短編・二人称ホラー小説『あなた』 ~マッチング・ゲーム~ (前編)🌟無料🌟
前書き
グロ怖を最大限に出してみました。
私は映画で言うと
「セブン」デビット・フィンチャー監督作品
「ミスト」スティーブン・キング原作
といったBAD ENDも大好きですし
『A24』企業作品
「ミッド・サマー」「MEN」「パール」etc…
も大好きですので、同じ趣味の方でしたら問題ないかと思います。
が
そうではない方は『絶対に見ないで』下さい。観覧注意
※こちらの作品も『あくまでも』フィクションです。
落し物
あなたは見たこともないメーカーのスマホを拾った。と、いうかあなたが友人と何気なく来た、駅前にある有名チェーン店のカフェに座り着いたその席のソファー椅子に、”それ”は寂しく置いてあったのをつい手に取ってしまった。
全く見たことも無いあなたの知らないスマホで、メーカー名だけでなく大手携帯会社のキャリアロゴすら書いていない。が、スマホだということだけは裏手上部のカメラレンズで分かり、無機質で真っ黒な薄っぺらな四角いモノが暗く、あなたの顔だけを反射して映してくる。
「・・・あれ?スマホ替えたの?」
向かいに座っている友人が、拾い上げたスマホを手にしてただ眺めているだけのあなたに気がつき、まるで髪を切った女子に気を使って話しかけるかのように聞いてきた。
「・・・え?いや、ここに落ちてたんだ」
そう言ってあなたは元にあった場所へとそのスマホを戻した。
「え、ちょっと見てみようよ」
友人は席から立ち上がり、あなたの隣に置いたスマホを拾い上げてその流れで隣に座り込んでくる。
「置いとけよー、どうせ直ぐに持ち主が取りにくるって」
少し、色々と邪魔臭くなってきた。
「いやいや、これ落としたのがもしかして”可愛い娘”かもしれないじゃん」
友人はまぁまぁの遊び人ではあるが、ここまで見境が無いのかと逆に関心した。
「自尊心が高い系でさ、かわいい子ならトップ画面は自分と友達とか彼氏にしてるだろうし、先ずはそれを見てからだろ?」
あなたも少し期待というか、面白がってきてしまっていた。
アプリケーション
あなたは友人からその真っ黒なナゾのスマホを手渡され、右サイド上部、丁度右手で持った時に親指が当たる部分の電源ボタンらしき物を押してみた。どうせロックが掛かっていて二人で解除コードの推察が始まり、何度か失敗し強制ロックが掛かって終了だろうと思っていたが、スマホの画面はあなたの顔を読み取り解除された。
「・・・え?」
「ん?・・・お!ロック設定されてないじゃん!」
あなたにはスマホが、まるで持ち主かのようにインカメラで顔を認識して解除した一連の流れが見えた気がしたが、そんな訳がないし気のせいだろうと思い直した。
「うお!かわいい!マジで??」
あなたの横からスマホ画面を覗き込んでくる友人のテンションが上がって、無邪気な顔で画面をガン見している。画面にはバックがキレイな青空と澄んだ海が広がり、茶髪で瞳が大きな可愛らしい女の子が自撮りをしている写真だった。
あなたが何気に横へとスライドすると
「お!いいねぇ、おいどっちが好みだよ。俺はさっきの茶髪かなぁ」
先ほどの明るそうな子とは少し雰囲気が違う、大人しめの黒髪で前髪が眉毛ラインまでで切られ、サイドを垂らしポニーテールで束めている女の子の顔が映し出されてきた。
友人は女の子の画像に目が釘付けになっているだけだったが、あなたは異変に気が付いた。
「・・・なぁ、このスマホやっぱり変だって。アプリが二個しか無い」
「ああ?・・・どれ」
友人は少し強引に黒いスマホをあなたから取り上げ、左右へとホーム画面をスライドし続けている。
「・・・本当だな。通話やメールアプリすら無いぞ」
左のホーム画面、元気な笑顔の茶髪で写っている子の上部には『Mad Satan』と書かれた、悪魔か鬼のような顔のゲームみたいなアイコンが一つ。
