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沼津、今沢海岸における陸上自衛隊「水陸機動団」の訓練レポート -実戦さながらの訓練がすぐそこに-

普段は釣り人で賑わう何の変哲もない海岸

静岡県の沼津市今沢にある駿河湾に面した弓形の海岸「今沢海岸」は、普段は釣り人で賑わう何の変哲もない海岸である。駿河湾に面して、弓形に長く続く海岸は間違いなく静岡県を代表する絶景の1つだと思う。

この今沢海岸は、年に数回ほど不思議な光景を目撃することができる稀有な海岸としても、地元民やマニアの間でも有名である。その光景とは、日本の国防を担う自衛隊や米軍の訓練で、今沢海岸の一部を利用して実施される。

LCACと呼ばれるホバークラフト型の揚陸艇の操縦訓練は今沢海岸の風物詩

特に2022年3月6日から11日にかけて実施された訓練は、ここ数年で1番大規模なもので、米軍の揚陸訓練については過去に以下の記事で触れたが、自衛隊の「水陸機動団」による訓練は触れていなかったので振り返りたい。

島嶼防衛を担う新しい種類の部隊「水陸機動団」

ご存知の通り、日本の国土は海で囲まれており、多数の島嶼部が存在する。
これらの島嶼部防衛に置いて活躍するのが、「水陸機動団」で敵に占拠された領土の島を海からの上陸によって奪還したり、あらかじめ侵攻が予測される領土の島に対して迅速に展開できる能力を持った部隊である。

この奪還・展開能力として、ボートや使った上陸、ヘリコプターから降下したのち泳いで隠密潜入、水陸両用車を使った大規模な上陸など、様々な能力を持っているようである。今回の今沢海岸では前者2つが実施され、その能力の高さを十分に垣間見れたので写真と共に紹介する。

水陸両用車AA7V、富士総合火力演習にて

ボートを巧みに利用した迅速な上陸

水陸機動団が使う黒いボートは「特殊複合ボート」と呼ばれ、海上を高速で移動できる。ボートを使った上陸は、上陸場所に制限が少なく自由度の高いもっと基本的な上陸方法だ。

水陸機動団が利用するボートがずらりと並ぶ

ボートの上に数人が腹這いになって乗り込み、海岸に迅速に近づいてくる。
海岸に置かれたボートを見ると大きく感じたのだが、大の大人が数人乗り込むと手狭に感じた。高速で移動するボートから振り落とされないように乗っているのはかなり大変そうで日頃の訓練での慣れが必要とされそうだ。

海岸にスムーズにボートを寄せてくる上陸前の一コマ

波の打ち付ける海岸に上陸後は、緊迫した一連の場面が続き、素早くボートを海岸に上げた後に周囲を警戒する様子が見られた。

周囲を警戒する水陸機動団の隊員たち

ヘリコプターから降下、波間に紛れて海岸に隠密上陸

次に展開訓練のバリエーションとして実施されたのが、低空で飛ぶヘリコプターから海に飛び降りて海岸に上陸する「ヘリキャスティング」である。この後、飛び降りた隊員は洋上を遊泳して上陸地点まで侵入する。もちろん上陸後の任務に必要な小銃といった装備を身につけての遊泳なので、その身体能力は一般人からは想像もつかない常人離れしたものだと窺い知れる。

上陸に必要な装備品とともに低空でホバリングするヘリコプターから飛び降りる様子

ヘリコプターが隊員を下ろした地点から海岸までかなりの距離で、ヒヤヒヤしながら海岸を見つめていると小銃を抱えながら遊泳してきた隊員が気配なくヌッと現れる。遠い距離を重い装備を抱えながら泳いできたとは思えないほど、冷静沈着な表情であった。まさに実戦さながらの訓練が沼津市の今沢海岸では実施されていた。

遊泳してきた隊員が気配なく波打ち際に現れる瞬間

このように日本の防衛を担う自衛官の訓練を、国民が意識する場面はとても少ないと思う。しかし、今沢海岸のように案外身近な場所で実施されるような訓練も少なからずある。訓練を見ていた地域の人にお話を聞くと理解のある人が多く、応援している人も多い印象だった。地域外の人が見るとギョッとしてしまうかもしれない光景だが、このような地道な訓練の積み重ねによって、我々が安心して生活できる社会が維持されているのである。

また、今回の水陸機動団の訓練は、昨今の日本の安全保障問題の中でホットワードな島嶼防衛について、喫緊の問題であると改めて認識させられた。

ヘリキャスティングされ遊泳してきた水陸機動団の隊員と富士山


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