『魔杖一閃』22年W杯欧州予選 Group.A~アゼルバイジャンvsポルトガル~
皆さん、こんにちは。シルジャベです。この試合の開催時刻は中国vs日本と被っていたのですが、平気な顔でこちらを優先してしまいました。欧州予選、それは魅惑の果実。
【両チームのラインナップ】
恒例のラインナップ確認から参りましょう。まずは下段ホームのアゼルバイジャン、3選手を入れ替えいつもの5-3-2で臨みます。また各種サイトでは4バックを予想していたのですが、いい加減気付いてくれ。このチームは5バック基調なんだ。個人的注目のマフムドフとオゾヴィッチは共にスタメン入りし、中盤の構築に期待されます。
続いて上段アウェイのポルトガルは、出場停止のロナウドを含む2枚の変更です。モウチーニョが加わったことで、中盤は4-2-3-1と予想されます。創造力溢れるアタッカーたちも引き続きスタメンに名を連ね、攻撃力でねじ伏せたい構えでしょう。
最後に日程面のお話を。ポルトガルは直近が親善試合で中2日のパターンで、アゼルバイジャンがやや不利か。アゼルバイジャンは直近2節ともにアウェイでの連戦とあって、ようやくホームに帰って来られました。ここでひとつ息を吹き返したいところです。
【前半】
前半開始です。やはりアゼルバイジャンは5バックの構えで、3番のサラーイが左CBに入ります。早々からボールウォッチャーになっていたりマイナスがガラ空きだったりするアゼルバイジャン、妙な既視感と不安がよぎります。ただ、前の試合より強めの守備に出る意図は伝わりました。ポルトガルのビルドアップに対しても、頑張ってぶつかろうとしていました。ですが、結局のところ戦前の予想通りポルトガルの支配で試合は進みます。意外と(いや、別に意外でもないか…?)書くことが少ないチームであるところのポルトガルは、今日も元気にカンセロがカンセロしていました。持って運んで抜いて蹴るだけなのに、腹が立つくらい巧いですね。本当に腹が立ちます。腹が立つね。ええ。ただ、そんな風に個人の集団っぽく書いているポルトガルですがこの試合はアゼルバイジャンの2トップに対して中盤がフォローする気遣いも見せました。そういうところも憎らしいですね。
いつもより丁寧にやりたいアゼルバイジャンでしたが、ポルトガルはそこを咎めていきます。ショートカウンターが突き刺さり、アゼルバイジャンはコンスタントにゴールを脅かされます。なんとかポルトガル側に圧力を掛けたいアゼルバイジャンでしたが、これは中々に苦しいか。ただ、ポルトガルの圧が弱まった際の繋ぎや運びは興味深く、CBも可能な範囲でキャリーの意欲を見せていました。中盤でスペースがもらえた際の前進も、スムーズで可能性を感じさせるものでした。
しかし迎えた26分、ポルトガルの自力と理不尽が襲い掛かります。右サイドからのクロスがタッチラインに沿って左に流れますが、アゼルバイジャンはボールが割ったと思ったのか足を止めてしまいます。そこからマイナスに戻され、ファーにクロス。抜け出したベルナルド・シウバが角度のない場所からダイレクトボレー。シュートはゴールマウスの左上に突き刺さりました。確かにアゼルバイジャン側がセルフジャッジからバタバタしてしまったのもありますが、いとも容易くゴラッソを叩き込むベルナルドが凄すぎました。個人戦術がオーバーフローしています。
さらに続く31分、ポルトガルに追加点が入ります。右サイド深くからマイナスに戻されたボールをダイレクトでファーにクロス、目先を揺さぶられたアゼルバイジャンの守備網は決壊します。そこからエリア中央にこぼれたボールを、アンドレ・シウバが冷静に蹴り込みました。この2得点に象徴されるように、ポルトガルはとにかく『相手を揺さぶること』に長けている印象です。言うは易しとはこのことで、ベルナルド・ブルーノ・カンセロを筆頭に狙い通り自由にボールを蹴れることを極めた選手たちの存在があってのことです。
そうして、前半はポルトガルの2点リードで終了します。アゼルバイジャンもなんとか中盤・前線に起点を作って前に出ようと奮闘していましたが、やはり力及ばずでした。何度か好機を迎えたものの、そう簡単に決められないのがサッカー。ある程度の試行回数を担保できねば、安定した得点数を記録することは困難なのです。
