【小説】『Dystopia 25』~楽園~Phase Ⅰ
あらすじ
閉鎖された大きくて深い森林。
その空間の中心には、秘密裏に作られた大きな集落『コロニア』
そこに今では数千人の人類が住み、独自世界の発展を継げていた。
「衣」 「食」 「住」
全てが「配給・配備」され、なに不自由が無い楽園のような生活が確保されている。
人類が主権による争い、天災や厄災による不幸も無く、貧困や差別も無い平和が約束されたこの世界の未来は、どうなっていくのだろうか。
その先に、本当の「人間」が浮き彫りになっていく・・・・・・
The Three Chosen part Ⅰ
「神は仰られた。この世は破滅へと向かっている」
「神は仰られた。導きし者が必要となると」
「神は・・・・・・」
ブツブツと、チャーリーはずっと跪きながら両手を組み、頭を垂れ下げ祈っている。
「我はお告げを聞いた!神が舞い降り、我に囁くのだ!世の修正に尽力し堕落した人類の選別が必要なのだと!!」
シェーファーは天を仰ぎ、泣きながら叫び続けている。
「疑ってはいけない。欺いてはいけない。驕ってはいけない。嫉んではいけない。蔑んではいけない。卑しんでは・・・・・・」
ベッドの上で胡坐をかいて、両手を股間に埋めながら前後にゆらゆらと揺れ虚ろな眼差しでジムは呟き続けていた。
白衣を着た男性が二名、看護師の女性が一名、大きなマジックミラーの裏手で被験者である三名の男性を観察している。
チャーリー、シェーファー、ジムの三人は各々のベッド周辺に自分のテリトリーを主張しているかのように机や椅子、ベッドの配置や聖書などの本を使ってパーソナルスペースを確保していて、決してお互いに馴染むことは出来ないでいた。
「ロキッチ医師、本当に大丈夫なのでしょうか・・・・・・」
「大丈夫だ、フィリップ君。まぁ見ていたまえ。聖母を主張していた女性のケースを君も聞いただろう」
「・・・はい、でもあれはお互いに顔を合わせていない状況での、所詮、記事投稿ではないですか。こうやって直接の接触は危険ではないですか?」
「ああいった手法では時間が掛かりすぎてしまう。効果と結論は『聖母投稿』の前例がすでに証明しているのだから、後は効率的でより効果的な方法の模索をするだけでいいんだよ。この三名の同室は、その第一歩だ」
新任助手のフィリップは目前のマジックミラーの向こうに、各々独自の祈祷をしている被験者三名の状況をメモ書きしながら、ロキッチ医師に自身の不安を投げかけていた。
「今後、どのような方法を取られるのですか?」
「先ずはそれぞれの認識をこちらから誘発し、定期的な個人面談にて他二名について聞いて行こうと思う。その際にある程度の印象操作をして意識を自分自身や幻覚的な存在から、同居しているどちらかの『自称GOD』もしくは『自称・預言者』『自称・救世主』の人物もその見えている神様と同様程度に考え、意識をせざるを得ないようにする必要がある」
「なるほど・・・・・・」
看護師は淡々と医療品の整理作業を終わらせて、その場から何も言わずに去っていった。
Colony Ⅵ
ライトは食料の配給を受け取りにやってきた。前列は既に約30人ほどが並んでいて、だいぶ朝も早く来た方なのにとライトは少し肩を落とす。
行列の先はこの第6コロニー、村の最北端に聳えている、まるでこの壮大な|Colonia《コロニア》全体を支える背骨のように建ち、上階の支柱としての役割とその階層、他の各コロニーへの通過点としても重要なものである。ライトはその塔を見上げながら、じりじりと進む行列をひたすら地道に進んでいた。
このコロニアの世界では、この塔(Central Staircase Tower)通称CSタワーと呼ばれる塔を物理的な意味だけでなく精神的にも実質的にも中心として動いている。殆どの人たちがこのCSタワーを崇拝する『セントラル教』に殉じていて、ライトも一応に”そう振舞って”はいた。
