僕が考えた最強のデジタルカードゲーム


僕はデジタルカードゲーム(DCG)が好きで今までそこそこいろんなタイトルを遊んできた。

ある時期を境にDCGというジャンルは爆発的な伸びを見せて数多くのタイトルが世に出された。

個人的にDCGというジャンルは客層を定着させるのが非常に難しいと思っていて、様々なタイトルが乱立しては消えていったのを目にしてきた。

しかしそんな中でもいまだに根強く生き残っているタイトルも存在している。

では多くの人に愛されるDCGの条件とは何か。個人的な主観で自分が面白いと思う要素を分析していこうと思う。



1.プレイ人口が多い事

いきなり何を言ってるんだこいつはと思ったかもしれないがまずは話を聞いて欲しい。

「面白いからプレイ人口が増えるのであって、プレイ人口が多い=面白いとなるのは本末転倒じゃないか」

全くの正論である。だがこれは別の側面から言い換えることができる。

「ゲームの面白さとは別の部分で人を集めることができれば面白さは後からついてくる」


まずはDCGにおけるプレイ人口の重要さについて説明する。(これはDCGに限らずPvPの全てのゲームに当てはまるかもしれないが)

ほとんどのDCGにおける主要な遊び方は「ランクマッチ」になる。これは対人戦を繰り返すことで勝ち星やレートを稼ぎ上のランクを目指すという形式だ。ランクマ、ラダーなどと呼ばれたりする。

ランクマッチにおいて人が少ないとどうなるか。当然マッチング速度が低下する。

マッチング速度の低下は楽しいゲーム体験を阻害するし「このゲームは人が少ない」というネガティブな印象をユーザーに与えることになり負の連鎖に陥る。

しかしこれは本当に最下層のゲームにのみ発生する現象であり、ここまで人が離れてしまったゲームはもう再建するのは難しい。

ではユーザー数が少ないことの最大の欠点は何か。それは「承認欲求を得られない」という点である。


・ランクマをこなし上のランクに到達してもそれを自慢できる相手がいない。

・新しいデッキを開発し結果を残したとしてもそのデッキリストを欲しがる人間がいない。


こういった状況はユーザーのプレイ意欲を大きく削いでしまう。どれだけ面白いゲームだったとしてもそれだけでプレイを続けられる人は少ないからだ。

承認欲求をモチベーションにしてゲームをしているユーザーは主に上位層に多いが、上位層の存在は中下層のユーザーのモチベーションにも直結する。

常に環境の最前線を走り、情報を発信し続ける人間はDCGというジャンルには不可欠でありそういうインフルエンサーが存在しないゲームは衰退の一途を辿ることになる。


プレイ人口の多さ=面白さに直結するという話をさせてもらったが、ではどうやってプレイ人口を担保すればいいのかという話に帰結する。

結論から言うと「強力なIPを使う」これに尽きる。

要するに「すでに人気のある題材をベースにDCGを作る」という事だ。

これはDCGブームの火付け役であるHearthstoneが人気MMORPGであるWorld of Warcraftを題材としていることからも見て取れる。

国内で言うと「神撃のバハムート及び他の自社タイトル」を題材とした「Shadowverse」

ドラゴンクエストを題材とした「ドラゴンクエストライバルズ」

遊戯王をDCGにリアレンジした「遊戯王 デュエルリンクス」

他にも「元ネタアリ」DCGの数の多さが物語るように、いかにユーザーに興味を持ってもらうかというのはDCGにおける最大の課題とも言える。

そしてどんな理由であれユーザーに興味を持ってもらう事はプレイ人口の増加に繋がり、プレイ人口の増加はゲームの面白さに繋がるのだ。



2.UIが快適であること

ちょっと待ってくれ。面白いゲームの条件の話をしてるのに肝心のゲーム内容について全く触れられてないじゃないかと思った人もいるかもしれない。

しかし残念ながらと言うべきか、これらの要素は間違いなくゲームの面白さを形成する要素に違いないのだ。


DCGというジャンルはゲームそのものの手軽さとは裏腹に、ゲーム内の情報量がとにかく多い。

カード1枚1枚に異なる情報が与えられていて、それらを組み合わせてデッキを作ったり対戦するという性質上どうしても情報量が多くなってしまうのだ。

DCGブームの火付け役ともいうべきHearthstoneはこの問題に対して「徹底したシンプル化」という方法で応えた。

テキストをなるべく簡略化し、頻出する能力はキーワード可しなるべく情報量を少なくするように努めた。

そしてそれに加えてHearthstoneの操作はとにかくシンプルだ。大抵の操作はカードをドラッグ&ドロップすることで行う事ができる。これは非常に直感的で分かりやすく、初めてプレイした人でもまず違和感なく受け入れることができるものになっている。

また、自分のターン中であればどんな順番でカードをプレイしてもいいし攻撃も好きなタイミングで行う事ができるという自由度の高さも操作の快適さに貢献している。

さらに操作の先行入力がかなりの手数可能で、演出を待たずして次の操作を「予約」できる。これにより短時間に大量の操作をすることが可能になっている。

Hearthstoneの操作はとにかく快適でありストレスが無い。今となってはそれに慣れ切ってしまっているので大きな感動はないかもしれないが一番最初にプレイした時は操作そのものが快感だった。

Hearthstoneは「情報のシンプル化」と「操作の明確さ」という二つの要素でユーザーにとって分かりやすさを追求したゲームになった。そして「分かりやすいゲームは面白い」

