見出し画像

CHIMERA ~嵌合体~ 第一章/第一話 『百』

割引あり

あらすじ

資源が枯渇し、世界各地で外交による冷戦と目立たぬ戦争が広がる。

日本、ソ連、ドイツの三国が手を組み、1930年に頓挫したキメラ実験を再開。
この無益な戦いに終止符を討つべく研究者たちはDNA、RNA遺伝子の研究とその配合、着床を試行錯誤していた。

浅倉 主任は念願の部署に配属されるが、慕っていた大野 教授が正気を失い、極秘での単独研究にて人類の禁忌を犯し、研究内容に懸念と疑念を感じだす。

ある日、一体のキメラ実験体が単為生殖で産卵し孵化。逃げ出した分裂体の捜索に当たるが、様々な原因にて混沌と化し収拾が困難に。

研究所は半壊。攻防から生き残ったモノと、残された資料から全貌を探り報告しなければならない。

※この作品ジャンルは『サイエンスホラーミステリー』です。グロ要素が苦手な方は観覧注意お願いします。




○○○○年
 〇月 〇日

所 長 Ilya Ivanov 殿 

Next Das letzte Bataillon研究報告書

  1. 目的 obedienceかつ反乱要因の撤廃とegoismの消失

  2. 期間 無期限

  3. 結果 自我の制御不能、暴走により主要研究員の死亡と実験体の消去により中止

詳細・経緯

⑴本件に関する状況
・生存者
 浅倉 祥子あさくら しょうこ主任 1名
 54名の職員中、53名が死亡

 その他生存者 1名

 本研究は一時停止中。
 継続の有無、処分の規模、および今後の対策と指示を求む。

・実験体状況
 本件による死亡確認済実験体 10体
 うち不確定 3体
 (火災に巻き込まれ組織が破壊。DNAの摘出と鑑定確認中)
 研究所の半壊、炎上にて自然消去の可能性高。監視カメラにて検証。

 残存実験体 2体(分裂体含む)
 
 逃亡中の実験体 1体
 現在探索中 見つけ次第確保もしくは消去。

⑵研究所内部と設備
・現在清掃、点検中
 研究データと一部設備は確保、回収済。
 捜索隊以外の人員は最終現場検証と原因の究明に尽力中。完了次第、本建築物そのものの継続の有無も回答されたし。

⑶経緯説明
 大野 明《おおの あきら》」 研究科長の上層部報告書とは別の、『部署内研究報告書』と日記の内容も胆略化して記す。

 浅倉 主任と|近藤 紀子《こんどう のりこ》 分析科長との聴取音声データ

 一部、大野 研究長の録画日記データ、未提出報告書は浅倉 主任と近藤 分析課長の反応を期すためリアルタイムでの同時確認を指示。


⑷以下、文字起こし音声データから


提出者 近藤 紀子 分析科長 聴取音声データ 1


「おはようございます、浅倉さん。大丈夫ですか?」

「・・・はい、おはようございます」

「まだ心身ともに療養できていないでしょうけど、ごめんなさいね。でも、記憶が鮮明なうちに聴取だけはすませておきたいの。よろしいですか?」

「だいじょうぶです」

「なにか体調など、不具合があればすぐに言ってください。衛生班を呼びますから」

「ありがとうございます」

「では、順をおってあなたがここに配属して、今回の事件が起きる予兆や前兆、きっかけのようなものがあれば、そこから話してください」

「はい。・・・ええっと・・・・・・」

ここから先は

14,357字 / 1画像

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?