小論文作成時の「課題(資料)」への正しいアプローチとは?~課題の読み取り方~
更新日:2024/10/27
小論文・作文指導者の〆野が普段の添削・採点指導で教えている、作文・小論文・志望理由書作成における実践的な技法をレクチャーするのが、このシリーズ【文章作成の実践】。
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(〆野の自己紹介はこちらから見られます。)
各種課題資料にどのようにアプローチするか?
以前も上の記事でお話ししたように、小論文を書く上では「課題(課題資料と問題文)」をしっかり読むことが必要不可欠です。それらの課題にどのようにアプローチをするのかが、今回のお話しです。ここでは、出題タイプ別に、そのアプローチの仕方をお話ししていきます。
「テーマ型」の場合
課題文などの課題資料が一切なく、ただ書く「テーマ(主題)」のみが与えられるタイプの出題が「テーマ型」小論文です。一見すると、これがシンプルで一番難易度が低いように見えますが、実はこれが一番難易度が高いです。なぜなら、課題文やその他の課題資料は、「その出題テーマについての『論点(論じるべき問題)』を明確にしている」ものなのですが、それが一切ないからです。文やグラフといった課題資料があるなら、それをしっかり読み取り、問題文に沿って小論文を作成していけば何の問題ありません。しかし、この場合はそれらが全くないため、「テーマ」型は自由である分、「小論文を書く前に自分で『お膳立て』すべきことが多い」とも言えます。その分、こちらの方が厄介です。
テーマ型には大きく分けて、二つの種類があります。一つは「テーマについて何を答えるべきか明確なもの」、二つ目は「テーマだけ提示されるもの」です。
前者は、たとえば「例1:○○について賛成もしくは反対し、その根拠を述べよ」や「例2:△△についてあなたはどうすべきか、答えよ」といったかたちのものです。この場合は何について答えるべきか明確であり、その答えがあなたの意見ということになります。ただし、ここで挙げた例のように、それがイエス・ノークエスチョン(例1だと「賛成」か「反対」か)なのか、WHクエスチョン(例2だと自分ならその問題に「どうする」か)なのかをしっかり読み取り、それに正確に答える必要があります(これは、全出題タイプの小論文にある問題文の読解に際しても言えることです)。
一方、たとえば「環境問題」など、テーマのみが与えられる後者の場合は、そのテーマとなった問題について、小論文を書く前に「自らで分析し『論点』を明確にしてどう論じるかについて考える」必要があります。たとえば「国際化の問題」と一口に言っても、それが「日本社会の国際化の問題(たとえば『難民や外国人労働者の日本国内での受け入れ』など)」なのか、あるいは「政治や経済のグローバル化(たとえば『日本経済の成長は日本国内の市場だけで決まるものではなく、世界市場を考慮する必要がある』など)」なのかによって、「論点」は異なり「論じる内容」が変わります。そのテーマとなる問題とは「問題群」であり、それには多くの「問題」が含まれているので、そこから具体的な問題を自らで限定して、「論点」を明確にする必要があると言えます。
いずれにしても、テーマ型小論文の場合、「その提示されたテーマ(問題)に対して、あなたにどの程度知識と理解があるのか」が問われてくるのは言うまでもありません(これがテーマ型小論文のおそろしいところです!)。課題文とかがあったらそれが「ヒント」にもなってその「テーマ」について考えることができますが、このときあなたがその「テーマ」となった問題に対して「ほとんど知らない」もしくは「全く知らない」場合、完全に「詰み」ます。そのため、テーマ型小論文がよく出題されている大学を受ける場合は、過去問から出題傾向を探った上で、その頻出のテーマや関連のテーマについて調べておく必要があると言えます(もちろん、これも全てのタイプの小論文対策に言えることではありますが)。
「課題文型」の場合
出題タイプとして最も多いのが、この「課題文型」です。課題文を読んだ上で、問題文の要求に応じて小論文を書いていきます。しかし、この「課題文を読む」ということがしっかりできていない生徒が意外に多いです。
この場合、課題文から読み取るべきことは、大きく分けて、三つあります。
一つ目は「テーマ(主題)」です。テーマ型小論文では、ずばりその「お題」が明確に提示されていました。しかし、ここではそれを課題文から読み取らなければなりません。課題文が何について述べている文章なのか、その「テーマ」をしっかり押さえ、自らもそれについての小論文を書かないといけません。
二つ目は「論点」です。そのテーマの何について課題文の筆者が論じているのか、その「論点」を押さえます。ここができていない生徒がとても多いです。高校生の場合、「テーマ」は大体の人が読み取れていますが、「論点」を押さえられていない人が多いです。つまり「そのテーマの話を課題文はたしかにしているが、そのことについて課題文(筆者)は論じていない(いわゆる『論点がずれている』)」という小論文答案が多いので、ここは特に注意が必要です(前述の「失敗している小論文は「課題」に答えていないのが9割!」の記事を参照のこと)。課題文の「論点」について自身も論じないと、それは「課題文を読んで答えた」とは言えません。
で、最後、三つ目は「筆者の主張(意見)」です。その「論点」について、筆者はどのように論じているのか、その「主張(意見)」を押さえます。このときによく見かける間違いは、「論拠(具体例や理由)」を主張として読み取ってしまうことです。「○○について、私はAだと考える。なぜならBだからだ。たとえば、それはCからもわかる。」という文章のとき、BやCは「筆者の主張(意見)」ではなく「論拠」です。筆者が一番言いたい、「筆者の主張(意見)」はAです。
