ファブリックの女王、アルミ
今回は、映画の話をしようと思う。
わたしは"脳内お花畑"と言われ続けるくらい、感受性が強くてストレスに弱い人間である。
現実は悲しいことが多すぎるため、別の世界を教えてくれる小説や映画には日々救われている。
先週、サブスクで見つけて観たのが『ファブリックの女王(Armi elää!)』という映画。
世界的に有名なフィンランドのブランド、マリメッコを創り上げた一人の女性を描いたものである。
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舞台は、1950年代のフィンランド。
凍えるような寒さで晴れることも少ない国。
もともと内向的(シャイ)で思慮深くまじめな国民性を考えれば、大きな戦争に疲れ切って、世間はきっと沈んでいただろう。
よく陽の当たる他の国たちが戦後の急成長で盛り上がってる時代。
そういう中で、当時、フィンランドで苦労を重ねたアルミという名の女性が奮闘する。
彼女は、お酒の力を借りて、奇人的な態度で、道徳的には信じられない言動もあり、一見すると不健康にも見える。
でも、"何をも恐れず高い理想を語る姿"に、人々の心は大きく動かされたに違いない。
事実として、マリメッコは国民にも支持され、勢いそのまま全世界へと名を知られるブランドになった。
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印象に残ったのは、今で言ったら"躁うつ病レベル"の彼女と、傷つき合いながらも共に歩んだ愛のある人たち。
そういう支えがあったからこそ、愛と希望に溢れた理念のもとでマリメッコが存在するのだということを教えてくれる映画だった。
構成は劇中劇のようになっていて、途中で何度も、彼女の描き方に葛藤して苦労する制作陣が出てくる。
そして、そこから急にショーが始まるみたいな華やかさもあって、伝え方のこだわりとブランドへの敬意が感じられた。
環境や時代などの社会的な背景を踏まえることで、アルミの人生への理解を深めることがこの作品のテーマのようにも思えてくる。
彼女からカリスマ性や何かを学ぼうと思ったら、たしかに失望してしまうかもしれない…
なんともフィンランドらしい作品だった。
(定番の『プラダを着た悪魔』とは色々な要素で正反対だけど、わたしはこっちの方が好き。)