小論文での結論の扱い方について【小論文対策】
更新日:2024/12/26
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、作文・小論文・志望理由書作成における実践的な技法をレクチャーするのが、このシリーズ【文章作成の実践】。
※記事内に広告があります。
(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
「結論は先に言え!」の法則から一歩進めて、小論文は「双括型」でまとめるべき。
結論とは「自分が一番言いたいこと=自分の意見」のことであり、それは「大事なことなので二度」言った方がいい。
これが「小説の終わらせ方」の話なら、とても長い話となるでしょう。なぜなら、小説や物語の終わらせ方にはいろいろなパターンが考えられるからです。しかし、「小論文の終わらせ方」、つまり結論をどのようにまとめどのように置くか、ということでいうと話は極めてシンプルなものとなります。まさに結論から言うと、「結論は小論文の頭と終わりに置け」ということです。
これは別の言い方で言うと、「結論とは自分の意見のことである」ということです。自分が一番言いたいこと、つまり自分の意見こそがその小論文の結論というわけです。
したがって、結論が自分の意見のことである以上「先に想定しておくべきもの」とも言えます。何となく書き始めていい頃合いのところで何となく話を閉めるのではなく、あらかじめ結論(自分の意見)は用意しておいて、それを最初に表明し、その自分の意見の正当性を根拠(理由や具体例)を挙げて証明して、もう一回自分の意見を表明してその論を閉じる、簡単に言えばこれが小論文の一般的な構成です。
よくビジネス文書の書き方の本を見ると「結論は先に言え!」とアドバイスしているものが大半です。これは、企画書や報告書で結論が一番最後にならないとわからないような文章の書き方はよくないということです。なぜなら、読み手が全て読み切るまでその文章の言いたいこと(意見=結論)がわからないため、不親切で非効率的な文章になるからです。ですから、一番言いたい結論を先に述べてから、その上で、なぜそう言えるのか(理由)やたとえばそれがわかる事例とは何か(具体例)はその後に述べた方がよいというわけです。
文章構成において、結論の置き方には3タイプ存在します。一つ目は結論を先頭に置く「頭括型」。二つ目は結論を一番最後に置く「尾括型」。最後に結論を一番最初と最後の両方に置く「双括型」です。このうち、前述の通り「尾括型」は小論文には向きません。なぜなら、その小論文の言いたいこと(意見=結論)が伝わりにくいというデメリットがあるからです。ちなみに「尾括型」は小説やエッセイなど、ストーリー性のある文芸的文章に向いています。たとえば、推理小説などは最後まで読まないと犯人や事件の真相がわからないから「謎解き」として面白いのであって、それを文章の最初に言ってしまったら何も面白くないからです。ですから、こういう文章を書く時にはずっと一番言いたいことは意図的に最後まで隠しておいて、最後に見せるといわゆる「オチがつく」ため面白いのです。
しかし、小論文はそういう面白さや驚きを求める類の文章ではありません。それをやってしまうと逆に、「この小論文は何が言いたいの?」と読み手に思われてしまいます。そのため、結論を先一番に言う「頭括型」が適切であるということになります。
ただし「結論を先に言う」のはもちろんよいのですが、できれば「大事なことは二度言う」方がより説得力が高まります。「これについて私はこう考える」と自分の意見(結論)を表明して、「それはなぜならこうだからだ」、「たとえばこういうことがある」と根拠を示した上で、「したがって私はこう考える」ともう一回最後に結論を置けば、読み手により確実に自分の意見(結論)が伝わるのです。つまり、自分の小論文に十分な字数が割けるようであったら、「双括型」がよりふさわしいと言えます。したがって、400字より少ない制限字数内で小論文を書くときには「頭括型」が望ましく、400字より多い制限字数内で書くときには「双括型」が適切だということが言えるでしょう。なお、よく「わかりやすい文章を書くための構成の代表例」として持ち出されるあの「PREP」法も、まさにこの「双括型」の典型例です。
