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【感想】TYPE-MOON BOOKS material

 今回は「TYPE-MOONエース VOL.15」の特典である「TYPE-MOON BOOKS material」の中から設定的に気になるところをピックアップして自分の中で整理した内容となっています。例のごとく「感想」とは名ばかりの内容ですが、ご容赦ください。


「Fate」シリーズの相関図

「EXTRA」世界の分岐点

 「Fate/EXTRA」の世界は1970年代から分岐した世界。具体的には本来であれば西暦20◯◯年に起きる筈だったとある儀式が1970年に起きてしまったことが分岐原因であるとされている。「TYPE-MOON BOOKS material」でもその位置づけ、扱いは変わらない。
 確かに人類史の上の「Fate/stay night」と「EXTRA」の分岐点は1970年なのだろう。だが、世界の根底となる「前提」そのものが異なることこそが、「EXTRA」がイフとして扱われる所以でもある。

 ムーンセルは「EXTRA」世界限定の舞台装置であり、他の世界には存在しない。同人版「月姫」をベースとした旧作「MELTY BLOOD」でも、「ムーンセル」という単語が登場しているが、それは魔術と科学を融合した疑似霊子理論を指す言葉に過ぎなかった。そして、ムーンセルの起源はそれが設置されている月そのものよりも古く、『太陽系最古の物体』と設定されている。つまり月にムーンセルが存在する「EXTRA」世界と月にムーンセルが存在しない他の世界は46億年以上前、太陽系が誕生した時点で分岐している可能性がある。だが、一方でムーンセルと同じ異星文明が作り上げた捕食遊星ヴェルバーとそのヴェルバーを原因とする紀元前12000年の「大破壊」は「EXTRA」世界に限定せず、多くの世界で起きた共通イベントとして扱われている。
 ムーンセルが存在しない世界でも「大破壊」の経緯に差異こそあれど、その結末に大きな違いはないのか。あるいは現代までムーンセルが存在し続ける世界が「EXTRA」世界だけであって、紀元前12000年まではどの世界にもムーンセルが存在していた可能性はないだろうか。
 ヴェルバーによる捕食は惑星の地表に栄えた文明だけではなく、大陸すら押収してしまうのは「Fate/Grand Order」のブリテン異聞帯の起源を見れば明らかだ。ならば月の内部の大部分を占め、ムーンセルを構成する全長三千キロメートルにも及ぶ巨大なフォトニック結晶体すら押収する事も不可能でないだろう。つまり、「ムーンセルが存在しない世界」とは地球や月が誕生する以前から存在しなかった訳ではなく、紀元前12000年の戦いでヴェルバーによってムーンセルが押収されてしまった世界を意味するのではないだろうか。

「Labyrinth」の位置づけ

 「sn」の原型たる旧Fate。その旧Fateをベースとする「Fate/Prototype」。その「Prototype」の前日談にあたる「Fate/Prototype 蒼銀のフラグメンツ」。その「蒼銀のフラグメンツ」のスピンオフ小説が「Fate/Labyrinth」である。
 などと中々複雑な立ち位置の「Labyrinth」であるが、作中で言及されている通り、物語の舞台となる「Labyrinth」の世界観そのものは「Prototype」の世界とは異なり、いわゆる「sn」等を中心とした「Fate」世界に属するものとして扱われていた。特に亜種聖杯戦争なる儀式が世界中に定着していることからも「Fate/Apocrypha」に準じた世界観であると推測されていた。
 そして、今回の「TYPE-MOON BOOKS material」での時系列順相関図にて明確に「Apocrypha」の世界に属することが判明することとなった。

「極光のアスラウグ」短編

金狼

 他作品ネタその①。いわゆる「魔法使いの夜」ネタ。
 幻想種の一種である人狼。人狼の社会において毛並みの色は血統の良さを表す。現代まで現存する人狼たちの間で最高位の血統は銀色だと言われる。銀の人狼は人狼の一族を束ねる長であり、幻想種としての階位は魔獣より上の幻獣に位置する。金の毛並みを持つ金狼はその銀色すら上回る。
 金狼とは現代まで続く人狼たちの祖となった存在であり、原初の人狼とも呼ばれる。神代において森の神として扱われるほどの高次存在。現代の魔術世界において金狼は絶滅した種であるが、一匹のみ生存が確認されている。
 神代にて生存していた種であるため、紀元前1000年頃の北欧神代世界でも神秘に属する脅威として人々に認知されていたようだ。

