『五星戦隊 ダイレンジャー』~変態紳士揃い~
1993~1994年公開(日本)
監督、小林義明・坂本太郎・小笠原猛・東條昭平・渡辺勝也
脚本、杉村升、荒川稔久、藤井邦夫、高久進、井上敏樹
地球侵略をもくろむ妖力使いゴーマ族と、気力を操るダイレンジャーが地球を守るために戦う。
※ネタバレあり
~詳しい見どころ~
《熱く激しいオープニング&エンディング》
『五星戦隊ダイレンジャー』はOPがとにかく熱いです。「転身だぁぁ! 気力だぁぁ!」と乗っけから叫び、熱い歌詞とメロディが続きます。
戦隊シリーズの中でも最高に格好いい歌だと思います。 大好きです。
エンディングも耳に残る歌で、ずっと覚えていました。「地球で一番強い奴」「命知らずはかかってこい」と、ヒーローソングとしてはびっくりするような歌詞でもあります(笑)。
《絶叫系タイトル》
「1. 転身だァァッ」
「2. 気力だァァッ!! 」
「最終話 行くぞォォッ」
と、いちいちにタイトルが叫んでいます 。
叫ぶだけではなく、途中からはネタバレをしたり、「感動!!君も泣け」と押し付けてくる、その開き直った勢いがたまりません。
《大神龍さまのインパクト》
物語の終盤になると、「すべての争いを止める」という神様的な存在「大神龍」が登場します。気伝獣などの巨大ロボット枠(気伝獣は生物)の何十倍もある巨体で、地球のあちこちで暴れまわるという大スケールの物語が展開します。敵も味方もなく破壊をし、作中の誰一人太刀打ちできないというキャラクターはすさまじいインパクトでした。
闘っていると「きちゃった///」 と飛んできて手段選ばず争いを止めようとしてきます。戦隊ものでバトルをやらせないという斬新さにしびれます。
大龍神さまの飛んできたときの半端ない絶望感ったらないです。神とかそういう人知の及ばないものの存在を最初に叩き込んでくれたのは大神龍さまだった気がします。
《魔拳士・陣の存在》
出ました広瀬匠さん。『鳥人戦隊ジェットマン』ではトランザ役で子供たちにトラウマを植え付けた彼が、今回もキザ男として登場します。
的場陣は殺人拳である「闇空手」の達人です。元々は爽やかな性格で師匠の娘ときゃっきゃうふふしていたのですが、師匠に裏切られてから人が変わってしまいました。
すべてがキザでくどくて臭くて出てくるとそれだけでおなか一杯になれるキャラクターです。
とても強くてキザなのに、意外と煽り耐性が低いところもポイントです。
生身の体でのキレッキレのアクションには感動すら覚えます。渡り合う亮役の方もさすがだなと。
「俺の拳を、貴様の血で洗ってやる!」
《クジャクと大五のセカイ系恋愛》
ダイレンジャーのメンバー・大五はダイ族の女性クジャクと恋に落ちます。しかし、孔雀明王の化身である彼女は、現代の汚れた大気に体を蝕まれていました。
メンバーの中でもかなり真面目な大五が、正義のヒーロー側である大五が、一人の女のために地球を滅ぼす選択を取ろうとします。 型破りなストーリーです。取り乱した大五は必見です。
「返せえええ!!!!」
《トラウマのラスト》
これはネタバレになりますので各話の感想部分で書きたいと思います。
《一度見たら忘れられないゴーマ十五世&ゴーマ怪人の変態率の高さ》
『ダイレンジャー』の悪役「ゴーマ」は、戦隊シリーズの怪人の中でも変態ぞろいなことに定評があります。
・ショタを猫可愛がりする敵のボス
ゴーマのボスは「ゴーマ十五世」といいます。 私は彼を越える異様なキャラクターを今に至るまで見たことがありません。
白塗りの顔、不思議な衣装、かん高くて奇妙なしゃべり方、無邪気さと邪悪さの混在した言いようのない怖さ。一目見たら瞼に焼き付いて離れなくなります。
ゴーマ十五世を見るだけでも『ダイレンジャー』を見る価値があるというくらいにインパクトの強いキャラクターです。
そしてこの人は、阿古丸というゴーマの少年を猫っ可愛がりしています。少々異常なくらいの可愛がり方でイケナイかおりがプンプンします。
まあ、多分この人には子供がいなくて、孫を甘やかす感じなのでしょうが、彼の異様なしゃべり方や雰囲気と相まって一歩引いてしまいます。
「わしの可愛い阿古丸」
・黒いレザーボンデージファッションの幹部たち
よくいるセクシーな女幹部、という話ではありません。三人の幹部(うち二人が男)がそろいもそろってボンデージ衣装なのです。 しかも怪人ではなく生身の人間。
とはいえ露出は高くなく悪っぽくて非常に格好いい衣装となっています。 手袋の先にそれぞれのカラーのネイルをつけているお洒落さんたち!