(なお、文章構成についてはこちらの記事でも扱っています。)
結論での典型的な失敗例「自分の意見からずれる。」
ここからは、結論での典型的な失敗例のお話しとなります。その最たる失敗例、それは「結論が最初に挙げた自分の意見からずれること」です。たとえば、最初に自分の意見として「課題資料に賛成だ」と言っていたのに、最後の結論では「課題資料に反対だ」となってしまっているというケースです。
その意見を言うためにこの小論文を書いているわけですから、途中で意見が変わるというのはあり得ません。論旨(自分の言いたいこと)は一貫していないといけません。またそもそも、結論が当初の意見からずれることを防ぐためにも「双括型」で書いているわけですから、これでは「双括型」で書く意味もなくなってしまいます。しかし、この失敗はまま見られます。
このように失敗してしまうものは、「想定した自分の意見への反論に知らないうちに引きずられてしまっている」ものがほとんどです。説得力のある論にしようと、自分の意見とは逆の反対意見をあえて想定しそれに反論しようとした際に、それに反論が十分にできず、それどころか逆にその反対意見に影響されてしまい知らないうちにそちらの反対意見の方が自分の意見になってしまったというパターンです。
これは「結論の置き方」というより「反対意見の想定」における失敗のケースとも言えるかもしれませんが、こうなってしまう原因の多くは、反対意見の根拠を十分に立てすぎてしまっており、そのため十分に反論が出来ていないことにあります。これはどういうことかと言うと、本来自分の意見の正当性を証明するために、あえて戦略的に「自分の意見と反対の意見」を挙げているわけですから、これは「自分が倒すべき仮想敵」として想定しないといけないはずですが、その敵(反対意見)の方の根拠を十分に書き過ぎてしまっているためにそちらの反対意見の方が自分の意見以上に説得力を持ってしまい、対処できない(反論できない)という状態に陥り、逆に自らで想定したはずの反対意見の方に「飲み込まれてしまっている」ということなのです。
これを防ぐためには、この仮想敵である反対意見をわざと弱く想定しておくことです。怪人級ではなくショッカーの戦闘員級の弱い敵として「やられ役」として想定するのです。そうすることで、この戦闘員(反対意見)をばったばったと簡単になぎ倒すことができ、そこに仮面ライダー(自分の意見)の強さが証明されます。ですから、反対意見を詳細に書き過ぎてはいけません。またそれに対する根拠も不要です。それを根拠づけて説明してしまったら、かえってそれに十分な反論をしてつぶすことができなくなります。むしろ反論の余地が十分にある「中身のないような反対意見」の方が簡単に言い返して倒すことができ、それによって自分の意見の正しさが証明されるのです。なお「反対意見の想定」については以下の記事で主に扱っていますので、これについては、詳しくはこちらも合わせて参照してください。
まとめ ~基本は、結論を最初に言って、最後も同じ結論で閉める。~
まとめると、基本的には、結論を最初に言って、最後にもう一度同じ結論で閉じる「双括型」が、論旨の一貫した文章を書くためにも、小論文の構成としては望ましい、ということです。ただし、400字より少ない字数で小論文を書くときには、字数が十分にないため「頭括型」の方が適切です。これは、与えられた制限字数に応じて、考えましょう。
また、前述の通り、結論が自分の意見である以上、それは前もって用意しておくべきものである、ということも十分に理解しておいてください。ゆめゆめ、結論(自分の意見)を想定しないまま書き出して場当たり的に雰囲気で文章をまとめる、というようなことがないようにしてください。結論は「着地点」であると共に「スタート地点」なのです。
(大人のビジネスの世界でも、「結論から述べる」のが常識です。小論文を通して、こうした書き方や話し方を体得しましょう。)
「志望理由書の書き方」にお悩みの方には、こちらの「〆野式テンプレ志望理由書作成法」がオススメ!