右のページ、前髪が短い黒髪の子の上部には『TAMA NEGI』と書かれた、玉ねぎをカットした断面のアイコンが表示されている。
スマホ裏のカメラレンズは全く何のためにあるのかも分からないように、カメラアプリすら表示は無かった。上へとスライドさせても、プルダウン、アプリ外を長押し、ダブルタップやピンチなど、様々な操作をしてもアプリ一覧や設定が現れることも無く、二名のかわいい女の子の笑顔と二つのアプリが行ったり来たり、まるであなたを嘲笑うかのように見つめてくるだけでした。
埒も明かなかったが、つい、指が当たってしまったのか、画面いっぱいに『Mad Satan』という黒い悪魔の顔に赤い文字が表示されるが、直ぐに画面は切り替わり白とピンクのフレーム背景に、可愛らしく清楚系のアナウンサーのような女性がまるでガイダンスをするかのようにこのアプリの概要説明が入りました。
「・・・なんだこれ?ゲーム?なのか??」
「マッチングアプリって、最初に言ってるぜ?」
「なんだか面白そうじゃね?とりあえず次へいってみようぜ」
友人はもはや楽しそうでした。
次へ進むと『now loading』の画面から中々終わらず、あなた方は待ちきれずに拾ったスマホを置いてドリンクを飲みながら談笑を交わし出しました。
操作
あなた方はカフェで一段落した後、再度スマホを見てみるとまだ『now loading』画面のままでした。
「持って行こうぜ。後で警察にでも届けておけばいいって。俺がバイトしてるとこもさ、こういったデカいチェーン店は貴重品とかは特にその店に預けても、個人情報とかもあって責任取れないから取りに来たって渡せないし、そもそも受け取れないんだよ。閉店後までなにもなけりゃ仕方なしに全部警察に届けるし、俺らが言って渡そうとしても警察に行けって言われるだけだよ」
友人はそう言ってスマホをあなたに手渡してきました。なぜか全権があなたにあるようにしてくる友人のそういった所を昔から気に入らなかったが、この場は素直に受け取ってカフェ店を後にします。
「どうする?」
友人は答えることも無く車のロックを解除し、いこうぜ、と言わんばかりに親指を車へと向けて颯爽と乗り込みました。あなたも助手席へと小走りに、片手には黒いスマホを持ちながら乗り込みます。
友人が車を切り返している間、手にしたスマホの画面を見てみると
「・・・あ」
『now loading』画面は終わっていて、画面は横表示になっているのであなたスマホを横にしてよく確認して見てみると、そこは森の中のようでした。
「なぁ、画面、映ったわ。森?公園かなぁ」
「え、マジで?じゃぁ、カラオケでも行くか」
あなたは直ぐに警察には行かないのかと少し思いましたが、確かにこのスマホの今後も気になったので制止することは無く従います。
「・・・で?なんか動かせんの??」
友人は急かすように、フロントガラスの前方とスマホの画面を何度も見返します。
「ああ・・・・・・」
あなたは何とか分からないなりに、やったことのあるゲーム操作のように画面の右にある矢印をタップしたり、ゆっくり前方へスライドしたりして見ますが、画面は動きませんでした。左上に薄く、ボタンのような表示があったのでそこをタップしてみると、少し遅れて画面は大きく揺れ、今度は画面が縦表示になりました。あなたはまた追いかけるようにスマホを横から縦にして、様子を伺う。
「動いたわ・・・けど、どうすんだ??」
縦表示にすると、画面の下に上部のボタン表示と同じく薄く前後左右の方向を示す部分が、まるで一人称のFPSゲームのようにベストな配置で重なりました。このアプリは縦表示で扱うのが正しいことが分かった。
試しに前方の矢印をタップすると、三秒ほど遅れて画面が進んだような動作を開始する。
「あ、多分・・・いけた」
