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短編・実話怪談『心霊”未遂”事件』   第六話 ~狐の嫁入り~

同窓会


 私が小学校の時の友達だったんだけど、同窓会で久しぶりに会って話を色々聞いてたらちょっと段々、ヤバい感じになってきてさ。その話、聞きたい?

 えっとねその子とはちょっと当時、気になっていた子でね?って言ってもほら、あるじゃん。子供どうしのおままごと遊びみたいな、恋愛ごっこ遊び的なやつ?
 まぁでも、そもそも悪くは無かったって感じだったからさ、そんな遊び相手にしたんだけどね。

 で、まぁそんな仲だった思い出もあるし、もしかして・・・って疚しい気持ちで近づいて話してたんだけど、その彼はもう結婚もして子供も居てさぁ、ちょっとガッカリって感じ。

 で、奥さんの写真とか見せてって必死にお願いして見せてもらったんだけどさぁ、それがすっごく美人でスタイルも良くて、もう正に完敗って感じー。

 でも・・・頑なに子供のは見せてくれないんだよね。

 だからもっと酒を飲ませてさぁ、ネタ的に全部さらけ出させようとしたの。じゃあ、どんどん彼、落ち込んでいくんだよ。
 あー、泣き上戸かぁ?って思って何度か席を立とうとするんだけど、どうやらスイッチ入っちゃったみたいで・・・日ごろの愚痴や不満話に花咲かせちゃって。

 で、話が家族の愚痴になった途端、彼の顔もマジになってちょっと怖かった。


「麗子(仮名)ちゃん、整形してる?」

 っていきなり聞いてくるの。ぶっちゃけプチ整形、目がしら切開だけしてたんだけどつい「してないよ」って言っちゃって。すると
「もし、するなら結婚する時は絶対に言った方がいいよ・・・・・・」

 意味深なこと言うんだよね。「なんで?」って聞くと、酔った勢いで赤裸々に色々と話してくれた。



整形


 まぁ、私も女だし分かるけどさぁ。女の世界って・・・男からすれば下らないって思うんでしょけど、どうせね。
 女なんて、殆どが「顔」で決まるのよ、色々と。あ、もちろん、百パー全員がそうだなんて言わないよ?上げ足とか取らないでよね。

 男で言う「身長」みたいなものよ。それが女にとっては「顔」。顔さえよければずっと勝ち組。彼氏がどうとか結婚がどうとかそんなんじゃなくて。
 男も背が高いだけで全員が全員からモテる訳じゃないじゃない?比較的にモテやすいってのがあるんだろうけどさ。すらっとしてて男らしいってのが好きって娘は現に多いし。
 同じように女も顔じゃないって男も、まぁたまに居るよね?大半が綺麗ごとだと思ってるけど、私は。

 で、男がイキって腕相撲とかするじゃない。どっちが強いかみたいな。小学生ぐらいならどっちが足が速いか、とか。そんなマウント合戦が女にとっては「顔の化粧」とか服とかのファッション。まぁ、ルッキズムってやつなのよ。
 仕方がないじゃない。ずっと生まれた時から「かわいい」「キレイ」の世界なんだから。


 男の筋肉とかって、部活があったり試合があったり。野蛮に言うならケンカもやろうと思えばできるでしょ?
 女の顔はどうしようもない。お化粧で頑張る。最初はみんなそうね。でもそれって限界があるくない?

 運動は頑張れば頑張る程、成果が出て将来の夢とか、アスリートまでの道みたいに段階があってさ、次々と目標も出来て正に青春って感じ。結果的に身長が高ければ筋肉量も違ってきて、そこで差が出るじゃない?で、行き詰って歪んだとして、ドーピング?ぐらいかな?

 女の顔って、化粧からどうすんの?って感じ。化粧を頑張れば頑張る程、努力するほどに土台が自分で分かってくるんだよね。お肌、骨格、肉付き、顎とか歯並び、生え際とか鼻筋とか。身長差がどうしようもないのと似てるけど、筋肉量はまだなんとかなるんじゃないの?
 ごめんね、女だからその辺はそんなにわかんないけど。

 何度も言うけど、全員の男、女がって話じゃないよ。あくまでも大凡おおよそ、一般的な話だかんね。


 私もずっとコンプレックスだったのよ。この離れた目がね。子供の時のあだ名なんて「魚」。よくて爬虫類。最悪でしょ。子供なんて残酷なもんよ。

 だから、コンプレックスの解消としての「整形」は仕方がないじゃない。

 最近、身長も足せるって話も聞いた事あるよ。足の骨をワザと折って、折れた箇所を離して骨を作らせる、みたいな。そうやって足を長くして身長を稼ぐんだって。知ってる?後遺症もあるらしく激しい運動は出来なくなるって言ってたけどね。でも、アスリートとかなら別だけどお金も時間も有り余ってて、安心安全だって言われたら、やるくない?どぉ?? 