これは理屈ではなく、純粋なゲーム体験の快適さがそう感じさせるのだ。


今、DCGの主戦場はモバイルに移った。スマートフォンやタブレットの画面はPCとは比較にならないほど小さいものだろう。

そんな中でストレスなく操作できる快適なUIを作り上げるというのはとても難しい事だと思う。実際、今までプレイしてきたゲームの中でも操作性や視認性が悪いものはいくつもあった。

だからこそ基本に立ち返り本質的な部分を疎かにしてはならないと強く感じる。




3.誰でも勝てるゲームであること

DCGというジャンルが人気を得た理由の一つとして、誰でも簡単に成功体験を得られるという点があると思う。

例えばFPSなどに代表される他のPvPゲームでは勝つために技術が必要であり初心者がいきなり勝つことは難しいし、勝つことができてはいけないと思う。

しかしDCGにおいて最初の勝利のハードルは著しく低い。おそらく基本さえマスターすれば数時間以内に1勝を上げることはそう難しくないだろう。

しかしそれは裏を返せば技術介入が少ないという事にもなってくる。初心者救済という点にこだわりすぎれば行きつく先はじゃんけんだ。

ただ単に「誰でも勝てる」ゲームを作っただけでは誰も遊んではくれない。ならばどうすればいいだろう。

鍵になってくるのは「錯覚させる」という事だ。

つまり単刀直入に言ってしまうと、「勝った時は自分の力」「負けた時は運のせい」とプレイヤーに思わせることができるようなゲームデザインが理想だ。

では具体的にどのようにそのような意図的な「錯覚」を作り出せばいいのか。例を示そう。


・カードの効果にランダム要素を取り入れる

これがDCGにおけるもっともポピュラーな「錯覚装置」だと思われる。

例えば「プレイ時、50%の確率で相手のユニットのコントロールを得る」というカードがあったとしよう。(例えばの話です。例えば)

おそらくこの50%を制してゲームに勝利した時は深く考えずに純粋に喜ぶ人が多いだろう。しかし一方で相手は「運が悪くて負けた」と思う事だろう。

この勝敗への意識の差を生むために確率というのは絶好の要素なのだ。

これは間違いなくHearthstoneがブレイクした理由の一つで、ランダム要素がゲームにもたらしたのはスリルだけではなく、ユーザーの勝敗体験にも大きく影響を与えた。



・意図的なバランスの悪さを作る①(先攻後攻)

DCGにおいて「先攻(あるいは後攻)が強すぎる」というのは非常によく目にする不満だ。

本来であれば先攻と後攻の勝率は同じになるべきであり、制作側もそれを意識してルールやバランスを調整すべきである。

しかしこれは「錯覚させる」という点においては非常に優秀な装置になる。

たとえ先攻勝率6割越えだとしても、人は勝つと嬉しい。しかし後攻勝率4割で負けるのは明らかに運のせいだという事ができる。

敗北を何かに転嫁するという点において先攻後攻というのは重要な要素の一つだ。


・意図的なバランスの悪さを作る②(強すぎる効果のカード)

例えば「プレイ時、場の全てのカードを破壊する」というカードがあったとしよう。(深い意図はありません)

このカードはこのゲームでは非常に強いのでプレイするだけで簡単に勝利することができる。

明らかにゲームのバランスを破壊しているカードだとしても、それを使って勝利する側は「楽しい」体験になる。一方で負けた側は実力で負けたとは到底思えないだろう。

ここでも強すぎるカードがプレイヤー間の勝敗の意識に影響与えていることになる。


以上の3点が「錯覚させる」という点において重要な要素になるが、ここで一つ問題がある。

それはユーザーも馬鹿ではないということだ。

「誰でも勝てる」ゲームというのは裏を返せば「底の浅い」ゲームという事になってしまう。最初は強いカードを連打して勝っていたユーザーも、次第にそのことに何も感じなくなってくる。新鮮さが薄れてくる。

ユーザーは次第に「用意された勝利」に満足しなくなってくるだろう。

ではそういう時にどうすればいいのか。

その強いカードを使えなくして、別の強いカードを作ればいいのだ。

新たなカードは新鮮な体験をもたらし、またしばらくの間ユーザーを満足させることができる。そしてその時が来たら再び同じことが繰り返される。

これこそがDCGにおける新弾発売とナーフにより繰り返されるサイクルの正体だ。

意図的なバランスの悪さを作り出しつつもユーザーのプレイ体験を損なわないために最も適した方法だと思う。




4.まとめ

「人が多い」「UIが快適」「誰でも勝てる」

DCGにおいて自分が重要だと思っている3要素について書かせてもらった。

もちろん例外もあって、例えばドラクエライバルズなんかはDCGの中ではめちゃくちゃ難しい方のゲームだと思ってるので「誰でも勝てる」に該当するかがかなり怪しいラインだ。(何なら人が多くもないしUIが快適かと言われるとそうでもないので全階級逆制覇まである)

それでも一定の人気があり長く続いてる事を考えると、自分が重要だと思ってる要素なんて実はどうでもいい事なのかもしれない。

一時期に比べるとDCGブームも落ち着きを見せて新しいゲームが出ることも少なくなってきたが、もし新しいDCGをプレイすることがあったらこういう視点で見てみるのも面白いかもしれない。























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