「おお、がんばれ」
友人は運転をしながらだが、あなたに期待をよせた言い方をしてきました。
「これ、結局ゲームなのか?マジで実写みたいな画面だぜ。あの、声を出すと直ぐGAME OVERになる、なんとかSCREAMっていうPCゲームみたいな」
「あ、それ知ってる。ゲーム実況者のYouTube動画で見た事あるわ。あれスマホアプリでも出てたの?めっちゃやってみたい」
「俺いま全然、普通に喋ってるけどスタート地点には戻らないから違うと思うけど、でもグラフィックとか雰囲気はあれにマジ似てるわー。でも動きはめっちゃカクカクで反応誤差、レスポンスはめっちゃ遅い。しかもなんか一歩づつみたいな感じでイライラする。このどこのだか分からないスマホのスペックがショボいのか、動作が重いのかも。データはアプリすら何も無さそうなのにな。結構、古いんか?」
「・・・あ、あれかな。もしかして、これって要はマッチングアプリなんだよね。これ、歩いてるのが女の子でさ、その場所を俺らが当てて行けってことなんじゃないの?ほら、ストリートビューで場所当てるGeoなんとかってゲームとかもあったじゃない?あんな感じのを活用して混ぜたやつなんじゃないの??」
「ああ、そんなのもあったねー、それは俺やったことないけど。でも、わざわざスマホ一つ犠牲にしてまで?」
「ほら、この辺、町おこしついでみたいに『街コン』ってやってたじゃない?俺らも大学ん時にやってたさ」
「ああ、そういえば参加したことあったなぁ。んで、あの時は相席居酒屋でただ奢らされただけだった」
「まぁまぁ・・・で?ちょっと色々周辺歩いて探ってみといてよ」
「ああ・・・・・・」
あなたは反応にイライラしながら根気よく森のような場所をウロウロと歩かせてみました。すると
「・・・ああ、終わっちゃった」
「ええ??」
友人はカラオケショップの駐車場に停めながら困惑した表情をした。
「なんか、ポイント制みたいだ」
「あー、あるあるだなぁ」
「そーなの?」
あなたはマッチングアプリを使ったことが無かったので、仕組みが分かっていなかった。
「登録時に何ポイントかあって、チャットか何かやり取りするとポイントが無くなるんだよ。でも、紹介だけでポイント貰えるなら良心的だな。お前、登録しとけよ」
「ええ、なんでよ。お前がしろよ」
「別にいいよ」
友人は特に気兼ねなく登録を始めました。
「こういう時の為の”ステアカ”ってお前作ってないの?」
「何それ。そんなの無いよ」
「ってか、今どきポイント制ってのも古いけどな」
「なんか詳しいな、お前」
「まぁ、暇潰しだよ・・・はい、100ポイント入ったってよ。紹介された方は150ポイント入るんだって」
「へぇ・・・一歩、歩かせると、1ポイント減るみたいだな」
「そんなのいいから、場所、分った?」
友人に催促され、あなた方はスマホ画面にくぎ付けになりながらプレイヤーを動かしていきます。
「・・・ってかさ、どんな心境で相手はこんな地道に歩いてんだよ。頭おかしいだろ。やっぱりこれただのゲームなんじゃね?」
「自分の首ってか、視点とか動かせない系?」
「・・・右上これかなぁ。さっきは何も反応無かったんだけど、さっきは横になってたからかも。・・・あ、動いたわ」
「・・・あ、下した、下に向けてって・・・この服装、ほら、左の子じゃね?」
「左って・・・さっきトップ画面の?」
「おお。この胸まである茶髪の髪色とさ、トップスの服の色も同じだぜ。ああ、おっぱいでけぇ・・・・・・」
確かに色や肩紐の感じは似ている。けど、あなたはどうしても信じられませんでした。それに画面からは異様な雰囲気があって、少し気味悪く感じていた。
カラオケ
とりあえずあなた方はカラオケの個室に入り、それぞれ飲み物を用意して歌うことなくこのゲームの続きを開始する。
「・・・俺にやらせてよ」