「よう、ライト。あれ?ウェルバーはどうしたんだ?」
配給待ちの行列、最後尾を見張っているオーヴィルがライトに声をかけてきた。
「ウェルバー兄さんは多分、また”あの人の所”へ・・・第3コロニーに行ったと思うよ」
「へぇ、そりゃお盛んで羨ましいねぇ。大分と気に入られたんだなぁ。ウェルバーに言っといてくれ。”親友が嫉妬してる”ってな」
「ああ・・・・・・」
お互いに手の平を見せ合い、オーヴィルはまたライトの背後へとどんどん並んでいく”表層階の民”達の配給列の更に最後尾へと向かう。すぐさま思い立ったかのように振りかえり
「あ、そうそう。じゃあ配給の担当者がいつもと違っていたら俺んとこに来いよ。最近、また配給を余分に貰おうとする輩が多いからさ。お前も一人できたなら一人分しか貰えないかもしれん。その時は俺が証人になってやるから」
「サンキュー」
今度はお互いにハンズアップのサインを交わし、逞しく頼りになる男は警棒を片手に去っていった。
ライトはオーヴィルや兄のウェルバーに比べると小柄で、いつも何かと助けられている。その分、悪く言えば面倒くさい雑用や小間使いはライトの仕事でもあった。手先が器用で様々な物作りや修理、料理や裁縫なんかはそこらの雑な女子よりも上手く、日常的にはいつも頼られていて三人は持ちつ持たれつ仲が良かった。
オーヴィルは主に警備隊員。ライトは修理屋と土や木などで作った食器や小物を作ったりし、兄のウェルバーはコロニア周辺に生い茂っている森へと木材を伐採しては加工する、木こりと大工の両方を生業としている。
仕事といってもここでは毎日二回の配給があり、食事に困ることはない。しかし何かをしていないと悪魔に憑りつかれて『廃人』となり、もはや”人ではなくなってしまう”ために各々が工夫し何かと理由を作って作業をする。それが現代の生き方の一つとして教会でも教えられる。
教会では『生気塾』という教室があり、ほとんどの子供はそこで色々と基本を学ぶ。ウェルバーとオーヴィルはそこで同じクラスとして出会い、幼馴染としてもう十年以上の付き合いで正真正銘の親友同士。ライトはその三歳年下で、小さい時からずっと二人の後を子犬のように付いて行っては遊び相手になってくれていた。ライトが他のコロニーの子などにイジメられてはどちらかが助けてくれて、ライトにとってはオーヴィルも兄のように慕い憧れの男でもあった。
最近、実兄のウェルバーは表層階、第3コロニーの”女帝”に気に入られ作業場である森と、巷では”Amazonis”と揶揄されている女だけが住む第3コロニーの行き来しかしなくなっており、ライトは少し寂しい思いをしていた。オーヴィルにその不満話をすると当たり前にようにバカにする。
「もうお前も十八才でいい大人なんだから、彼女でも作れよ」
オーヴィルに何人か紹介をしてもらいデートもするのだが、いまいち発展しないのでライト自身はもう恋愛は諦めかけていた。自分にはそういった色恋沙汰は向いていない。そう思いつつも、ライトはそれとは別にすごく恋をし興味があるものがあった。
今日も遥か彼方上空を優雅に飛んでくる大きな鳥。
一日に二回、朝、夕、とこのコロニアの最上階、誰も踏み入れたことがないと言われている三階フロアに飛んでやってくる。親代わりである二階の上層階から落りてきたという一人の医者『チェバラ』氏が言うには、二階フロアではその鳥を崇拝する『The Big H Gate』という宗派を崇拝しているそうで、ライトも内心で言えばそちら側の人間だと自覚はしているが、誰にも公言はしないし出来なかった。
言えない理由はその医師『チェバラ』氏の現在の行方である。
HERO
ライトとウェルバー兄弟の両親は約17年前の『フロア抗争』に巻き込まれて死んだ。炎が勢いよく迸る部屋の入口で幼いライトを抱えて立ちすくむウェルバーをチェバラは見つけ、それ以来、孤児となった二人の面倒を見てくれていた。
