【与太雑記】魔法はどうして生まれた?(前編)
今回は型月伝奇作品でも作品の垣根を超えて言及される機会が多い、『魔法』についての設定を整理しつつ、どうして魔法などが生まれることになったのか、について与太っていきたいと思います。本来は二つの記事で終わる予定だったのですが、また量が増えてしまったので前後編で二分割します。
型月伝奇世界の魔法の定義
型月伝奇作品において魔術と魔法は明確に異なるものとして扱われる。魔法とはその時代に実現不可能な出来事を可能とする神秘。どれほど難易度が高くとも膨大な時間と資金をかければ実現可能な結果は魔法とは呼ばれない。
魔術とはあくまで「過程」をショートカットし、「手段」を個人だけで可能とする技法。もちろん難易度が高い事象、現象であるほどそれを魔術で実現するための代償は大きくなる。中には『出来ないけど出来ているように見せる』などのイカサマめいたものもあるぐらいだ。だが、魔術は世界で定められた許容範囲内に限れば不可能などない。そういう意味では魔術は『万能』であるとされる。
その時代の人間の文明と技術力で実現可能な現象、事象の範囲内であれば魔術に出来ないことはない。逆にいえばそれは現代の魔術は科学で代替可能なことを意味する。あるいは科学の代替として魔術が存在しているのか。個人の力で文明の代替が可能であることは凄いことであるが、そのために必要な前準備は文明のそれと同等か上回ることもしばしばあるため、素直に文明の利器を用いた方が効率的なのである。このように魔術とは「過程」が奇跡であり、出力される結果は奇跡たり得ない。「結果」が奇跡になるのは魔法の領分となる。魔術は人知が及ぶ範疇に限定されるが万能にある。一方で魔法は汎用性こそ低いが人知が及ばない事象・現象を引き起こし、誰にも出来ないことを可能とする点で魔術世界において『万能』と評される。
余談だが、魔術世界では際立った特性よりも万能性こそが重視され、『万能』であることが尊さの証、『ブルー・ブラッド』として扱われる。時計塔の三大貴族の筆頭たるバルトメロイ家の魔術特性が『万能』であり、その魔術回路が『貴き魔術回路』(ブルー・ブラッド)と評されるのもこのことに由来していると推測される(あるいはその逆か)。同じロードたちすら下に見るほど強烈な貴族主義的な思想のバルトメロイ家だが、そんな彼らが『第一魔法の具現者』のみ自分たちと対等の魔術師と捉えるのも『魔法』の万能性を指してのことなのかもしれない。
魔法はその時代において実現不可能な出来事を可能とする奇跡。故に過去、文明が未熟だった頃では数多くの魔法が存在していたとされる。だが文明の発展に伴いかつて不可能だったことは可能となっていった。それに伴い多くの魔法は魔術へと零落していった。が、多くの神秘が文明の力で実現可能となった現代において、いまなお魔法として君臨し続ける奇跡が存在する。それがいわゆる『現代の五大魔法』と評される五つの奇跡、人類に最終的に残される五つの課題である。
現代の五大魔法
第一魔法
一番目の奇跡。魔法の中でも最も古い魔法として扱われ、成立は西暦開始前後と考えられている。その魔法の内容は詳細は不明だが、時計塔では一部の特権階級の魔術師たちにとって常識であるようだ。ある意味では「無」に等しいエーテル塊との関連性が示唆されていることから、『無の否定』ではないかと推測される。
第一魔法の具現者は魔術世界における魔女ユミナ。ユミナの名は時計塔の十二学科の一つ、呪いと薬物を扱う『植物科』の創設者として知られるが、魔法使いとしての知名度はゼルレッチよりは低く、位階が開位になるあたりでようやく知られる程度である。魔術協会において魔女というカテゴリーは『女の魔術師』を意味する言葉ではなく、人間とはそも種から異なる超自然的な存在、つまりは妖精の一種だとされる。
既にユミナ自身は死去しているが、その直系はかろうじて存命中。それがユミナの直系であるマインスターの魔女と人間の間に生まれた久遠寺有珠である。
第二魔法『並行世界の運営』
二番目の奇跡。その内容は文字通り無数に存在する並行世界への観測、移動を可能とする奇跡。