【後半】
ポルトガルが絡むと書くことが少なくなる説、学会における今後の立証が待たれます。といったところで後半突入です。アゼルバイジャンは2枚替えを実施し、陣形も4バックに変更しました。これは珍しい形で、色々と割り切って攻撃的に振る舞いたい意図が伝わりました。対するポルトガルはパリーニャに代えてルベン・ネヴェスを投入。同じポジションでの変更なので、やり方は特に変わりませんでした。
さて、4バックで4-2-3-1気味に陣取るアゼルバイジャンは前半よりもさらに前へ出ます。しかしそれでもポルトガルは動じず、淡々と相手の喉元に迫ります。後半は前半以上にポルトガルのペースで、はっきり言っていつ3点目が入って試合が終わっちゃうかの問題でした。
そんな窮地にあったアゼルバイジャンにおいて、輝いていたのがGKのマゴメダリエフでした。頭髪と髭が一体化していることでもお馴染み(馴染んでいるとは言っていない)のマゴメダリエフですが、雨あられのように降りかかるポルトガルの攻撃を必死に捌いていました。言うなれば、まるでアゼルバイジャンがリードを死守しているかのような展開でしたからね。悲愴なセービングでした。
しかし、75分にゲームエンドを迎えてしまいました。右サイドを自在に進んだカンセロのクロスに、ファーサイドでジョタが頭で合わせました。シンプルかつ暴力的な攻略に、私は涙を堪えるので精一杯でした。
【試合総評】
ポルトガルの完勝。攻守の全てにおいてアゼルバイジャンを上回り、スコア以上の力の差を見せつけました。『こうできたらいいよね』とか『こう揺さ振れたら面白いよね』を、いとも簡単にやってのけるポルトガルの恐ろしさを感じさせます。対するホームのアゼルバイジャンはいつもより積極的な入りを見せましたが、真の意味でポルトガルを動じさせるには至らなかった印象です。前の2試合とは違った顔が見られて個人的には良かったのですが、それも実らなかった今となっては切ない話です。
【気になった選手】
①ジョアン・カンセロ(27歳・マンチェスターシティ)
勝利したポルトガルからは、良くも悪くも規格外なこのSBを選出しました。『まだ27歳なのか』という印象もあるカンセロですが、生年月日を調べたところ筆者と同じ誕生日であることが発覚しました。ちなみに筆者の方が1つ年下です。だ、だからって好きになんてならないんだからねっ(ツンデレ)。能力面ではまさに自由奔放な傑物で、その攻撃性能の高さたるやSBである必要性に疑問が生じるくらいのレベルです。守備面以外は何をやらせても高水準でこなし、一周まわって腹が立つんですよ。これが。ええ。
②シャールディン・マゴメダリエフ(27歳・カラバフ)
敗れたアゼルバイジャンからは、死ぬ気でゴールマウスを守ったこの人を選びました。個人的な労いの意味もあります。本当に大変だったかと思います。欧州基準で考えた際にはそこまで大きなストロングポイントを持っているというわけではありませんが、とにかく『意欲的』で『真面目』な選手です。チーム全体としてピルドアップを諦めることも多い中で、繋ぐシーンでは頑張って縦のコースを探しているのが印象的でした。この試合でも1本バシッとグラウンダーのパスを中央に出せていたので、ポテンシャルはあるのかもしれません。ショットストップの方は安定していて、俗に言うビッグセーバータイプのGKだと思いました。
【試合結果】
2021.9.7
22年W杯欧州予選 Group.A 第6節
アゼルバイジャン 0-3 ポルトガル
【得点者】
ポルトガル:ベルナルド・シウバ 26'
アンドレ・シウバ 31'
ディエゴ・ジョタ 75'
【警告】
アゼルバイジャン:アラスカロフ 16'
ゴーバーニ 60'
ハフベルディ 77'
ポルトガル:パリーニャ 15'
ヌーノ・メンデス 90'
今回のレビューは以上になります。9月の欧州予選も残り1試合となりましたが、どうか最後まで宜しくお願い申し上げます。ここまで読んでくださった皆さん、ありがとうございました。それではまた!