見出し画像

できない理由を自分で探して、だからしょうがないと思っている自分に気づいた。

前にゴミ収集の仕事をしていたことがあります。単発で仕事に入る派遣をしていたことがあるのですが、簡単な清掃の仕事だと思っていたのに、派遣先に着いたらビックリ、ゴミ収集のお仕事でした。



ゴミ収集車に乗って、清掃車にポイポイ投げ入れていく、誰もが知っているお仕事。




体力に自信がなく細身の僕は、場違いなところに来てしまったと怯えていました。抗うつ剤をやめてから、まだ体調が回復せず、頭痛やめまいがしていたんです。


体力系の仕事は避けていたのに、ミスった。


そして清掃員の人って、なんか怖いイメージありませんか?なんとなく柄が悪いような、ちょっと悪そうな。


会社について、そのイメージは合ってました。ちょっと怖そうな社員の方から睨みをきかせられ、今日は終わった…気持ちになりました。


収集の仕事は、かなりの体力仕事。ほぼ全力で走っては投げ、走っては投げ。もし息が切れてバテたりしたら、怖そうな社員さんにたぶん蹴られる。






はぁ…とんでもないところにきちまっただ。オラ田舎に帰りたいべ。もうあとには引けないこの気持ち、人はそれを絶望と呼んだ。


制服に着替え、名前を呼ばれて、その日の朝に誰の車に乗るかが言われます。


怖い人と当たりませんように。


怖い人と当たりませんように。


願いが叶ったのでしょうか、闇に咲く小さな光のように、その日に組んだ方は優しい感じの方でした。



とりあえずホッとした…



清掃車なんて、もちろん乗ったことがなかったのだけど、一通り説明を受けて、朝礼をしていざ出発。



迷惑かけないように、仕事しなきゃ。体力持つかなぁ。不安しかありません。


車乗ってすぐに、運転手さんが、

「そんなペットボトルで足りるの?たぶん足りないと思うよ。」


僕が持っていたのは、よくあるサイズの綾鷹。これを全部飲み切るとは思えなかったので、


「これで大丈夫です。」


そう答えたのですが、全てにおいて甘かった。



仕事が始まって30分。
まさかのバテる。



その日は6月で気温が30度まで上がった。天気は快晴、炎天下の中走ってたらいきなりバテた。それぞれの家の前に置かれたゴミを集めていくので、ジグザグに走るんです。でも早すぎる。


どんなに早くても午前中までは持たせるはずだったのに、さすがにヤバくないか?


相方の運転手さんは涼しい顔をして、黙々と仕事をしている。しかもすごい速さだ。あんなに一気にゴミ袋を持てる人、見たことない。どんなパワーしてるんだ。





僕はせいぜい4つ。その人は10個は持っていた。倍以上の仕事を平気な顔でやってる。お歳だって50歳は超えているだろうその人の体力とパワーは、エゲつなかった。

本当に同じ人間なのか。


暑さがこんなに体力を奪うことも知らなかった。こんなに汗だくになったことはないぐらい、汗をかき、服がびっしょり。始まって1時間もたたないうちにリタイアなんて、かっこ悪すぎるから必死についていく。息が戻らないし飲み物ももうない。


何も飲まないと、さすがに死んでしまう。


一瞬気が遠くなり
命の危機を感じたので、
運転手さんにお願いしてみた。




「すいません、どこかの自販機で飲み物買ってもいいですか?」



「ほら、やっぱり言ったでしょ。あははは。どこかに寄るよ。」


砂漠で行き倒れて、水〜水〜って行き倒れた人の気持ちが少しわかった気がした。


飲み物を買って、また走っては投げ、走っては投げ、昼休憩のころには、魂が半分抜けたようになってました。体重3キロは減ったと思う。



やばい、バテすぎてご飯食べれないかも。



「午後動けなくなるから、ご飯しっかり食べるんだよ。」


見透かされたような言葉に反応できないぐらい、バテバテでした。ほんとうにバテると呼吸が戻らないんです。たぶん運転手さんもわかってたよね。


体調がずっと悪く、あまりムリには身体を動かさないようにしていた。でも、ここまで必死に身体動かしてたら、頭痛やめまいはどこかに吹き飛んでいた。


めっちゃ疲れて、汗ヒタヒタだけど、身体が軽く感じた。頭痛やめまいもあまり感じない。あれ…なんでだろ?


疲れすぎて朦朧とする頭で、そんなことを思っていた。


昼食を飲み込むように食べ、2リットルの水を買いこみ、午後のお仕事。スピード落とすと、その日の仕事が終わるのが遅れてしまうから、なるべく早くしたい、でも体力はもう使い切っていた。



もはや自分との戦い。






だけど、身体は正直で午後はほぼ走れず、歩きながらになってしまいました。「ムリせずやるんだよ、倒れたら大変だから。」迷惑かけてしまったのにイヤな顔しない運転手さんでよかった、ごめんなさい。



なんとかその日の仕事を終えて家に帰ると、もう立ち上がれませんでした。ふと顔を触るとジャリッという音が。



汗の結晶が身体中に!


君は誰ですか?と問われたら迷わずこう答える。



私はただの塩です、と。


身体を引きずるようにお風呂に向かい、湯船に浸かるとなんだから無性に悔しくなってきた。体調が悪いから仕方ないと理由をつけていた自分に腹が立った。





できない理由を自分で探して、だからしょうがないと思おうとしていた自分にムカついた。





このまま終わっていいのか?こんなもんじゃないだろ?またこの仕事をやって、そんな弱い自分を乗り越えようと思ったんです。


それからほぼ毎日その仕事に行くようになりました。自分との闘い、負けられない。ナゾのスイッチはマックスオンになっていました。


何度も心折れそうになり、やめようとも思いましたが、2週間後には、バテることもなくなり仕事をこなせるようになっていました。


一見怖そうに見えた社員さんも、心根はいい人たちばかりで、妙に話が合いました。まるで仲間のように接してくれて、正社員にならないかとスカウトまでされてしまいました。





僕もみんなが好きだったので、認められたことは嬉しかったです。





そして、バテずに仕事をこなせるようになった自信。体力がないからできない自分は、もういなくなっていました。





不思議なことに、体調もよくなっていきました。身体動かすのも大事ですね。






僕はこのゴミの仕事をして、自信を取り戻したんです。自分に対しての思い込み、これは自分を小さくしてしまいます。小さな箱から出られた気分でした。





これを乗り越えられたんだから、なんでもできるという自信。


何気に楽しかった仕事でした。みんなはバカ話しながら、元気に走ってるのかな。



もし全てに夢破れたら、お世話になります。でも、そうならないように頑張ります。


いいなと思ったら応援しよう!

セラ
いつも記事をお読みいただき、ありがとうございます。少しでもお役に立てれば幸いです。