俺が見た今年の映画まとめと紹介
映画鑑賞を趣味にするようになってから5年ほど。
俺が好きなのはおもにハリウッド大作。スクリーンに炸裂する札束を眺めてキャッキャするのが好きな観客です。
今年は劇場で52本、そのうち新作映画は45本見たみたいです。
そのうち35本が洋画、アニメが10本、そのうち洋画が3本となっているため、洋実写>>邦アニメ>洋アニメ=邦実写って感じで鑑賞したわけですね。
最初は網羅する記事を書いていたのですが、正直言って好きでも嫌いでもない映画について書くエネルギーが湧かないので両極端に絞って書いていきます。
目次を使うと良かった映画の感想のみが見れます。おすすめ。
まず見たことを後悔している映画を和洋2本挙げます。
洋画で最悪だったのは『アントマン&ワスプ:クアントマニア』でした。
近年だとゴーストバスターズの女性版とか、メン・イン・ブラックの新作がそうなんですけど(どっちもコロンビアやん)、「自分が笑えないギャグでキャラが笑っている空間」に置いていかれるのがマジでキツかったです。
舞台がスペースオペラのパロディ世界なんすけど、『リック・アンド・モーティ』(脚本家が昔書いてたアニメ)なんかだとギャグの背景として見過ごせたチープさや下品さが超大作映画になると悪目立ちして見るのが苦痛でした。
邦画で最悪だったのは『忌怪島』でした。
メタバースを題材にしたホラーなんですけど、制作陣の誰も題材に興味がないか、あってもよく分かっていないのが演出やセリフから伝わってきます。
監督、脚本、役者全員が理解できないまま垂れ流される混乱に満ちた設定説明はまったく要領を得ず、劇中のほとんどで一体全体何を怖がって良いのか分からないのがかなりキツかったです。
いわゆるジャ……SMILE‐UP所属のアイドルが映画初主演頑張っちゃいます!みたいな映画に乗り込んで文句言うおっさん、その状況が一番ホラーかもしれません。
もう一つ怖いのがこの映画が意地悪な構造(ネタバレ)になっているんですけど、ネットで見かけるレビューが好評不評に関わらずほとんどそれに言及していない点。
映画が客を舐めてると客も映画を舐めるんだな、と悲しくなりました。
次に良かったのを5本見た順に挙げていきます。
スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース
スパイダーマンは映画だけで4つもシリーズがあるというおもちゃの販促アニメみたいな構造になっています。
更にややこしいのは4つとも時系列が繋がっておらず、スパイダーマンが登場する平行宇宙での物語という設定になっている点。
このややこしい設定を主眼においたのが「スパイダーバース」シリーズ。今んとこ最新シリーズです。その2作目となるのがこれ。
当然初見だと訳わかんないので以後の文章は極論読まずにアマプラでも配信中の前作を見ることを強く推奨します。「え、まずポスターのこいつら誰?」をはじめとする疑問はたいてい解決します。興味ある人今度ウォチパしよや。
このシリーズの美点。それは何を置いてもまず「絵の美しさ」です。
流行りの情報量がブワーっと目を惹いてキラッキラの絵から、印象画風の筆のタッチ丸出しみたいな絵まで変幻自在の絵柄で目まぐるしく画面の感情をコントロールしてきます。
前作と比較して相当過剰なレベルで、正直最後の方は目が疲れちゃいましたが、凄いことには違いありません。
百聞は一見にしかず……なのですが、なかなか公式に良いクリップが落ちてないな……
まあこんな感じです。
加えて褒めるなら一貫して主人公の成長を描いているため、ややこしい設定を把握する必要がそこまで無いのが良いなと思います。
高校生の主人公が親や気になる子との関係に悩んだりするのがメインコンテンツであり、言ってしまえばその賑やかしに複雑怪奇な設定や前衛的な映像表現が登場するため、それ自体を楽しむ玄人向けの閉じた作品になることを避けているわけですね。
サウンドトラックは既存曲が多め。
ポピュラーな曲や知る人ぞ知る名曲にスピーディに編集した映像を乗っけるスタイルはタランティーノと似ていて、ラッパーの言葉を借りるならHIPHOPっぽいサンプリング精神が強い作品だなと思います。
古い人間であるため、この映画にはこの曲!みたいな絶対的アンセムやテーマ曲があるように思えなかったのが少し残念でした。
ポスターを見ると分かるんですけど、6月公開です。
この記事は見た順なので6月までは琴線に触れるレベルの作品に出会えなかったことになります。
あ、コナンくんの思い出はプライスレスだからノーカンな。
君たちはどう生きるか
わけわからんタイトル。わけわからんポスターのみの宣伝。こっから出てきたのはやっぱり「わけわからん映画」でした。
奇妙な箝口令の意図は最近になってNHKの宮崎駿半追悼ドキュメンタリーの前フリだったことが明らかになったのですが、「わけわからん」状態で映画を見るのが結構新鮮だったのは間違いないですね。
わからん、わからんと言っといてなんですがこの映画、映像的には極めてわかりやすいです。