別人


 なんでこんな話してるかっていうと、彼・・・あ、名前はコウスケ(仮名)っていうんだけど、彼の悩みってのに関係してんのよ。

 子供が出来て、今はもう五才ぐらいって言ってたかな。

 それが全然、似てないんだって。しかも、『どっちにも』・・・・・・

 さっきの話でちょっと推測できてたでしょ?ぶっちゃけ。「ああ、その嫁が整形バリバリの女で、子供が不細工なんだろうな」ぐらいは。
 それだけじゃなくて、両方の特徴と全然違うらしいのよ。

 彼、コウスケはまぁまぁ整った顔してんのよ。で、色々調べたんだって。父親、母親からの遺伝で、まぁこれもあくまでも確率だし隔世遺伝ってのもあるから絶対じゃないらしいけど、まず、父親から引き継がれやすいのが「歯並び」「心臓疾患系」「大脳辺縁系」といった本能部分などが約八十%とか。

 母親からは「運動神経」「身体的特徴」「大脳皮質」といった記憶力・思考・声・知覚など認識能力とかなんだって。

 一般的にだけど、耳や鼻なんかは父親に似るとか、女の子は父親に似るとか言われがちみたいだけど、そのどれもが似てないらしく、それでずっと悩んでるのよ。
 彼の歯並びはキレイで、矯正とかしたことも無い。でも子供は・・・それに二人とも目が二重なのに・・・とか色々。私も「まだ乳歯でしょ?」とか「瞼の肉厚とかって年齢で変わるじゃない」とか、なんとかフォローして頑張ったけどね・・・・・・

 そんな疑念とか、不信をずっと持ちながら暮らしていくのが辛いんだって。真実を隠されていることを気づかないフリをして、ウソのように振舞わなきゃならない自分と、自分の家がとにかく複雑な心境みたい。子供も奥さんも愛してはいるらしい。ずっと一緒だったから。一応に。一般的なケンカや不満もあるにはあるけど、みんながそれを乗り越えてきているんだって自分に言い聞かせながら頑張ってはきたみたいだけど、さすがに別人みたいな子供と隠し事だらけみたいな嫁って状況は、世間一般的に全員が乗り越えてきている訳ではないだろう、って。この時点で結構”くだを巻く”感じで飲んだくれながら言ってたわ。


生立ち


 今思えば、その奥さんの親は両親ともに死去されていて、結婚の挨拶とか行かなくていいなぁ、とか思ってたって。式も二人だけで行う「ベガスコン」みたいな・・・え?知らない??
 ラスベガスにその日中に、簡単に結婚の儀式ができる簡易結婚が当時流行ってて、それと同じ感じでフラってそこに入って、ちゃちゃっ、て。
 本場のアメリカでは酒とかに酔った勢いとかで結婚して、その後、色々揉めたりするカップルも多いとかニュースでも見た事あるよ。

 でも彼はそんな場所での結婚だったけど、真剣に考えて真面目に幸せになろうとしてた。
 新婚当初とかは何にも違和感もなく、一生懸命、仕事も頑張って、子供も授かり順風満帆だったけど・・・ってね。

 もし、彼が心配している通りだったとしても「人間って外見じゃあないだろ?絆って血とか出生とかじゃなく時間だろ?」って・・・そうやって悩みを話されてさ・・・ここだから言うけど、重かったよね。でも色々と考えさせられない?私もプチだけどさ、やってる側の人間だし。どっちの気持ちも分かっちゃうっていうかさ・・・・・・

 で、そんな話をされてからやっと子供の写真を見せてもらったら・・・ちょっと、確かに・・・って。あ、必死にその時は「でもほら、目の色とか似てない?」みたいにまたフォローしたけどね。でも全然効かない。しまいには泣き出してさ。

 自分達の子供の頃の話、普通だれでもするじゃない?何して遊んだとか、何が好きだった、好きな漫画やキャラクターとか。そんな話してちょっと一盛り上がりって基本じゃん?地元が近かったらどこ中?どこ小?とかさ。部活は何に入ってたとかのあるある。

 そんな話をすると奥さんは必ず嫌な顔するんだって。まぁ、嫌な過去があるんだろう、ご両親も早く亡くなってると聞いているし、って、あまりしつこく聞いたりはしなかったんだけど、自分達の子供のことで自分はどうだったかとか、どうしても話すことって出てくるじゃない。例えば塾や習い事とかさ、予防接種とかどうするとか。そんな時にポロっと言ったことがずっと頭に残ってるって。それは

「子供の気を殺さないように育てたい」


 どう?『あなた』は、そんなの気にしない?それとも・・・気にする??


 ・・・・・・

 私はタバコを吸いに、灰皿が置いてある居酒屋の玄関先に出てきた。背後では同窓会で盛り上がる声を背にし、霧雨が舞い顔を撫でてくる最中のふと空を見上げると、まん丸のお月様が凛々と顔を出し見下ろしてくる。点々と月の手前に雲の輪郭が浮き出され、化けるのは妖怪だけではないことを痛感した。


⇩NEXT  未定


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