ライトにとってはチェバラが親みたいなものだった。
1才になるかどうかという幼かったこともあり実の両親の記憶は殆ど無く、チェバラとウェルバーの二人から聞く話でしか認識ができないでいた。
そんな親変わりだったチェバラも、1年前に行方不明となる。
医療エリアと称される第6コロニーでドクターの筆頭だったチェバラの消失の影響は甚大で、チェバラの下で医療を学んでいた医者達はバラバラになり各医師と共に罹っていた人々とコロニー移動をしてここの人はかなりの人数が減った。
チェバラは元々上階層の出身で、下層へと”落ちる”人は珍しかった。
下のフロアの住人は自分たちの居住地としている場所のことを「表層階」と呼称しているが、上層階である二階の住人は「下層地」と呼んでいて、当然かのようにそこにヒエラルキーが存在してる。故に17年前の『フロア抗争』は、上層階の住人が食料分配の配分を贔屓しだしたことにある。
下のフロアはCSタワーを中心に円形状に第1コロニーから第8コロニーまで区切られてはいるが、それぞれの往来は自由でCSタワー内と外部の扉から繋がっている。そこに柵は全く無く、どこのコロニーも差すらも無いみんな平等であるはずなのに、各コロニー代表という「ボス」が出現しだす。民間、個人もお気に入りの場所を設定し長く定位置でテリトリーを主張するようになり『フロア抗争』とは、誰が仕組んだ訳でもない自然に各ボスが上層階と密約を交わし、なんらかの取引をし始めたのが切っ掛けだった。
人の欲望とは底なしたる由縁が証明される。
事態の収束は当時の第8コロニーと第1コロニーのボスが『戦犯』とし公開処刑され、幕を閉じることとなった。
それ以来、第8と”第3コロニー”が『独立宣言』という名の『鎖国宣言』を開始しCSタワーからのみの人の出入りと限定し、外部通路は完全に閉鎖した。食料や物資の配布はCSタワーから上層階の管理を経て配られ大型のタワーモニターで毎回その光景は中継されるようになった。
その抗争の立役者となったのが上層階から”下界”してまで第6コロニー代表となったチェバラ氏で、その責任の一環を感じてライト達を見つけた時に自責に駆られ、その後も医師としての知識と技術を休むことなく奉仕していくことになる。コロニアでは住民同士の争いや事故による外傷が多く、医者の中でも外科医は重宝される。森の奥へと入っていく一部の”勇者気取り”が野生のキノコや動物を狩って食べ、食中毒や破傷風に罹ることはあるが他の殆どの疾患は主に成人病、贅沢病で脂肪肝や糖尿病に苦しむ人が多い。
各コロニーは最近になり更に特徴が顕著になり、第6はチェバラ氏を筆頭に医療エリアとなりつつあったように、他コロニーも特徴が出てくるようになる。ウェルバーがずっと入り浸っている第3コロニーは女性のみのエリアへと変わっていった。
ウェルバーは、チェバラが『悪魔が住まう森』へと入り、帰ってこれなくなったのではないかとも考え、ウェルバーを筆頭に仲間を連れて何度も探しに行くことになる。
Devil's Forest
コロニアの外の世界はずっと広い森に囲まれていて、深部へは誰一人として行って帰ってきた者はいない。なので『悪魔の森』と呼ばれ今では誰も足を踏み入れようとする者すらいなくなった。噂では丸い口ばしで大きな目、体毛は無く火を噴きながら雷鳴のような叫びを上げて躊躇なく襲ってくる悪魔や怪物、死神が蠢いているそうな。
100年以上前には毎年、各コロニー代表で最低一名づつの勇者を決めて新境地へと散策させていた風習があったそうだが、それも必然と代表会議で廃止となる。