友人はやる気満々で手を伸ばしてきました。
「ああ、俺はもう疲れたわ。全然進まないもん、これ」
そう言ってあなたはトイレへと席を外す。
・・・戻ってみると、友人はあなたを待ち構えていたように手招きします。
「ちょ、お前も登録してポイントをくれ」
「・・・え、もう無くなったの?」
「いや、アイテムを拾ったんだけどさ、カスタムするのにちょっとだけポイント足らないんだよ」
「えー、なんのアイテム?」
「銃」
「はぁ?じゃあ完全にただのゲームじゃんかこれ」
「まぁ、いいから。なんとなくここが分かった気がするんだよ。ほら、二駅隣に行けばでっかい公園あるじゃん。あっこの何もない森の奥深くにポツンと一つだけトイレがあってさ、そこのトイレに『出る』って噂があっただろ?」
「いや知らねーよ、俺はこの辺、地元じゃないんだから」
「ああ、そっか。ガキの頃によく肝試しにそこ行ってたから分かるんだよ。絶対あっこだって。この落書きなんか一緒だし」
「・・・二駅、隣のとこ?」
「ああ。それもちゃんと確かめたいんだ。なぁ、頼む。登録するだけじゃん」
あなたは渋々ではあったが、銃というワードが出てきたのでただのゲームだと少し安心したのもあった。マッチングアプリという類のものはどうしてもロマンス詐欺などのイメージと、加工された写真で一喜一憂するのはバカみたいだと思っている方の人間である。
全く使っていない、前のスマホで使っていたアカウントがあったのでそのメールアドレスを使って登録だけして、ストアじゃなくネット上から同じアプリをインストールしチュートリアルらしきものを飛ばし、急かす友人を尻目に”当たり前”のように注意事項なども飛ばして『同意する』を押した。
「・・・OK、ありがとう。お前も見て、これ」
そう言われ、銃を構える姿とその先に確かに公園によくあるコンクリ打ちっぱなしの公衆トイレがあった。
「これで・・・ポイントで『弾』が手に入るんだ」
「撃ってみてよ」
・・・パシュッ!
珍しくその銃には初期からサイレンサーが付けられている。変なゲームだなと、あなたは異様さを改めるかのように思った。
GAME OVER
「マジ、これ操作”タルイ”なぁ」
「何語だよ、それ」
「かったるい、タルイ、なぁ」
あなたは友人独自の造語に少しまたイラっとされながら、自分は暇だしせっかくなので何か歌おうと”デンモク”を手に取とうとした。それと同時に
突然、友人が操作しているスマホから英語で外国人が何かを言っている男の声が、なかなかの音量で聞こえてきた。
「な、なに?!」
「お・・・俺が一番、驚いたよ・・・・・・」
その後、あなた方二人は固まったまま聞き入っていると、何かの音楽が流れてきた。女性が歌っている声だが、逆再生でそれをリピートを続けている音楽が鳴りだした。そして逆再生が通常になったと思いきや、またそれをリピートする。
「おい、なんか、気持ち悪いよ・・・・・・」
あなたは不気味に感じましたが、友人は何か、どこか面白がっているようだった。
「はは・・・なんだろね。バグじゃない?野良アプリならまぁあるあるだよ。OSのバージョンと相性が悪いんじゃね?」
あなたは気軽に歌う気分ではなくなり、デンモクを取ろうとした手をグラスに方向転換して残っているコーラを一気飲みする。
心を落ち着かせる為にホットレモンティーを入れに、またドリンクバーへと向かった。
・・・紅茶を入れて部屋に戻ると、友人は「かったるい」と言いながらもずっと根気よくゲームをしている。
すると
「あぁー!やられたぁ!!」
と、悔しがっていた。その手元のスマホからは、次におどろおどろしい男性の声でそれをスロー再生させた、また何か違う音楽が流れている。
「・・・なにが?」
あなたは少し怯えながらも、友人にビビっているという素振りを見せない様に、気丈に振る舞い何があったかを聞いてみた。