これら三つのことを押さえた上で、小論文の冒頭部では、課題文を簡潔に要約してから「本題」に入るようにすると、これら三つを取りこぼすことはないでしょう。「筆者は、(テーマと論点)について、(筆者の主張)と考えている。」のように、書き出しはこのような課題文の簡潔な要約から入ると、「論点がずれる」などのミスを防ぐことができます。
「図表・グラフ型」の場合
「図表・グラフ型」は、課題資料のあるタイプでは、課題文の次に多い出題タイプです。図や表、グラフが課題資料として提示され、それを読み取った上で、問題文の要求に合わせて小論文を書いていきます。
図や表、グラフの読み取りの場合、まずチェックするところは図表・グラフのタイトルです。書くべき「テーマ」はここから読み取ります。これは、問題文で「表1は、○○について△△した人の人数を年度別に集計したものである。」と書かれている場合もあれば、図や表の下に小さく「表1:○○における△△した人の年度別人数(□□調べ)」と書かれている場合があります。いずれにしても、ここから「テーマ」を押さえます。
そして、「論点」は、図表・グラフを分析して導出するのですが、ここで例を引きます。下の表を見てください。
たとえば、このグラフが小論文問題の課題資料として使われたと仮定した場合、まず前述の通り、タイトルである「1か月の読書量」からいわゆる読書習慣に関する「活字離れ」問題がテーマであることが読み取れます。その上で、グラフの内容を見ていきます。図表・グラフ読み取りのポイントは、「最大値と最小値に着目し、その差が何を意味しているか読み取ること」です。細かな数値差ではなく、大きな数値差に注目します。この大きな数値差がここでは論点(論じるべき問題)となります。ここでの最大値は、2023年度の「(本を)読まない」の62.6%であり、これは同じ2023年度の「(本を1冊以上)読む」の36.9%を大きく上回っています。ここで「読まない」の最小値である2008年度の46.1%に注目し、同じ年度の「読む」を見ると53.4%であり、この段階では、「読まない」は「読む」を下回っており、2023年度と逆の結果です。この「読む」・「読まない」がいつ逆転して「読まない」が優勢になったのか見ると、2023年度からであり、それまで「読む」が優勢だったのが、2023年度で「読まない」人の割合を大幅に増やし(「読む」人の割合は大幅に減り)「読まない」が優勢になったということがわかります。以上から、「本を全く読まない人が2023年度で全体の6割以上に増え、その割合は読む人の割合を大幅に(しかも初めて)上回った」と言えるため、ここは、「近年のこの急速な活字離れは、何が原因か」が論点として適切だと言えます。
このように、グラフの読み取りを行いますが、ここで主なグラフ読み取りのポイントを示しておきます。
これを踏まえて図表・グラフの読み取りを行い、課題文型のときと同様に、「グラフによると、2023年度では本を読まない人の割合が6割超となり読む人の割合を大幅に、かつ初めて上回っており、近年急速に「活字離れ」が進んでいることがわかる。」というように書き出しで課題資料(図表・グラフ)の要約を簡潔にするとよいでしょう。これでテーマや論点、図表・グラフ結果からずれることなく、小論文を書き進めることができます。
「視覚資料型」の場合
余り出題が多いとは言えませんが、写真や絵画などの画像や「視覚資料」が課題資料として提示されることがあります。この場合は図表・グラフ型のときと同様に、タイトルから書くべき「テーマ」を読み取り、写真や絵画でそのテーマが示しているモチーフに注目し、それを「論点」とするとよいでしょう。たとえばタイトルから「戦争」がテーマだとわかったならば、そのテーマが写真や絵画でどういうモチーフによって表現されているのか考えてみてください。そして「戦争」をどういうものとしてその写真や絵画が表現しているのか(たとえば「戦争」は残酷なもので否定的にとらえているなど)を読み解くと「論点」が明確になります。なお、この手のタイプの問題は、その写真や絵画についての解説文や関連性のある資料を一緒に提示していることも多いため、そういうものがある場合にはそれも「ヒント」として活用してください。
「複合型」の場合
今までのタイプが複合的に組み合わさっているタイプのものです。各々の課題資料のアプローチの仕方は各々の項目で述べた通りですが、その複数の資料から読み取った内容や結果を組み合わせて、全体でどのようなテーマや論点が導出できるのかについて考える必要があります。
こうしたタイプの問題の出題は、一部の大学に限られるので、もし自分の志望大学の過去問がこういうタイプのものでしたら、事前に過去問を使って「練習」しこの手の問題に慣れておくとよいです。
まとめ ~課題資料を正確に読み取って小論文作成に臨もう~
ここまで読んできた方はもうわかると思いますが、課題に対するアプローチとして読み取るべき大事なポイントは、「テーマ(主題)」・「論点(何について論じるべきか・論じるべき問題)」と「課題資料の読み取り内容(課題文)や結果(図表・グラフ及び視覚資料)」の三つです。テーマ型では、課題資料がないので、問題によっては「論点」を自分で設定しないといけません。一方課題資料(文・図表やグラフ・視覚資料)がある場合は、その資料から何が論点となるのか(なっているのか)しっかりと読み取らないといけません。これが本日のポイントです。
小論文の「書き方」に目を奪われがちですが、まずは課題の読み方・アプローチの仕方をしっかり身につけ、「正しくスタートを切って」小論文の作成に入るようにしましょう。
〈引用資料〉
『1か月に本「読まない」6割、5年前より15ポイント増…「読書量減った」過去最多7割』(読売新聞オンライン 2024/09/17 17:00配信)
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