使い手は時計塔の十二学科の一つ、『鉱石科』の創設者として知られるキシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。現存する四人の魔法使いの中では蒼崎青子と並んで頻繁に現世に現れるためか知名度は高く、古い家系や時計塔に所属する魔術師なら当然のように知られている。
ゼルレッチ自身優れた魔術師であるためか、この第二魔法を応用した様々な礼装を開発している。並行世界に繋がる極小の穴を通して他の世界とマナを共有する宝石剣。容積を無視して内部に大量の物品を収納可能な宝箱。世界に3か所存在する、並行世界間にある次元の壁をある程度無視できる魔法使いの匣。これらはゼルレッチの制作物であるとされる。
第三魔法『魂の物質化』
三番目の奇跡。その内容は魂を物質化し、精神体でありながら物質界に干渉可能な高次生命体を生み出す業。つまりは真の不老不死を体現する奇跡。
使い手はアインツベルンのホムンクルスたちの創造主。魔法としての歴史自体は第一魔法よりも古く、紀元前100年頃から存在していた。その最後の使い手は西暦が始まる前夜(神代が終わる直前)にこの世から去り、実現不可能となったが、この最後の使い手は術式を後世に伝えるためにホムンクルスを鋳造していた。このホムンクルスが後のアインツベルンとなる。
アインツベルンは千年近い研鑽の果てに、亡き主とほぼ同性能を持つユスティーツァを偶然にも鋳造する。ユスティーツァは第三魔法を証明したことで、第三魔法の再現可能状態となったが、その効果は極めて限定的なものであった。この根源に接続し、第三魔法を再現可能なユスティーツァの魔術回路を利用したシステムが後の冬木の地での英霊召喚と聖杯戦争である。
第三魔法の内容は協会内部でも長らく秘密として扱われているが、時計塔の君主やアトラス院の院長などは知り得て当然の立場にあるようだ。
第四魔法
四番目の奇跡。未だに内容も使い手も不明な魔法。
謎多き魔法であるが、現存する魔法使いたちは異口同音に「確かにそれはある」と実在を認めている。
第五魔法『青』
五番目の奇跡。その内容は時間旅行に端を発するが、時間旅行の概念は第二魔法に一部含まれるため、未だにその真価は謎に包まれている。
現在の使い手は蒼崎青子。ゼルレッチと並んで頻繁に現世に干渉する二人の魔法使いの片割れである。もともとは三代前の当主が三咲の土地に眠る根源へ繋がる門を通して編み出した魔法。
1980年代ではその内容が時間旅行に端を発していることについて身内である蒼崎橙子ですら知り得なかったか、2000年代にまでなると君主などの協会上層部にもある程度情報が知れ渡っている。また魔法使いに多少なりとも縁がある家系であるためか、遠坂家の時臣は青子が扱う(もっとも単純な魔術回路でのみ可能とする第五架空要素を熱量として撃ち出す)魔弾を指して、『魔法の一端』であると言及している。
余談だが、青子が「MELTY BLOOD」で使用する「逆行運河/創世光年」は「Fate/Grand Order」に登場する第一の獣たるゲーティアが目指した計画と同名。これは、ゲーティアの死の概念のない天体創造、つまりは「ゼロに戻ってから良い前提を作り直す」という選択が、ある意味では魔法に近しい行為であったためだとされる。
第六法
現代の五大魔法には含まれない神秘。使い手はもちろん内容もいまだ不明。
同人版「月姫」の世界観ではアトラス院のかつての院長であったズェピア・エルトナム・オベローンがこの第六法に挑み、敗れたと記録されている。だが、自らの敗北を予見していたズェピアは第六法というシステムの書き換えこそに失敗するも、システムそのものに留まることが出来た。それこそが「Program No.6 error」こと『タタリ』である。ズェピアはタタリによって真祖の肉体を手にし、最終的には自身が『第六』に至る事を目指していた。
以上は同人版「月姫」の世界観でのズェピアの経歴であり、リメイク版でも共通しているかは不明である。「Fate」の世界観では未だにズェピアは死徒にこそなっているが、アトラス院の院長のまま。そして、彼が第三魔法に興味を持つと設定されている。
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