なぜかと言うと宮崎駿という世界最高クラスの映像作家が設計しているためであり、意図が混乱した映像は皆無で、シーンごとのつながりや感情の流れも丁寧に整理されています。
品質も世界最高クラスの絵描きやスタッフが集まっているので一流の中の一流です。
戦時中という時代もきっちり反映した上でやたらめったら豪華な建物が出てくるのもいつもの感じです。
欄間の装飾なんかも凄くて徳川さんの建物かと思ったわ。
音楽も一切の抜かりなく、サウンドトラックも主題歌もバッチリです。
じゃあなんでわからんのだ、というと普通にお話が迷走しているからです。
一行で即矛盾してしまいましたが、ものすごく明快な語り口で語られる脈絡のない話という矛盾がこの映画の基本となっています。
映像が素晴らしいと観客も考える気になるの典型ですね。
映像と被ってしまいますが優れている点は「宮崎駿的」な演出の描写力です。
怒りに逆立つ髪の毛、生き物の大群、ババアも大群と既視感のあるシーンが色んなセットアップで手を変え品を変え出てきます。
それらの演出によって組み上げられた異世界は構造はめちゃくちゃですが、目を離せない魅力に満ちています。
書いてて思ったんですけど、これってシュール系の話になってますね。
映画繋がりだとデイヴィッド・リンチ(ドラマ『ツイン・ピークス』で有名な人)みたいな感じです。
他の追随を許さないレベルでシーンを磨き上げることでそれらを無作為に近い形で配置しても観客が勝手に意味を読み取ろうとしてしまう、そんな映画になっています。
フォロワー作品が軒並みこけおどしだったのもあって馬鹿にされがちなシュール系作品、あるいは意図せずそうなってしまった怪作ですが、演出力のある人間がやるとここまで面白いんだなと思いました。
ゴジラ-1.0
ゴジラも70年弱と歴史が長くいっぱい作品があるのですが、映画のたびに作中のほとんどが破壊されるので引き継ぎ要素が少なく、どこからでも入ることができるのが観客に優しいシリーズですね。
というかシリーズそんなに見てないのでここについては語れません。
本家東宝版とハリウッド版があるけど前者っすよーぐらい。
この映画の一番気に入った点はハリウッド映画のいいとこ取りをしているところです。
シーン自体はハリウッド娯楽大作からの影響がバリバリで、なんか見たことあるようなシーンがわりと頻出します。
ですが敗戦直後の日本という舞台を活用することで換骨奪胎に成功しており、最終的には誰もが感動できるクライマックスというザ・ハリウッド映画(90年代ぐらいの)な筋書き……に監督の趣味である日本軍の兵器を山盛りトッピングした豪華絢爛娯楽映画となっていてお腹いっぱいになれました。
それゆえか日本人っぽくないセリフや表情が散見されたりします。
例えばピンチの場面でキャラが「まずいまずいまずいまずいッ!」って言うシーンがあって違和感がすごいんですが、脳内で洋画の"No, No, No, NOOOO!"みたいなセリフに置き換えると結構しっくり来ます。
こんな感じで良くも悪くもハリウッドノリの邦画が向こうでウケているというのは嬉しいですね。
またこういう大げさな話はVFX、いわゆるCGがしょぼいとギャグになってしまう宿命にあるのですが、邦実写映画史上最高、と言い切ってしまいましょう。最高のVFXでもってストーリーを牽引する横綱相撲映画となっているのに感動しました。
はじめて見た際、正直言って(日本製ゴジラ?洋画で目が肥えた俺のお眼鏡に叶うかな?クイッ)とか舐めていたところがあるんですけど、最初にゴジラと闘うシーンを見て一気に背筋が伸びたのを今でも覚えています。この体験だけでも見に行った価値があると思います。
今年だと一番のオススメはこれです。
これ以降のタイトルはすべて絶賛上映中、なんなら君たち~すら上映してる映画館すらあるみたいなんで暇だったら見てください。
ただ勧めすぎたのが災いして付き合い含めて5回も見たから流石に飽きてきた……セリフもそらで出てくるようになるし気を抜いたら寝ちゃう……モノクロ版も出るらしいけど見れるかな……
窓ぎわのトットちゃん
皆さんご存知あの黒柳徹子の自叙伝的小説、『窓ぎわのトットちゃん』をアニメ映画化したものです。
正直テレビと縁が薄かったので「ふしぎ発見にずっといる着物の人」ぐらいの印象でした。
原作すら読んだことなかったのですが、友人が見に行ってたので何となく見ることにしました。
するとアニメとしての完成度の高さに驚かされることになりました。
映像の演出、表情の描き方、背景の時代考証と一分の隙もない出来となっています。
なんのことはない日常の話だからと今までは映像化を断っていたらしいですが、本作は圧倒的な表現力でトットちゃんの日常を描写し、戦争という時代背景とコントラストを効かせることで見事に映画として昇華しています。
このシーンのように子供が見ているキラキラとした世界の表現が見事でしたね。
子供の可愛らしいところだけでなく、無力なところや残酷なところをしっかりと描いているのが好印象です。
黒柳さんは昭和8年生まれで、その小学校時代を描いたものなので舞台は昭和14年からの6年間。
なんと立て続けに3つ太平洋戦争が出てくる映画を気に入ったことになります。