ライトの兄、ウェルバーの云わば「林業」は一番危険な行為でもあり、古くからの名残で一部の人の間では勇気ある名誉として騎士のように持ち上げる者もいて、お年寄りの多くの人はウェルバーを褒め称えていた。しかし、一部では危険な行為、悪魔への挑発的な行為として禁止を訴える人も多く、伐採エリアなどは定められ幹ごと切り倒すのではなく枝葉を刈り取ることまでしか今では許されていない。切り倒す場合は必ず苗を埋めてから行うように管理されて制限されている。これも昔、多くの人が伐採行為をどんどんと無作為に繰り返していくと、例の悪魔が大量に表れてその炎や魔法でコロニア人類の絶滅の危機が訪れたと『コロニア伝記』に記されているほどだった。今でも異端として『悪魔崇拝者』は下層エリアのどこかに隠れ潜んでいるそうだが、その大きな意味としては『森から民を守る』という大義名分であると主張している。
噂では、森に住む者『Forester』の一族が居るとライトは聞いたことがあるが、見たという人は殆ど居ない。彼らもまた森に住まう悪魔と同様に伝説的存在ではあるが、兄のウェルバーは遠目ではあったが見たことがあると数年前に言っていた。
ライトやThe Big H Gateが空へと憧れる者がいるように、森へと憧れる者が居る。
分類すると
下層フロアは塔を中心に八方に広がるように8つのコロニーがあり、それぞれのプロパガンダで共鳴した同士が住んでいる。そこには分け隔てなく支配的な『セントラル教』を基本として指示する者を総称して
『Center』
少数派の『悪魔の森』を崇拝する
『Forester』
森に住んでいる者と、崇拝する者、両方を差してそう呼応している。
上層フロアでは
『The Big H Gate』
が支配的だが
『Fátima Gate正教』
というごく一部の有識者だけが所属する秘密結社のような団体が存在する。この団体は信仰や崇拝対象そのものが謎とされ、一切、少なくとも下層界には存在自体が知られていなかった。
下層界に比べて上層界の住居は人数が少なく、約十分の一程度なため第〇フロアのセンターやフォレスター、といった総称は無く下層民、表層階からはただの上層民で片付けられていて、お互いに一般人は深入りしない風潮が自然と出来上がっていた。
17年前に起きた『フロア抗争』の時のように癒着と差別をし出さなければ、十分なほど以上に送られてくる配給があるので揉めることは基本的には無い。
Folklore
コロニアの歴史としては当初
『Fátima Gate正教』
と呼ばれていた教えが今ではほぼ「伝記」となり、聖書にすら乗らなくなってから現在では
『The Big H Gate』
と変わり、上層界ですら元のファティマは更に一部の人間しか伝えられなくなった。その選ばれた者も守秘義務が課され、外部の者へ情報が漏れた場合、メンバーは全員、自害をすることになっている。
ライトは、チェバラ氏の行方が不明になる直前にチェバラからこの『ファティマ』について聞いていた。
「ライトよ。お前が『The Big H Gate』に興味を持ち、空への憧れを抱いていることはもう止めはしない。しかし、必ずこのことは誰にも、お前の兄ウェルバーにすら言ってはならない。必ずここでは『Center』として振る舞い、セントラル教会にも通いなさい。そうすれば、ある秘密を教えてあげよう」
「分かりました。先生が僕のゲート教入信を認めてもらえるのなら、僕の口は石のように固く閉ざします」
「もしお前が上層界へと行き、そこに住めるようになった時があるならば、必ず入信させよう。そして、私が成し遂げられなかった世界を見てきてくれ」
「先生は、その世界を見ることを成されないのですか?是非、ご一緒にその夢を叶えましょう!」
「・・・恐らく、それは叶わぬ」
「何故です?」
「・・・よいか、ライトよ。この下層界はCSタワーを中心に全てが成り立っている。各コロニーは物資や食料などの全てがあのタワーから配給され、命を繋いでいるからね。それがセントラル教の基本でありCSタワーを大事にすることを目的としている。昔、一部の人たちがタワーを破壊しようと目論む者たちが現れ、配給が止まり多くの餓死者を出したからだ」
