洞窟旅行記①

はじめまして。旅行者です。

始めに申し上げますが、こちらの文章はノンフィクションともフィクションとも、お好きなように受けとり下さい。こちらからは真実とも嘘とも言いません。

 ただ、私の旅行記を忘れないうちに書いておきたいのです。小説を読む気分でお楽しみ頂ければ幸いです。


 改めまして、旅行記を書かせてもらう旅行者と申す者です。文章は得意でないので優しく接していただけると幸いです。いくつになるか分かりませんが旅行記を続けて書こうと思っております。

 私はある日、海外の友人に連れていってもらった森で迷子?になり、溺れ、結果として未知の『洞窟』にたどり着いた経験があります。

 私はそこで色々な方にお会いするのですが、そこで起きた不思議なことをまとめようと思います。少々オカルトチックな文になりますので苦手な方は閲覧をお控えください。

 

さて、軽い自己紹介します。私、旅行者は日本人です。年や性別はご想像にお任せします。性格は、よく「こずるい」だとか「好奇心の塊」だとか「後先考えない」だとかなんて言われます。そして『未知』と言うものに数年前執着しておりました。

 若気の至りと言いますか、人生とは何だ?みたいな事を悶々と考え、結果として周囲の既視感のあるものに対して嫌悪を持つようになったのです。その結果『未知』を求め始めます。

 さて、突然ですが皆様は『別の北半球』という話を聞いたことがありますか?私はそれを上記の友人から聞いたのですが、言わば未知の地域のことです。知らない植物や地形、動物や文明がそこにあるということを海外にいたとき、友人から教わりました。

 そして半端な興味で、その入り口まで友人と行ったのです。

 簡潔に言いますと、後に私はその『別の北半球』に辿り着いてしまいました。その始まりが洞窟です。


※以下、旅行の話になります。

私は一人入口に入り、途中足を滑らせ溺れたせいで気を失っていました。目が覚めるとその洞窟にいたのです。流れ着いたのか、何かが私を運んだのかは不明ですが。気を失ったのはそれが人生で始めての経験です。

 目の前の光景は見たことが無いものでした。おそらく溺死の恐怖がその時残って無ければ一目で私は感動し喜んでいたでしょう。

 黄色の地面。

薄暗い洞窟。

白と紺のグラデーションの水溜まり。

上から何本も垂れるツタに、何か白い塊が絡まり、まとわりついていました。

凸凹の地面が水溜まりをくねらせたような形にして、奇妙な模様にしていました。水溜まりはかなりの深さです。

 何しろ溺れていたもので、私はびしょ濡れていましたし、口の中は変な味の水が残っていて、目が覚めると一瞬でパニックになりました。

 最初は溺れた恐怖で腰が抜けてしまってしばらく動けませんでした。かなり遠くまで来てしまったようでしたが、友人の名前を連呼したり、叫んで助けを求めたりしました。

 冷静さを取り戻すと、素人の知識でここの環境が安全であるかを確かめようと試みるのですが、そこでやっと私はハッとします。そこはまさに『未知』。見たこと無い環境に一人自分がいたことに気付くのです。

 おかしいことは重々承知なのですが、私はそこで異様な興奮を覚えました。自身が何年もかけても得られなかった『未知』に対面できた喜びに私は胸を踊らせました。お腹も減っていて疲れ果てている筈なのに、私は歩き回り辺りを見渡し、探検を始めます。

 私がいた洞窟は、高さはあるものの広くは無く、水辺でしたので歩ける範囲も限られています。自然と洞窟の外と思える明かりの方へ足を運びました。

 その時だったでしょうか?ふと、私は何かの気配を感じました。洞窟の壁際は音が反響するので、足音?らしいものが聞こえたのです。

 私はその時、ここがまともな地元民の住む地域なら良いが、話の通じない民族や、人を食べる生物の生存域、あり得ないけども『別の北半球』と呼ばれる地域の生物がいれば自分の命が危ぶまれると思いました。

 しかしあり得ないほどの好奇心に押され、歩みは止められませんでした。その時の私は洞窟の外を目指します。

 洞窟の外に出ると、白い光で目が痛みました。目を開けてみると、今度はもっともっと大きな洞窟がその洞窟を囲んでいました。しかし先ほどとは違い、光が漏れ、黄色のコケ?が生え、高所から滝が流れ落ち、圧巻の絶景がそこにありました。言葉を失い、口を開けて呆然と立ち尽くしましたよ。あまりの美しさでしたね。

 岩よりも小石や土が多く、柔らかい雰囲気でした。植物も動物もコケ以外に無いのですが、一種類に見えて全く違うコケが辺りに何百も生えていました。そのコケは見た目こそコケと分かるのですが、足を踏み込むとコケの長さが10から20cm近くあると分かりました。

  先ほどの洞窟の出口はキツツキの巣穴のように壁に出来ていて、壁は岩と砂と土で大きな凸凹が出来ていました。私が立っていたところは高さ10m程で、頑張れば降りれそうだと思いました。土の成分のせいか、踏んでしまうと大幅の範囲が崩れることもあり、子供のような冒険心とスリルでハラハラしましたね。

 たかが歩いていただけですけども、まるで小学生の頃の下校時間にガードレールの上をバランスを保って歩いていた頃のような、充足した気持ちを取り戻したのを覚えています。

 その洞窟は壺の中にいるような形をしていました。上が穴ぼこになって空いていて、中間の高さが一番横幅が広く、天井と底が一番横幅が狭いんですよ。壁にはさっきと似たような洞窟の穴がちらほら空いていて、たまにその穴から滝が流れていました。全体の雰囲気は光や苔のせいで黄色くて、穴ぼこになっている天井のせいで光のカーテンがいくつも床を照していました。

 面白いことにたまに滝が壁の出っ張りに当たって水を弾かせ、本来届かない高所に水を溜め、池みたいなものが出来ていたり。数少ない手段で無数の自然の造形美がそこにありました。

底まで下ると、暖かなコケのようなものが膝の半分位まで伸びて、ふかふかと私の足を支えました。その洞窟はとても静かで動物はおろか人なんていませんでしたね。絶対に人間の為に作られた筈がないのに、とても心地よいんです。

 その時でした。私はそのまま直立の姿勢で倒れてしまいました。慌てておかしいと思ったのですが、原因はすぐに分かりました。私は私が思っている以上に疲れきっていたのです。先程までは興奮と好奇心で乗り越えてきた部分が耐えきれなくなったのでしょう。指1本も動かせなくなっていました。

 このままでは食事もままならない、いやそもそも何が食べられるかも分からない。

 私は土に顔を埋めながら、そこが墓場になることを薄々悟りました。

 そこで私の上に立つ『あのこ』に話しかけられるまでは。


②に続きます。

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