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episode0 #4 英雄
episode0 #3 伊丹憲三
「てめえら少しでも動いたらこのガキぶっ殺すぞ!」
そんなお決まりの脅し文句に屈する形で、全く動けないお巡りさんたち。
と、小学三年生のボク。
皆さん初めまして。ボクの名前は野々村拓真。一応現在刑事なんかやらせて頂いております。
父は普通のサラリーマン。母は普通の専業主婦。二つ上に弟大好きな姉。
普通の家庭に育ったボクは、普通の小学生人生を謳歌していました。
「ちきしょう!ちきしょう!」
下校中たまたま通りかかった郵便局の前。郵便局から勢いよく飛び出してきた男と激しくぶつかり、気が付いたら首もとにナイフをつきつけられ、人生初の郵便局強盗の人質に。
季節は夏。
玄関の朝顔は元気に育ち、アスファルトから立ち上る蜃気楼が足元をゆらゆらとさせる、そんな暑い日の事でした。
「いいか落ち着け!冷静に話し合おう!」
「うるせえ!俺はもう駄目だ!このガキ道連れに死んでやる!」
そうなんです。この犯人さん、だいぶ追い込まれていたんですね。じゃないと流石に郵便局強盗なんてしませんよね。
ボクはもう、汗はダラダラ膝はガクガク。お父さん!お母さん!お姉ちゃん!クラスのガキ大将!誰でもいいから助けて!そう心の中で叫んでいました。
でもまあ、ボクの叫びは誰にも届かず、かれこれ一時間ぐらい過ぎた頃。
警察や野次馬やマスコミに周囲を囲まれ、体力も気力も熱にやられ、ボクも犯人さんも「もう死ぬのかな」そう思い始めたその時。
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筆者∴宗揖 魔術師・真経霊籤占術師