「ああ、いや、子供のような、女のような影みたいなんがバンバン出て来てさ、手にした銃で何体かは倒したけど、弾が無くなって・・・したら、何体もの影に襲われてゲームオーバー。ポイントが一気に全部無くなったよー。ポイントはライフみたいなものでもあるんだな」
「もう、いいじゃん。諦めようよ」
あなたはもうウンザリだ、と言いたいようにマイクを友人に向けて言った。友人もカクカクとしたゲームに疲れたようで、渡されたマイクを受け取り二人でカラオケを楽しんでその後は帰りました。
再起動
あなたは自宅へ帰り、入浴や明日の準備など必要なことを済ませてベッドへとダイブし、まったり、ゆっくりタイムへと突入する所でした。PCの起動待ちの間、自分のスマホでSNSチャックをしようとした時、登録だけした『Mad Satan』のアプリが目に飛び込んできた。
一瞬の沈黙とフリーズの間が生まれ、あなたの思考回路までもがPCの起動読み込みと連動するかのように固まってしまった。
我に返る様にPC画面の方を見る。まだ立ち上がっていなかった。あなたの感覚では数分ほどボーっとしていたかのように感じたが、実際には数秒間しか経ってはいない。『離人・現実感喪失症候群』といわれるような症状が、あなたはたまに感じることがあった。
PCが起動しパスワードを求められてきた。あなたは入力していつものようにとりあえずYouTubeを立ち上げ、推しの動画を再生させてSNSチェックに入る。
すると、通知バーにあの『Mad Satan』からのお知らせが入ってきて、あなたの好奇心のダメ押しをしてきた。通知を見ると
と表示され、また意識せずにいつの間にか通知バーをタップしてしまっていた。瞬間、その一瞬の浮遊感の間に意図せずなんらかの操作をしていることが稀にあり、それは寝落ちしながらイイネ❤ボタンを押しているかのごとく『Mad Satan』アプリが起動に読み込みを開始し出す。
《まぁ、たしか紹介ポイントが150Pあるんだよな》
ポイントカードの余った分を消化するかのような感覚で、あなたはまた『now loading』を待ってみることにした。
待っている間コーヒーが飲みたくなり、台所へと立ちケトルで少量の水を沸かして、いつもと同じ割合のインスタントコーヒーを入れる。いつもあなたは砂糖なしでミルクありのコーヒーを好んでいました。
操作が長丁場になると考えたあなたは、YouTubeで長時間のライブ配信を選択してからコーヒーを一口だけ飲み、ベッドへと戻ると『now loading』は完了し、真っ暗などこかの部屋の天井が映し出されていました。
例の如く矢印をタップしても反応が無い。なのでまた左上のボタンマークをタップすると、
≪・・・うぅう!・・・うぅ・・・・・・≫
と、前回との違いが場所や舞台だけでなく、音声も聞こえてきました。画面はまた大きく揺れて天井の照明などの残像を映し出し、ゆっくりと画面が”起き出した”。あなたは音声データがアップデートされたのか?それとも今回のプレイが自分のスマホだからか?と仕様の違いを安易に思いましたが、それにしてもまたなんだか映像と同じくリアルで生々しい声優などでは”ない”女性の声が聞こえた。
とりあえず前回の時と同じく操作が可能な状態になったので、下部にある矢印マークをタップしていくが、画面は動くことがなくキャラクターがベッドに座り込んだまま、奥の部屋らしきソファーの背面とその奥には大き目の液晶TV、半透明な矢印部分にはよく見るとプレイキャラの膝が見えている。
画面は自動的に、勝手に天井から足元までぐるりと映し右へ左へと動きだす。その際に見えたのがベランダのカーテンが開かれていて、外のネオンや外灯の明かりでこの場所はなんとか視認できているようだった。
あなたは変だなと思い、もう一度左上のボタンを押すと