ムールクラーケ

 他作品ネタその②。こちらも「魔法使いの夜」ネタ。

 「魔法使いの夜」において蒼崎橙子とその使い魔である金狼ルゥ=ベオウルフの世界を巡る旅路で遭遇、対峙した四つの異常の一つ。
 紀元前1000年頃の北欧神代の世界では金狼やトロールと並ぶ人の手の届かぬ神秘的な存在として知られていたようだ。その正体は未だ謎だが、「月姫R」にて登場した異形の死徒の名称が「クラーケ」だったことから、ムールクラーケも魔眼収集列車や神代連盟(神代同盟)と同じく、死徒二十七祖に関わりがある脅威なのかもしれない。

ロード・エルメロイII世の冒険 用語辞典

神體

 正式名称は「神臓鋳體」。物理的に残った神の破片。日本の魔術はこの神體を通して西暦以降も神代に近い魔術形式を維持している。
 初出は「ロード・エルメロイII世の冒険」の「彷徨海の魔人」の筈なのだが、用語辞典での口ぶりではどうも他作品でも既に登場していたようにも思える。おそらく以下の2点が該当すると思われる。

 一つはフェルグス・マック・ロイが持つカラドボルグ。ガウェインが持つエクスカリバー・ガラティーンの原型ともなったこの剣は古き神々の欠片から鋳造されている。もう一つは坂田金時の宝具「摂津式大具足・熊野」。日ノ本ではなく、海外から流れ着いた何らかの欠片を材料に作られたとされる。どちらももおそらく紀元前12000年にセファールと交戦し、これに敗れた神々の欠片を素材として利用したと考えられる。また摂津式大具足の技術を流用して作られた源為朝も広い意味では神體に該当する可能性がある。

天仙

 最上位の思想鍵紋を継承し、その能力を完全に引き出す域にまで達したモノ。思想鍵紋を継承したモノは思想盤から常に影響を受けており、天仙にまで至ったモノは半ば世界と融合しつつある状態であるとされる。
 その影響力は英霊、境界記録帯(ゴーストライナー)にも比肩するが、その力を自由に振るうだけの自我を保つことは難しい。ある意味では神霊や『両儀式』に近い存在かもしれない。

 神代が終わり、実体を失った神は自然へ溶け、神霊となった。自然現象から発生したそれらは、自然現象に意思など不要と判断された世界の理によって意思を失い、高次の場所で虚ろな神霊として世界を見守っていると魔術世界では考えられている。
 『両儀式』はこれら万象に宿る神々(神霊)と近く遠い存在と言えるかもしれない。人間を構成する三要素。肉体、魂、精神。精神は脳に宿り、魂は肉体に宿る。本来なら脳に宿った精神から知性が生まれ、そこから人格が形成されるが、『両儀式』とは式の肉体そのものが持つ人格。式と織が『両儀』であるなら『両儀式』は太極を象るモノ。つまりは根源であり「 」である。「 」に近いものは肉体を持って生まれること出来ず、母体の中で死に行くのが常である。単独で世界を書き換えてしまうような存在の生存を世界そのものが許さない。だが、両儀家はソレを生かす技術を持っていた。もちろんそれだけでは意味がない。たとえ無事に生まれたとしても「 」は無。無から知性という方向性は生まれない。そこで両儀家は「 」という『両儀式』の起源を起こす事で意志を与えることに成功している。

 根源と繋がりながらも、肉体(実体)と共に意志という方向性を失った神霊。根源と繋がる肉体だからこそ、本来なら知性(意志)という方向性を持ち得ない『両儀式』。型月伝奇世界における、全能に近い力を有していてもそれを行使する意志を持てない高次存在たち。天仙もこれに近いケースなのかもしれない。

