ラース・フォン・トリアー『ハウス・ジャック・ビルト』
ついていけない。と思いつつ、どこかで見ちゃう、ラース・フォン・トリアー。日本では当然ながら18禁の「ハウス・ジャック・ビルト」をAmazonで見る。トリアーの想像力そこなし。それにここまで表現しちゃうんだ。やりたい放題の恐ろしいジジイでもう誰にも止められない。
「ニンフォマニアック」でセックス中毒者の女性を2部にわたり描き(最後もシーンが圧巻)、「ハウス・ジャック・ビルト」ではナチに心酔した殺人鬼の異様な芸術性を描く。
観客の皆様、ここで笑って、ここで泣いてという親切な映画ではなく「おれさまが映画撮ってやってるんだ!お前らは知らんだろうが、これが芸術だ!」という傲慢さに満ちているが、実際に映像は美しく物語には納得しないが、我が芸術の道を進みたい欲に圧倒される。あっぱれだよ。
カンヌで客が吐き気がして出ていたのも納得。殺して殺して夢を叶えたいジャックを擁護せず、人を殺す動機も同情できる理由は一切見せず、その行為のみで構成されたセンセイショナルな作品。
ジャックに天罰が下るのが、せめてもの救いだ。
夢のためなら殺人でもやっちゃうジャックと、自分の想像力の実現のためならこんな映画撮っちゃうラース・フォン・トリアーが重なる。ナルシシストに違いない監督の自分自身へのオマージュだ。