この作品はもしかすると戦争経験者が関わる最後の映画になるかもしれません。
激動の時代を生き延びた人々の姿に思いを馳せたいときはまず間違いない一本です。
ちょっと感動シーンが多すぎて男一人だと泣くわけにもいかずガマンするのが辛かった……
ウォンカとチョコレート工場のはじまり
正直言ってこれはなかば意地というか、良かった映画を上から5つ選んでいくと32本見た洋実写映画から選出ゼロになってしまうのが嫌で選んだ節があります。
タイトルを見て「ん?昔あった映画の続編?」と思われた方も居ると思いますが、これは半分当たりで半分外れ。
ややこしいので時系列順に説明します。
まずはロアルド・ダール作の小説『チョコレート工場の秘密』が出版されました。
これを最初に映像化したのが1971年米作品『夢のチョコレート工場』。
次に映像化したのが2005年米作品『チャーリーとチョコレート工場』。
これがジョニー・デップ主演で、大半の人にとっての「昔あった映画」です。
で今作が3度目の映像化ですが小説の前日譚という設定になっています。
そのせいか作中には71年作品の音楽やビジュアルが引用されていて、つながりが示唆されています。
で、71年版に使われていた楽曲「Pure Imagination」。これが極めて良かったので新しい録音が聴けるこの映画を見ることにしたってわけですね。
71年版はサイケな雰囲気が災いしたのか、公開時はさっぱり売れませんでした。
当然この曲もチャート外。ですが映画がテレビでの再放送などで徐々に知名度が向上するにつれ、2010年ごろから徐々にカバー曲として人気を博し始めます。
16年にこの曲を歌っていた俳優のジーン・ワイルダーが逝去したことで一気に配信サービスでの人気が10倍に。45年を経てiTunesのチャート入りも果たしました。
そこからは車のCMや映画のCMに使われたりと引っ張りだこの状態に。で、たまたまこの曲を分析してる動画に行き着いて良いなと思ったのが知ったきっかけです。
半音の動きとかが多めの不安定な伴奏にロマンチックな旋律の歌声がすうっと流れていくのが良いですね。
曲として好きなところは1:50~らへんのワルツ風になって"There is no life I know to~"って歌うところですね。
曲調の通り歌詞では私の想像の世界へようこそ、信じれば叶わぬ夢なんて無いよみたいな話をしています。
歌詞として好きなフレーズは0:55~ぐらいの"What we'll see will defy explanation."ってとこっすね。意訳すると「わけのわからないものをご覧入れましょう」みたいな感じっす。
お菓子の家ってロケーションも好きです。まあ本編見てないんすけど。
この映画はどうかって話からすっかり脱線してしまいました。
母の思い出をたどって最高のチョコレートを作ろうと七つの海を渡って都会に出てきた主人公の青年ウォンカ。
チョコ中毒者続出の街ではチョコカルテルが幅を利かせており、魔法のようにおいしいチョコを作るウォンカは目の上のたんこぶ。
警察をけしかけたり普通に殺そうとしたりとエグ目の手で潰そうとしてきます。
その上悪い大人に騙されて文無しになったりと都会は怖いことだらけ。
そんな中で最高のチョコレートとはなにか、を学ぶキッズ向けミュージカル映画です。
英国人監督を起用したことによる英国っぽいギャグや演出、ブラックユーモアを楽しめるホリデーシーズン向けの作品になっているかなと思います。
また脚本が結構しっかりしているため、これがあそこで…みたいな基本的な映画の楽しみがちゃんと詰まっています。
ちょっと文句をつけるとしたら新規楽曲がそこまで頭に残らなかったことしょうか。『キャッツ』の新曲なんか扱いも曲もかなり良かったのに……
おわりに
今年は結局アニメが一番楽しめて、次に邦画が楽しめて、洋画はなんか違うなあ、と思いながら過ごした一年でした。
やっぱりなんだかんだ言っても自分は日本のオタク、日本のアニメが一番好きなのかもしれませんね。
それとしてハリウッド映画、特に娯楽大作の質は低下傾向にあるのは間違いないと思います。
根本的に娯楽大作というのはお金がかかりすぎるので、失敗しないように続編やリブートに企画が固定されがちなんですよね。
ところが続編やらリブートを出しすぎるとしがらみが増えていき内輪向けとなり、作品の質はゆるやかに低下していきます。
今年も大作映画の体感8割は続編リブートでした。ウォンカと~もそうですしね。
そういった風潮の外にいる大作映画、『ザ・クリエイター』、『キラーズ・オブ・フラワームーン』、『ナポレオン』なんかも出来としてイマイチだったのがキツい一年でした。
一見外にいるように見えて最初以外は監督が80代で実績十分の巨匠。
80にならないとオリジナル大作が撮れないって環境としてキツすぎるだろ。映画監督って仙人か何か?
ともあれ、ここで挙げた5本はみな心に残ったわけなので、映画を見ててよかったなあと思ったわけでした。
映画を見ようと思ったとき、この記事のことを思い出していただければ幸いです。