プトレマイオスの宝具

 『月は知らず、久遠の光』。若かりし頃のプトレマイオスが持つ宝具。あらゆるエネルギーを強大な光と熱に変換する鏡。世界の七不思議の一つに数えられる「ファロスの大灯台」の要となったこの鏡はプトレマイオスがイスカンダルとの東方遠征の途中で手にしたものらしい。
 この宝具に似ている宝具が一つある。「Fate/EXTELLA」に登場するアルキメデスが持つ『集いし藁、月のように燃え尽きよ』だ。この宝具は生前に彼が開発した太陽光と大気のマナを取り込み、熱線として照射する鏡の姿をした魔術礼装である。
 あらゆるエネルギーを光と熱に変換する鏡と太陽光とマナを取り込んで熱線として照射する鏡。『月』の名を冠し似たような性質を持つ二つ宝具の相似性は偶然なのかどうか。
 推測となるが、アルキメデスは「ファロスの大灯台」を参考にこの魔術礼装を作り上げたのではないだろうか。アルキメデスはプトレマイオス自身と繋がりはないが、一説ではアレクサンドリア図書館にて学問を修めた可能性がある。これが真実であるならアレクサンドリア図書館に在籍していたアルキメデスが「ファロスの大灯台」を解析し、その原理を転用した魔術礼装を開発していてもおかしくはないだろう。

退魔四家

 混血の天敵とされる両儀、七夜、浅神、巫浄の四つの家系を指す言葉。元々はファンの間で使われていた言葉だったが、「TYPE-MOON Fes. オフィシャルパンフレット」の一問一答コーナーにて奈須きのこ氏で初めて公式で使用された。今回の「TYPE-MOON BOOKS material」でも使用されたことから、半公式化していると言えるかもしれない。
 
 日本の魔術組織が利用する神の名をみだりに口にしない、あるいは別名を用いるのは「言挙げしない」ことで摩耗していく神秘を保つためであり、退魔四家も同様の手段を取っていたらしい。現代の日本には八つの神體が現存しているが、退魔四家も神體を所有していたのならかつて神體は十二個存在していたのか、あるいは退魔から離れた後も神體を所有し続けているのか。「月姫」の世界観では七夜は滅びているが、「Fate」の世界ではまだ残っている可能性も考えられる。
 
 両儀家の遠縁にあたる夜刧には蜘蛛を連想させる異様な剣術は退魔四家から伝わったものとされる。蜘蛛を連想させるといえば七夜の体術に似ている。大昔では両儀と七夜の間には深い交流があったらしく、式が淨眼の素養を持つのもそういった経緯からだとか。故に七夜の体術が両儀を経て、夜刧に伝わったのか、あるいは七夜もまた両儀と同じく夜刧と遠縁関係にあるのかもしれない。

冒険の時系列

 「ロード・エルメロイII世の冒険」は「事件簿」から数年後の世界を舞台としている。「事件簿」は「SN」とほぼ同時期の2003年~2004年に起きた物語だ。
 具体的に第五次聖杯戦争から何年後かについての言及はないが、他作品、主に「空の境界」から計算することが出来る。「冒険」に登場した両儀末那の年齢は7歳程度だが、「未来福音・序」では10歳程度。「未来福音・序」は2010年頃の物語であるため、「冒険」は2007年頃の物語だと考えられる。


  • 2003年~2004年:ロード・エルメロイII世の事件簿

  • 2004年:Fate/stay night(第五次聖杯戦争)

  • 2007年:ロード・エルメロイII世の冒険

  • 2008年:両儀末那が瓶倉光留と出会う

  • 2009年:Fate/strange Fake※

  • 2010年:空の境界 未来福音・序

※グレイの年齢からの推定。事件簿時点で15~16歳程度。「Fake」では20歳になるかならないか程度の『外見』


 「冒険」の時点で「伽藍の堂」のオーナーが水原真鮎だったことからも「冒険」は2007年の物語と判断して問題ないだろう。水原真鮎とは誰か?という人は劇場版「空の境界 未来福音」の一問一答を参照のこと。


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