幹部は「シャダム中佐(男)」「ガラ中佐(女)」「ザイドス少佐(男)」の三人です。
戦隊モノの悪役にしては珍しく、三人は仲が良くほぼ対等にふるまっています。ザイドスだけ少佐ですが、普通にため口で意見などしており仲の良さをうかがわせます。
三人自体はかなり冷酷でシリアスな悪役なので、その仲の良さに少しなごみます。
シャダム中佐はリーダー格でクールな雰囲気なのですが、その割にキレやすいのが面白いです。動きがいちいちにちょっとチンピラっぽいのも性格が出ていて素敵です。そして悪の幹部らしくない妙に生々しい過去を持っています。
終盤ではすんごいことになって、序盤からは想像のできない怪演を見ることができます。
「お前は!」
ガラ中佐はシャダムと対等に口をきいて、時には命令口調で話したりもします。「悪とはいえ女だから攻撃をためらう」みたいな気持ちが一切起こらない迫力はさすがです。生身のままダイレンジャーの首を絞めあげ往復ビンタしたりします。幹部悪役の中で、添え物にならない女キャラというのは革新的だったのではないでしょうか。
そんな彼女ですが、実は顔の傷を気にしていたり失われた友情を引きずっていたりと乙女チックな一面を持っています。
「メロドラマはそこで終わりよ」
ザイドス少佐はいわゆるパワー系ですが、感情任せに行動しない冷静さを持っています。脳筋な見た目やしゃべり方とは裏腹に、挑発されても怒らなかったり部下の面倒見がよかったりと懐の深さがあります。最終的にはかなり笑わせてくれる憎めないキャラクターです。よく素敵な(ちょっと腹の立つ)スマイルを見せつけてきます。
「んん? なんだってぇ?」
・人妻を誘拐監禁したり女装したりするショタ
ゴーマには「阿古丸」という少年幹部がいます。ゴーマ十五世に可愛がられている子です。
生まれてすぐ母親が失踪し、父親にも育児放棄されたという子供向けヒーロー物で流すには重たすぎる過去を背負っています。そのために屈折した性格になっており、昔は生意気な子供としか見られなかったのですが、今思うと可哀想な子です。そしてショタ好きの皆さんのツボを押さえたような要素の多いキャラクターでもあります。
阿古丸は敵を騙すために女の子に化けて何日も学校に通ったりしています。お抱えの部下がいる子ですが、大切なところは自分で演じる偉い子です。
ダイレンジャーにはコウという少年戦士が混じっているのですが(六人目の戦士・キバレンジャー)、彼のお母さんを誘拐して何年も牢獄に監禁するという常軌を逸した行動をとっています。 理由はコウにはゴーマの血が流れていて、その血を憎しみで活性化させて完璧にゴーマ化させるため……なのですが。その執拗なこだわりには、自分が母に捨てられたということへの憎しみや悲しみが感じられます。
本人自体はひ弱で、取っ組み合いになるとコウにぼこぼこにされるところとかは可愛いです。
人妻を拉致監禁したり、コウを陥れるために女装して誘惑したりとなかなかアブナイ子供なのですが、父親が父親だから仕方がないね。
いろいろと恵まれない子供なのですが、イカヅチや地獄の三人官女には大切にされているところが救いです。阿古丸の寂しさをわかっているのでしょう。
「僕の手を握ってドキドキしたかい?」
・ロリショタコンのヒモ男
『ダイレンジャー』の方向性を決定づけたのが、第一話の敵「紐男爵」です。ヨーヨーしている昔風の小学生が「巡恋歌」を歌いながら追いかけてくるという奇抜な演出。 強烈すぎます。『ダイレンジャー』で「巡恋歌」を知った子供も多いのではないでしょうか。自分はそうだ!
しかも紐男爵が「巡恋歌」を歌っている理由――ヒモ男の歌だからだと。
しょっぱなの敵からしてヒモ男かよ! しかもこいつ、自覚のあるタイプのヒモ男だ 、クズだ、逃げろおお!!(なお、巡恋歌がヒモ男の歌だというのは紐男爵さんの解釈なので、実際にそうなのかはわかりません)
紐男爵は人間体もホラーですが、怪人姿はもっと強烈です。真ん中に一つ目、絡まった太い紐。紐の先にはグロテスクな目玉と口。まさに「怪人」です。モンスターではなく「怪人」です。というかアブナイ人です。
その姿で少女や少年を次々誘拐していきます。ヒモなうえにロリショタコンです。まあ本人も人間体が少年なので、ロリショタコンという表現は不適切かもしれませんが……。
とにかく一発目から強烈なキャラクターです。
そして、彼の歌う「巡恋歌」&彼の存在は、物語で最重要ともいえる伏線なのだ……!
「心から愛してますよぉ!」
・おかまのロリコン誘拐犯
『ダイレンジャー』の最大の暗部、「サボテン将軍」です。 変態揃いのゴーマ怪人さんの中でも類を見ない変態っぷりだったのが彼です。
「可愛い女の子、食べちゃいたい」「逃げないでよ、優しくするからぁ」と言って女の子を誘拐、止めようとした父親を殺害 という鬼畜っぷり。
誘拐した女の子はトラウマ級に不気味な人形に変えられて、彼のお人形遊びの相手にされます。
他にも女の子を抱き寄せ腰にすりすりしたりと圧倒的にアウトな変態っぷりを披露してくれます。おかま口調がまた強烈なのですが、これ、おかまキャラじゃなかったらもっと洒落にならなかったと思います。 おかま口調がロリコン犯罪者の危なさを緩和してくれています。
倒されるときにはダイレクトに「くたばれ、アブナイ親父!」 と言われる始末です。何のごまかしもなく、ダイレクトに「アブナイ親父」と。ひ、開き直ったよ。開き直ったよこの番組。
「この勲章の数々を。見よ、見よ、見よーー!」
・下級兵士「コットポトロ」
これは変態とは違うのですが、彼らはタキシードをイメージした格好をしています。オシャンティーです。また、日本語を普通にしゃべるのが斬新です。たまに軍服や烏帽子といった特殊な服を着こんでいる場合もあります。コットポトロのボスとされているのが口紅歌姫ですが、ハイレグで何かのフェチを追及しているとしか思えないデザインです。
「ママの作ったピンクのハンバーグ」
そのほかにも人形フェチとか個性的な怪人がそろっている楽しい職場がゴーマ宮だよ☆
全体的にアヴァンギャルドでシュールでカオスな雰囲気のゴーマ。無国籍感。そこがいいのです。