≪あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・・≫
画面は小刻みに上下と揺れ、痛々しい声がスピーカーから聞こえてきた。画面はベッドの一画をずっと映し、荒い呼吸音が微かに聞こえる。
「・・・な、なんなんだ?」 ≪・・・な、なに??≫
プレイキャラとあなたの疑問の声が同時にダブった。ますます混乱し、あなたは怖くてなにも出来ずに、ただ画面を眺めることだけしか出来なくなった。
ふと画面外上部のP表示の数字を確認すると、150Pだったのが100Pになっていた。この左上の過剰反応の操作には一回に付き50Pを消費するようだということが分かった。
呼吸が落ち着いてきたのか、画面はフラフラと、その視点はまるでゾンビかのように揺れながらリビングからさらに奥へと歩いて行く。いくつかの扉が現れて、一般的なマンションの一室のような間取りが伺えたが、リビングから玄関方向だと思われる方の扉を開けて入っていくと、もう外部からの明かりが届かずに暗すぎてあなたには殆ど見えなくなりました。カメラが何とか光を取り込もうと自動でISO感度を上げることで、画面の暗所ノイズが激しくなり更に認識が難しくなっていきます。
画面は光感度を上げてなんとなくの輪郭だけは分かる範囲で、もう一つの扉をあけて中へと入って行く。どうやら洗面所のようです。鏡の前で立ち止まり、影のような輪郭だけがあなたには見え、どうやらこのキャラは自身の姿を鏡で見ようとしている風でした。
≪・・・いや、いや、なんで・・・こんな・・・いやぁぁぁぁぁ≫
悲痛な声が聞こえてくる。その迫真な声にあなたは手が震えてスマホを持つ手に力が抜けてしまい、危うく落としそうになりました。なんとか掴んだその指には左上のボタン部分に親指が掛かり、あなたは冷や汗を感じます。
《今ここで・・・この指を離したら・・・・・・》
≪・・・やだ・・・パパ・・・ママ・・・助けて≫
その声であなたは確信を得ました。これはゲームでは無いと。
なんとか助ける方法がないかと画面に話しかけようとしたその時、指を離してしまい、また
≪あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”・・・・・・≫
画面が”痙攣”し激しく揺れ、鏡の影も細かな振動とは別に身体が左右へと大きく動く。そして
≪・・・バアァァァン!≫
何か湿ったような、スイカが破裂するときのような破裂音と共に、画面は真っ暗となりアプリは強制的に閉じられました。
ミーム汚染
あなたはまた離人症のような感覚でスマホを持った状態から一時、動くことが出来ませんでした。
なにが起きたのだろうか。
薄っすらとしていた疑問や疑念が、虚ろぎから確信へ傾きつつあったが、まさか、というゲームや映画の見過ぎによる現実感の非現実感がゲッシュタルト崩壊した状態にて混乱している。
放心していると
≪ビーーーーーーブーーーーーー・・・・・・≫
スマホからノイズが鳴りだし
≪ガーーーーーージーーーー――・・・・・・≫
PCからもノイズが響き、画面には粗悪なフラッシュ動画がピカピカとカラフルに映し出されていました。
ビープ音のようなノイズの後には別の電子音が繰り返し流される。所どころまた逆再生を繰りかえす。
電子音の音階が徐々にオルゴールの音に変わり、その後、何かを読み上げているような女性の声。英語ではない国の、数字を秒読みしているような・・・・・・
あなたは鳴り響く音と、目にしてしまったフラッシュ、そしてスマホからも同じ画面が流れ眩暈と頭痛に苦しみだし、正気を保つことは直ぐに限界へと達し、意識が無くなっていきました・・・・・・
⇩参考動画 ※観覧注意
https://www.youtube.com/watch?v=JgH-Spu0bMI&t=39s
NEXT⇩ ~マッチング・ゲーム~後半