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メーカーが投資ファンドに生まれ変わる日
どうもこんにちは修士論文が忙しくてヘトヘトな東大フリーランサーのSimanecoです。
先ほどスマホ見ながら休憩しているときにこんな記事を見ました。
東芝がヘッジファンドになるというなかなかショッキングなニュースです。
これを見ただけではどれくらい面白い状況なのかわからないと思うので、大手上場企業から量子コンピュータの案件を受けて働いている私Simanecoが解説したいと思います。
なぜ東芝はヘッジファンドに乗り出すことができるのか
一言で言うと東芝は膨大な組合せパターンの中から最適な解を選び出す「組合せ最適化問題」を高速に解くことができる「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」の開発に成功したからなのです。この説明、ITの記事や日経新聞でも良く取り上げられていますが、ちんぷんかんぷんですよね。これはもっと簡単に説明すると、東芝はヘッジファンドが行なっているめんどくさい業務を一瞬で解くAIを開発しちゃったよと言うことです。
では「組合せ最適化問題」と言うめんどくさい業務とそれを一瞬で解いてしまう次世代AIについて順に説明していきましょう。
よく聞く「組合せ最適化問題」とは何なのか
皆さんは最近どこか遠くに旅行に行ったりしましたか?お金や宿など考えることが多すぎてめんどくさいから行く気分にならないという方も多いことでしょう。ではAIが全ての旅行スケジュールを決めてくれるならどうでしょう。実は行ってみたいところあるんだよね。今週の土日にどっか行こうかな。と思いますよね。
この考えることが多すぎてめんどくさい問題のことを「組合せ最適化問題」と言います。例えば目的地まで最短経路で行くにはどうすればいいの?といった問題もこの「組合せ最適化問題」の1つです。これを解決してくれるAIは皆さんのすぐ手元にあります。そう、そのスマホです。スマホの中の地図アプリが「組合せ最適化問題」を解いてくれるAIとして頑張ってくれているんですね。
ではヘッジファンドが行なっている、株の取引などはどうでしょう。
例えば皆さんが100万円のお金を株で運用しようと思っていたとします。でも企業は星の数ほどありますよね。そして仮に悩んだ末アップル株とソニー株にしようと決めたとしても、その配分を考えなければいけません。そう、考えること多すぎてめっちゃめんどくさいんですよ。つまりこの問題も「組合せ最適化問題」なのです。そしてこれもまたAIに提案してもらった方が楽ですよね。
つまり皆さんが地図アプリ無しで生きていけないように、ヘッジファンドの業務もまた「組合せ最適化問題」を解くAI無しでは業務を行うことさえできないのです。
「組合せ最適化問題」を解くAIたち
実をいうとここ数年、この「組合せ最適化問題」と言われる問題を圧倒的なスピードで解くコンピューターが出てきているんです。
その種類はいくつかあり、1つは量子力学を使った量子コンピューター(量子アニーリング)が挙げられます。こちらはGoogleが主導していますが、それに対して日本では量子コンピューターを使わずにそれと同等か、むしろ速いコンピューターの開発に成功しています。
その1つが東芝の編み出した「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」(SBアルゴリズム)というコンピューターになります。
そのスピード、現在の量子コンピューターの10倍は速いと言われます。
そして量子コンピューターは宇宙よりも冷たい絶対零度でないと動かないのに対して、このコンピューターは常温で動きます。
そもそも量子コンピューターでさえ今までのコンピューターが何年もかかっていた計算を一瞬で解いてしまいます。それなのにこの「シミュレーテッド分岐アルゴリズム」は常温でめちゃくちゃ速い。これはもう勝ち目がないですよね。
そしてヘッジファンドは速さが命です。相手より先に取引を行うことによって圧倒的な勝ちを収めることができます。
これが東芝がこの度ヘッジファンドに乗り出そうとしている理由です。
ロケットサイエンティストが証券業界を席捲したあの日
2000年代も米ソ冷戦後に職にあぶれた、ロケットサイエンティストと言われる最先端のテクノロジーに精通した物理学者たちが、証券業界に乗り出したことがありました。巨万の富を築きつつもリーマンショックの引き金を引く大きな要因ともなりました。そんな彼らのことを業界たちは尊敬の念を込めてクオンツと言います。
それから20年、2020年になった今また同じことが起きようとしているのかもしれません。東芝は水面下でクオンツと言われる超エリートたちを雇用し始めています。
彼らは20年越しにまた巨万の富を築き、影ながら世界を混乱へと導くのかもしれません。
それではまた。