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量子コンピュータってなに〜実用編①〜

どうも東大フリーランサーSimanecoです。

以前こちらの記事がとても反響がありました。

私自身は量子コンピューターを使う側なので、量子コンピューターそのものを作っている人に記事を書いてもらいたいなあと思っていました。

アポが取れそうだったので、以下のような告知を行なっていたのですが

なんとか調整を経て、量子コンピューターを作っている友人に、記事の投稿を頼むことができました!

今後も専門性の高い内容を分かりやすく、皆さんのキャリアに役立つよう投稿しますのでどうぞよろしくお願いします。

【著者自己紹介】
世界的な量子コンピュータ研究の第一人者のもと、量子コンピュータの作成、実験に携わる博士課程1年。

『量子超越性』が示されたというニュースが、各種メディアで取り上げられたのは記憶に新しいことと思います。このGoogle Quantum AI Labの研究成果は10月24日付で科学雑誌Natureに取り上げられ、世界中で話題となり議論を生みました。
 これはいよいよ量子コンピュータ時代が到来するという予感を、研究者だけでなく、世間が感じ取った瞬間とも言えるでしょう。ではそもそも量子コンピュータとは一体どういった物なのでしょうか。
 端的には、量子コンピュータは現在使用できるどんな計算機よりも計算速度が早いということが言えます。そしてその応用先で重要なものとして

・物質のシミュレーション
・最適化問題
・機械学習(AI)

が挙げられます。今回は、量子コンピュータの仕組みには触れず、この3点について解説していきたいと思います。

量子コンピュータは何ができるのか

 実際Googleが作ったものは、量子コンピュータの素になる一部分で、しかも不完全なものではありますが、いわゆる実用的なマシンが今後完成したと考えて何ができるのでしょうか。

 込み入った話を抜きにすると、まず原子や分子といったものの性質をシミュレーションすることができるようになります。こうした問題は、現在使われている古典コンピュータ(京などに代表されるスパーコンピュータを指すと思ってください。)では効率的に計算することができません。ですから、材料工学や創薬、基礎科学などの分野が飛躍的に成長することが見込まれます。
 他にも、最適化問題や検索問題、素因数分解などの問題も古典コンピュータより効率的に解けるということが分かっています。実社会における建築物や物流、ネットワークなどのあらゆるシステムはある程度のレベルで最適化が行われることで初めて実用に耐えるものになります。ですから最適化問題が効率的に解けるということは社会や企業サービスにとって非常に重要な意味を持ちます。日立や富士通、メルカリ、リクルートなどといった企業が近年最適化問題に力を入れているのにはそうした背景があると言えます。
 これは最適化問題にも関連しますが、機械学習で使われる古典アルゴリズムの中には、量子コンピュータで現在より効率的に解けるものが多くあります。例えば検索問題や、連立一次方程式などもこれに含まれます。さらには量子機械学習アルゴリズムの研究も進んでいて、これからの理論的発展も期待されています。

 今回は未来の量子コンピュータの話でしたが、次回は、量子コンピュータの現在と将来的な展望について少し見ていくことにします。


今回のまとめ

 物質のシミュレーション(特に量子系)を高速に行える。
 最適化問題や素因数分解などが高速に解ける。
 機械学習を加速する。


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