シカモア/Googleの量子コンピューター、スーパーコンピューターを凌駕する性能を達成
2024年10月、Google Quantum AIの研究チームは、量子コンピューター「シカモア(Sycamore)」が特定の計算において、従来のスーパーコンピューターを上回る計算能力を発揮できることを発表しました。今回の成果は、「弱雑音状態(weak noise phase)」と呼ばれる新たなフェーズで量子ビットを動作させることにより、計算に影響を与えるノイズ(雑音)を抑え、従来の量子計算の課題を克服できることを示しています。
「弱雑音状態」による計算の安定化
量子コンピューターは、並列計算の特性を持つため、クラシックコンピューターでは不可能な膨大な計算を短時間で行える可能性があります。しかし、量子ビットは非常に繊細で、温度や磁場の変化など外部の影響でエラーが発生しやすい性質を持っています。今回の研究では、量子ビットが特定の条件下で「弱雑音状態」に移行し、ノイズの影響を抑えながら複雑な計算を行えることが確認されました。この技術により、エラー修正の負担が軽減され、より高度な量子計算の実行が可能になります。
実用化に向けた次のステップ
Google Quantum AIのチームは、今後「超古典的(beyond classical)」な量子計算、つまりクラシックコンピューターでは実行できないような量子コンピューター特有の計算を目指しています。今回の研究成果は、その実用化への重要な第一歩であり、特にランダム回路サンプリング(RCS)と呼ばれる方法を活用した高精度な量子計算の実証が期待されています。この進展により、金融や医療、科学研究分野での応用可能性が広がり、量子コンピューターの実用化に向けた道がより具体化しました。
この研究は量子コンピューターのノイズやエラー修正といった長年の課題を克服するものの、さらに多くの実証実験が必要とされており、スーパーコンピューターを超える性能を持つ次世代デバイスへの期待が高まっています。