episode0 #7 わっちが青天狗ずら
episode0 #6青天狗
雑居ビルの無機質なコンクリート階段を登ると、突き当りには任侠映画のポスターが貼ってあった。久しく見ていない俳優の主演映画。色褪せたそれは、ここの主の性格を現わしているかのように、渋く色褪せ、鋭い俳優の眼光が階下まで届いている。
「マジでヤバイですよここは。伊丹さん帰りましょうよ・・」
「うるせえなおめえはよ」
警視庁が今最も警戒している反社会的勢力。関東極虎連合。その事務所のドアを伊丹は乱暴に開けた。
「おう。邪魔するぜ虎すけ」
「伊丹さんじゃねえか。珍しいな、まあ座ってくれよ。おい!ちょっと牛乳買ってこい!」
白髪の大柄な男。伊丹とは懇意のようだ。
関東極虎連合初代会長鈴木虎児。元関東随一の暴走族タイガーバーム総長。伊丹とはその頃知り合ったようである。
「来るなら来るって言ってくださいよ伊丹さん。うち酒しか置いてねえから」
「ああ気にすんな。長居するつもりはねえんだ。しかしあれだなおめえ、随分物騒な噂ばっかだなおい」
鈴木はバツが悪そうに頭をかいた。
「ガセですよ。あっちこっちに喧嘩売ってるもんでね」
伊丹は鈴木に顔を近づけながら言う。
「更生したとばっかり思ったんだがな」
「更生しましたよ」
鈴木は伊丹にタバコを差し出す。伊丹がタバコを咥えると慣れた手つきで火をつけた。
「この町であくどい商売をしている連中を絞めてるだけですよ。最近は素人さんまでもこっちの商売に手を出してくるもんだから大忙しです」
「まあ、ほどほどにな」
「それで、今日はどういった用件で?」
伊丹はこれまでの事情を説明した。
ここから先は
3,040字
¥ 100
筆者∴宗揖 魔術師・真経霊籤占術師