「はい。そう教会でも教えられています」
「そして、ゲート教とは上層界の更に上、最上階に設置されているGateを崇めること、そしてそこに降り立つ『鳥』を神としている。ゲート教にとってCSタワーは神への”通過点”、その道であり神そのものではない。そのことを表層階の民のセントラル教徒はあまり良くは思っていないのだ。だからここではセンターとして振舞う必要がある」
「はい。それも重々承知しております」
「では・・・表層階では各コロニーへの移動は比較的に安易だが、上へは行けなくなっているのは何故かな?」
「フロア抗争が勃発し、上層民と表層民の各コロニー代表が結託し制御と統制を行うことになった」
「そうだ。みなが記憶にあるフロア抗争。それは実は一回目ではない」
「え?!過去にも争いがあったのですか?!」
「ああ。記述では”三回目”。『第三次フロア戦争』だった」
「そうだったのですか・・・・・・」
「上層界では二度とそのような争いが起きぬよう、下層との交流を必要最低限とし、配給の分配も徹底的に行いようになり、今がある」
「僕たちの聞いている話、つまり、その『第三次フロア戦争』の原因として第1と第8の代表が上層界の代表と密約を交わしたとありますが、それは事実なのですか?」
「まぁ、概ねはそうだが・・・その意図は別にありそうだな」
「と、言いますと?」
「第一次フロア戦争の原因は上層界でも定かではない。もはや触れてはいけない禁句となっている。第二次フロア戦争の原因は・・・『上層界の怠慢』だ」
「怠慢・・・・・・」
「下層への配給を行う者がいなくなったのだ。そうして下層では暴動が起き、当時の上層界の民は・・・粛清された」
「粛清?!」
「ああ。現在の上層界の民とは、元々は表層階の人々だったのだ」
「そ・・・そんなことが・・・誰がどのようにしてそれを選んだのでしょう」
「・・・記述、伝記では『選ばれし者』と書かれてはいるが、私はそうは思ってはいない。”偶然にその時に上っただけの者”たちだろう」
「たまたま・・・奮起した人たちってだけですか」
「恐らくな。私はその後、上層界で生まれ育った。そしてファティマ伝記を読み聞いたことを搔い摘んだ。この地に降りて来てからも医者として、多くの高齢者や有識者の昔話を聞いた。各家庭に密かに囁かれ伝承されている話を聞いて集めてな。具体的な記述や証拠は何も無い。しかし、祖母やそのまた祖父などに当時を見てきた者たちの、伝承のように聞いてきたその『噂話』を集めて共通点を抜粋すると、そういうことになってゆくのだ」
「で、では他には・・・その、神とはなんです?!あの、大きな鳥の正体は?!」
「ファティマ伝記にはこう記されている」
・・・・・・
「・・・では、あの鳥は神ではなく、使者であると?!」
「ああ。そうみたいだ。ファティマ・ゲート正教での神とは、またその先に存在している者だった。しかし、その教えが今では変わり『The Big H Gate』となっている。何故そうなったのか。それも私が解明したいことの一つでもある」
The Three Chosen part Ⅱ
ドカンッ!・・・ドン、ドン!
研究所の監視室で寝ていた助手のフィリップが、何かの大きな衝撃音で目覚めた。デスクに置いてあった資料か何かを落としたのかと思い足元を見るが、その視線の先周辺には何も無かった。
・・・ガシャァン!!
食器やコップのような陶器が割れる音が隣の部屋から聞こえ振り向き顔を上げると、ミラーの向こうで二名の男が掴みあっていた。
「うるせぇんだよ!てめぇ!!」
「お前の頭がおかしいんだよ、ボケぇ!!」
チャーリーとシェーファーが胸ぐらや腕を取っ組み合い、ケンカをしている。フィリップは急いでロキッチ医師に事態の報告をしに、その場を急いで去っていった。
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