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志望理由書の作成は面接対策の一環として行うべき!

更新日:2024/09/28

 小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、文章作成における基本事項を紹介するのが、このシリーズ【文章作成の基本】。

(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)


志望理由書を作成し始めたところから、面接対策はすでに始まっている。

「面接官は『志望理由書』を見ながら面接に臨む」という現実からわかること

 当然のことですが、本番の面接試験において、面接官は、あなたの志望理由書を見ながら面接をします。ということは、その面接試験で何を聞かれそれがどのように展開し、またその中でどう評価されるかは、まずはその志望理由書の内容と出来具合によると言っても、過言ではありません。

 ですから、学校推薦型選抜や総合型選抜の対策を行う際に、「志望理由書の作成」と「面接試験対策」とを分けて考えるのではなく、地続きの受験対策として考えた方が現実的であると言えます。「まず、志望理由書を書いて……、その次に面接の練習をして……」と分けて行うのではなく、もう志望理由書を書いている段階から、志望先の面接官にどういうことを聞かれるのか考えて、それを含めて志望理由書の内容を組み立てていった方がよいと言えます。

 そもそもその選抜試験において志望先が志望理由書を書かせるのは、その志望理由書に書かれる(と想定される)ことを、志望先(の面接官)が「知りたい」と考えているからに他なりません。知りたくもないことを書類にまとめさせて提出させるわけはないのです。最初からそれを選考の評価に加えないつもりであれば、一般選抜(一般入試)同様、初めから志望理由書の提出を求めないでしょう。つまり、その志望理由書に書かれることを、志望先の大学や学校の人間は「知りたい」と思っていて、かつその内容もまた選考の評価にしたいと思っているからこそ、志望理由書を提出させるわけです。

 ということは、志望理由書を書く側である受験生は、「志望先は自分から何を『聞きたい』、『知りたい』と思っているのか」を考えて志望理由書を書く必要があると言えるでしょう。相手が何を望んでその書類の提出を求めているのか考えて、志望先のアドミッションポリシーなどをリサーチし、その志望先の「ニーズ」をとらえた上で、志望理由書の作成に臨むべきでしょう。そして面接においても、その「聞きたいこと」、「知りたいこと」を相手は主に聞いてくるはずです。ですから、別記事でも述べましたが、志望理由書を書くときは相手(志望先)を想定して書くべきであり、それは言い換えれば、「面接対策と地続きで志望理由書の作成を考えるべきだ」ということなのです。

「面接官に何を聞かれるかわからない」ではなく、「自分が何を聞かれたいか」を考えて、志望理由書は作成する。

 上記の考え方を発展させると、むしろ志望理由書の内容をどのように組み立てるかによって、相手(志望先)に、「こちらが聞いて欲しいこと」を聞かせるよう仕向けることができるとも言えます。

 本番の面接で何を聞かれるのかわからずドキドキしながら、本番までこわごわと面接対策をするのではありません。相手にこちらが言いたいことを聞くように、志望理由書でコントロールするのです。

 あらかじめ相手(志望先)のことを徹底的に調べ尽くし、「なるほどこういう生徒を欲しいと相手(志望先)は思っているのだな」と相手の望みをしっかり知った上で、「だったらこういう内容で志望理由書はまとめよう」と方針を立てて、かつそこに自分がアピールしたいことを盛り込んで志望理由書を作成するのです。そうすると、相手が志望理由書や面接で「知りたい」と思っていることを、あらかじめ「織り込み済み」で志望理由書を作成することができます。またそれによって面接でも「自分が『聞かれたいとあらかじめ思っていること』を相手の面接官が聞いてくる」という展開を作ることができるはずです。

 つまり、面接官から「何を聞かれるか」ではなく、相手の「ニーズ」を押さえた上で(ここは欠かせないポイントですが)、「自分は何を聞かれたいか」を考えて、その想定の下で志望理由書を作成すれば、その作成自体が有効な面接対策にもなるのです。

 たとえば、自分が生徒会長をやったという実績について話しそれを相手(志望先)にアピールして評価して欲しいと考えているとしたら、ただ「生徒会長を務めました」と書いておくだけではおそらくダメです。大学入試は、高校受験と異なり全国から受験生が集まります。その中で、その「実績」を携えて多くの地域の「元生徒会長」が受験しに来ることが安易に予想されます。その中で、そのトピックそのものは、自分と他の受験生を差別化する話題として機能しにくいです。したがって、それ自体には相手は興味を示さない可能性が大きく、面接で聞かれないことも予想できます。

 しかし、「生徒会長をやったことで学校生活でのルール作りに深く関わり、その経験から『社会のルールである法』に興味を持ち、大学で法学を勉強して将来は法曹界で活躍したいと考えたので、貴学の法学部を志望した」という内容であったとしたら、相手(面接官)はあなたが生徒会長をやったことについて聞かないわけにいきません。なぜなら、その経験そのものが大学進学の動機や志望大学の選択理由に深く関わっているからであり、何より相手(志望先)が受験生から聞きたいのは「どうして法学部を選んだのか」ということと「(法学部に進学する上で)なぜうちの大学を選んだのか」ということだからです。その根幹にその「生徒会長の経験」が関わっているのなら、相手は面接でそれを聞かざるを得ないのです。

 このように、面接対策を戦略的に進めるためにも、志望理由書作成の段階から、面接試験での問答を想定しておくと、志望理由書の内容がより効果的なものとなります。

まとめ ~面接での問答を想定した上での志望理由書の作成をしよう~

 以前の私は塾や予備校で生徒にこうしたことを直接お話しできる立場にありましたが、今の私は対面指導を行っておらず、みなさんの志望理由書を在宅で添削しているだけです。そのため、ここに書いたことは、ある意味「志望理由書の作成の仕方」といった「文章作成の方法」以上に大事なことなのですが、今の私はこういうことを生徒さんに直接お伝えできる立場にありません。なんらかの縁があって、もしも学校推薦型選抜や総合型選抜で今年大学を受験する生徒がこの記事を読んでいたら……、と思いながら今回の記事は書きました。是非面接での問答を想定して、志望理由書を作成してみてください。

〈付記〉

 面接試験の対策と言えば、高校で日本史をご指導されているはぎのらん先生が、面接の基本マナーについて非常にまとまった記事をアップされています。志望理由書は面接を考えて作成すべきですが、面接対策としてはそれだけで十分とは言えません。もちろんこうした「実践的なこと」も十分知っておく必要があります。受験生のみなさんは是非ご一読の程を(付録の面接試験「身だしなみ確認表」は必見!)。


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