見つけることが大事。意見も分かれるが、教育委員さんもこうおっしゃっておられる、これをひとつにしていただくのが市長」と、準備万端のトークを披露。何より怖いのは、彼女は自分の立場を表明することなく、市長に竹尾案を飲むよう迫っていること。こういう人の発言は、言葉づらだけ追ってはいけないのです。ゾッとするという自分の感覚が大事と思います。
  
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私はもうハラハラドキドキして。前回の会議では、藤井さんと青木さんは竹尾案にはまだ懐疑的だったはずなのに、すっかり教育部の教えに取り込まれていました。だからもうまさに1対20。こんな人たちに囲まれて、トークの苦手な市長が、大丈夫だろうかと。
 
すると市長が話し始めました。
「手光案では、中学校の過密が解消しない。これは確かにいちばん頭を悩ませる問題です。しかし、コロナ以降、福津市への人口流入は減っており、今の人口推移でいくと、福間中が1600人になるというのはまずあり得ません。そのうちもっと正確な数字を出せるはずです」
 
「手光案では運動場が狭いとおっしゃった。確かに今のままだと運動場は狭い。けれど手光は自然の中の運動場。秘密基地、虫取り、むしろ手光のほうが遊べる場所がたくさんある。手光は小学校、というのが意味がある。小学生にとって、手光はとてもいい運動場になる。広い運動場で思いっきりスポーツをしたほうがいいのは、中学生。だから竹尾の運動場は、中学生には狭いと考える」
 
「中学校の過大規模も問題であり、今後中学校の建設も検討していきたい。ただ、中学校が大変になるのはR14年。そして、校舎の広さや規模として今、早急に過密を対応しなければいけないのは福間小、福間南小だ」
 
「5−4制(小学5年ー中学4年)のメリットについて話された方もいた。だが、今回竹尾でつくる5ー4制は、今他県で行われている、同じ校舎内の5−4制とは違う。距離の離れた小、中で行う5−4制。これまでの小学校で6年生はリーダーの位置づけだった。いろんな仕事をリーダーとして行い、卒業式では5年生が「これから自分たちが守っていきます」と受け継ぐ、そういう伝統がある。でも竹尾の5−4制ではどうか。卒業式だけ小6が小学校に帰ってきて卒業する。6年生はふだん中学生と学び、いっしょに部活動するようになる。だけどいっしょに中体連に出るわけじゃない。試合だけ、普段会わない小学校の子どもたちと出ることになる。そういうことをどう考えるか」
 
「本当は1小、1中、建てたいが、財政面で難しいから竹尾に同意する、という意見も多くあった。しかし、もし本当は1小1中がいいと思っているなら、その案で考えるべきだと思う。財政的に難しいから竹尾に5−4制で、というのではいけない。本当に5-4制がいいなら、福津市全土でやるべき。教育行政とは、いちばん未来を語らないといけないところだ」
 
「手光の運動場が小さいなんて、些末な問題と思う。教育部はいろんな案を皆さんに提案してくると思うけど、皆さんは行政のご出身じゃない。予算面のことは置いておいて、子どもが主体になるような教育環境を考えてもらいたい」
 
「今のコミュニティスクールを再編しないでというご意見もあったが、宮司でそれがまず行われてこなかったという課題を見過ごしてはいけない。このままだと宮司では、新たな郷づくりの担い手が育たない、学校を核とした地域が崩壊する可能性もある」
 
「また竹尾緑地は隣にイオンモールがあり、ゲームセンターがある。遊興施設の近くに学校を設置しないという文科省の指針に反していることもどうクリアするか。また問いたいのは、子どもたちにとってイオンモールの隣に学校がある環境が本当にいいのか、それとも周りに自然と田畑があって、市街地にある学校が適しているか。学校をつくるとしたらどっちが適しているか」
 
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いや〜すごかった。口下手なはずの市長が、時折語気を強めながら、それでも誰か特定の人を攻撃することなく、持論を展開しました。それもすごく深い哲学に根付いた持論に、私には思えました。こんな市長がいる市ってありますか? 私、めっちゃ自慢していいでしょうか。最後に教育長が、なんかごちゃごちゃ言ったけど全然響いてこなかった。市長との言葉の重みとの違いが、誰の目にも歴然としていました。
 
「これから市長部局でも、手光案の安全面、土壌調査などを、コンサルに依頼して行っていく。市民の声を聞く、市民意向調査も始まる。教育委員さんには、ぜひ市民の声にも耳を傾けていただきたい。そして2ヶ月後くらいに、次の総合教育会議を考える」
  
「また、今回の総合教育会議は、ネット中継できなかった。でも議会はネット中継だし、複数の市でも総合教育会議はネット中継している。今はコロナのため大勢の人が集まるリスクもあるし、ネットで話し合いを聴きたい方もいる。皆さんは法律で定められた、福津市の教育行政を担う重責。皆さんの指示のもとで教育行政が決まる。その重責を担われている方として、ぜひここはインターネット中継に出ていただくことを検討していただきたい。検討のための資料を配ります」
 
そうやって今日の総合教育会議は終わりました。ブラボー!と声をあげたいような気持ちでした。最後に、市長の言葉で、書き漏らしたことがあるので、伝えます。こういうのを原稿なしにしゃべるんです、うちの市長は。口下手市長の福津愛を感じてください。
 
「学校をつくるとは、歴史をつくること。魂を吹き込むこと。市民の思いが、逆のベクトルに働く土地ではいけない。昔は村役場の近くに学校があった。それは、学校は地域で愛されてきたことの現れ。村役場が廃止され、学校が残った。勝浦、上西郷小学校は、長いところで145年近い歴史がある。学校というのは地域の思いであり、それ自体が歴史。学校を配置するには、校区再編など過渡的な作業も発生するが、「ここなら愛され、長く続くだろう」、そこが重要な点と思う。竹尾でも、別の用途にしたらいいなどの声もあるが、汎用性など考えるな、と思う。つくったからには多くの市民に愛されないといけない。当初から市民にご理解いただける場所じゃないと。手光わかたけは、そういう場所じゃないかと思っている」

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