【与太雑記】アトラス院について
魔術協会の三大部門の一角たるアトラス院。「アトラスの六源」という時計塔における君主に相当する幹部格まで登場し、少しずつ内情が垣間見えてきましたが、今回は現在までに開示されている設定を整理しつつ、その起源について与太っていきたいと思います。ついでになにかとアトラス院の錬金術師と近いスタンスを持つ蒼崎橙子に関するある一つの謎についてもこの機会に一緒に語ってみようかと。
型月伝奇作品におけるアトラス院
型月伝奇作品でアトラス院について触れられたのは2002年の「MELTY BLOOD」が最初になる。次期院長候補のシオン・エルトナム・アトラシア。かつてアトラス院の院長を務めながらもアトラス院から離れ、死徒二十七祖へと堕ちたズェピア・エルトナム・オベローン。ブラックバレルをはじめとしたアトラスの七大兵器。などなど現代の型月伝奇世界にたびたび登場する設定も「MELTY BLOOD」が初出となる(厳密にはブラックバレル=黒い銃身は同人版「月姫」のとあるルートが初出なのだが)。
「MELTY BLOOD」以降の作品もアトラス院の設定は断片的に開示され続けてきた。アトラス院の錬金術師はその魔術体系の性質から時計塔の魔術師と比べて大気の魔力への依存度が低い、というか大気の魔力を利用できない。だが、その性質が功を奏し、彼らは魔力が枯渇した世界観であっても魔術体系を維持する事ができた。それが「Fate/EXTRA」の世界におけるアトラス院の扱いである。「EXTRA」の世界は西暦1970年のとある儀式によって大気の魔力が枯渇し、旧き魔術の実践が困難となった世界だ。大気の魔力の枯渇によって力を大きく減じた魔術協会は地上の覇者である西欧財閥の後押しを受けた聖堂教会によって解体される憂き目をみる。だが、魔術協会の中でもアトラス院のみはその大気の魔力に依存しない魔術体系の性質から大気の魔力が枯渇した後も旧き魔術の徒としてあり続けた。それも「Fate/EXTRA」という物語が始まる前までの話ではあるが。
「事件簿」にて時計塔関連の設定が深掘りされるまで、アトラス院は魔術協会の三大部門の中でも設定の開示件数が多い方であった。それでも登場する魔術師が、元院長や院長候補などと揃いも揃って大物ばかりでアトラス院の組織体系については長らく不明なままであった。エルトナムが没落貴族と言われていたことから、時計塔の君主の家系に相当する家系が存在するのではと推測はしていたが、「ロード・エルメロイII世の冒険」によってその内情に幾ばくかの光が差し込まれつつある。
アトラス院の技術体系
アトラス院は錬金術師の集まりだが、彼らが扱う錬金術は時計塔を中心とした西欧のソレとは大きく異なる。時計塔を中心とした魔術世界での錬金術とは、中世以降に主流となった物質の変換を扱う現代錬金術。一方で魔術の祖に位置づけられるアトラス院の錬金術は現代のソレと毛色が異なっている。
アトラス院の錬金術師たちの特徴として魔術回路の少なさが挙げられる。その魔術回路の少なさから彼らは自然干渉系の魔術への適性が著しく低い。結果、彼らは自分たちは外界、自然と関わることは出来ないと認め、人間として終着に至ることを志した。それが「高速思考」や「分割思考」等の人体を演算装置として用いる術である。彼らにとって肉体とは脳が制御するものではなく、脳をよりよく機能させるために肉体がある、と考えている。
アトラス院が扱う錬金術とは世界を解明し、未来を作り上げるもの。時計塔の魔術師たちが「根源」と繋がる魔術回路を通して理想の未来を引き寄せるように、アトラス院の錬金術師は自身の頭脳(思考)によって理想の未来を作り上げることを目的としていた。それも遠い過去の話。現代のアトラス院は初代院長が証明してしまった『終末』を回避するために兵器を作り上げては廃棄し続ける自滅機関と成り果ててしまった。
人間という人体を研究し、人体をより優れた演算装置として利用し、理想の未来を作り上げる。「高速思考」や「分割思考」もそのためにあったのだが、初代院長が証明した『終末』の回避の為の兵器作り……つまりは秘技(魔術)と科学の融合を成す為の技法へと切り替わってしまったのだ。
その研鑽の果てに作り上げられてしまったのがブラックバレル、ロゴスリアクトなどのアトラスの七大兵器。世界を救うために作り上げられた兵器は、同時に星をより惨たらしく焼き尽くし兵器と化してしまったのであった。
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