母方の祖母の話と 母方の祖父の話 (山の怪・ご先祖さまの訪問)
私の母方の祖母は私が20歳くらいの頃寿命で亡くなっているのだが、その祖母の話。祖母は若い頃から体が弱く療養や入院で留守がちだったそうで、幼い母と母の弟は親戚中をたらい回しの幼少期を送ったと聞いている。母には、他に10歳以上歳の離れた姉を筆頭に、兄、兄、兄と上にも四人の兄弟がおり、全部で六人兄弟である。母より歳が上の兄弟はどうしていたのか聞いてないが、母は年子の弟と二人きりのセットで親戚中あちこちで世話になっていたそうだ。
祖母の家は現在の愛知県新城市(旧南設楽郡鳳来町)で、祖母の在所は静岡と愛知の県境の山奥の村だったという。詳しい住所は聞いたことがないが、私はずっとあと(ずっと昔かも)その場所を知る(というか思い出す)ことになる、が、その話はまたいつの日か。
川奈まり子さんの「少女奇譚」に掲載していただいた河童の話もこの祖母の家に泊まったお盆付近の何処かでの体験談だ。
河童みたいなもんを見た話をすると母と祖母が山の怪異の話をしてくれたのを覚えている。
祖父(母方の)が戦争から帰ってきて、その仕事は所謂木こりというものだったので、当然山に入るのだが、山にはオキテがあって・・・
(今思い出しながら書くので加筆修正するかもしれない)
「もしも山で、いけどもいけども景色が開かれないだとか、いつもの道を歩んでいてもいつもと違う道だったら、マッチでもタバコでもイイから火をつけなさい。そうすれば、視界が開けていつもの道になるから」「それかもしくは刃物を振りまわしなさい」
「もしも山で黒いもんを見たら、見なかったことにしなさい」
など・・・他にもいくつか聞いたけど、忘れてしまった。思い出したらまた書きます。
「おじいさんの仕事仲間で〜〜さんという爺がおってな、そん人がね山に仕事に入って、三日間降りて来んかったんよ。したら、四日めの昼間にそん人が道をふらふら歩いとって、村の衆が世話をしたけんね・・・捕まえたとき前は漏らしてびしょびしょで、目は虚、脱力しはってて・・・捕まえて連れて帰って、寝かしとると我に返ったようで、ひぃぃ・・・おそがい(怖いの意)・・・おそがいぃぃぃ・・・・見てない・・・見てない・・・と、一週間くらいおかしく怯えとたちゅうよ」
この話がすごく怖かった。聞いた時よりも、その晩にそういうことのあった山の中にあるこのばあちゃんちにお泊まりなことが怖くて怖くて、怖かった思い出。祖母が亡くなって20年以上経ってもうあの山のお屋敷はない。
また、こういった話も聞いたことがある。
それは、私の母の縁談の時の話。母は、家が貧しかったので中学を出たら働きに出た。活発な性格だったので、その頃から男性とも遊んだりお付き合いをしていたようだったが、早く落ち着かせようと祖母は、母が17〜8くらいになると縁談をたくさん持ってきてという。母も自分はあまり男性を見る目がないような気がしていたらしく、お見合いがあればとりあえず会ってみようと断らずに出かけていた。そんなお見合いも20回めくらいの頃、祖母が夜寝ていると、僧侶のような格好をしたものが二人やってきて、深々とお辞儀をして去った。次の縁談は決まると思ったそうだ。
そしてお見合いの日、母と祖母の待つ部屋に入ってきたのは、昔の言い方がわからないけど今風に言うと、背が高くて顔も誰がどう見てもイケメンのおじさんだったと言うことで・・・母が最初に思った感想は「えっ!私はこのオジイサンと結婚するの???かっこいいけど・・・おじさんじゃん・・・」(声には出してません)
と、思っていたらその男性の後ろから背の高い、おとなしそうで顔もとても地味な若い男性が入ってきて、「あ・・・よかった若い・・・」と思ったそうな。
※この縁談がまとまりました。
※私が不思議に思うこと。母方の祖父の存在。母や母方の祖母の話にあまり母方の祖父は出てきません。多分ですけど、戦争中は海軍でそこそこエリートだった(資料や兄弟の話からそう思われるけど盛ってるかも)祖父ですが戦争が終わって田舎に帰るとただの酒飲みの働かない親父だったとのこと、戦争中など知らず昭和30年に生まれてる母からしたら、尊敬できる父親はおらずむしろ大嫌いという話しか聞いておらず 祖父は人生の後半は酒で死にかけてるので そもそも家にいなかったのでは・・・と勝手に思っている
おまけ
その母方の祖父の死にかけた話。祖父から聞きました。その頃私は小学生で、母はお正月の2と3日を一泊でと、お盆の13、14、15日のどこかで一泊の一年に2回だけの里帰りというルーチンだった。それに、私と弟がくっついていってました。(私の父親は送り迎えはするものの、家業の関係で泊まることはなかった。)お盆に泊まった後帰る日の昼食時、毎年「あなたの知らない世界」というコーナーが、お昼の番組の中にあって、それを見るのがちょっと楽しみだった私。祖母や祖父や叔父も、怖いねえ。不思議だねえなどと言いながらなんだかんだ雑談していると、祖父が「わしもあの世を見たことがあってね、ひろちゃん、聞きたいか?」と話しかけてきたことがあった。
「うん聞きたい」「おじいちゃんが入院しとった時に同じ部屋の隣で寝とった爺様が死んでね、それから、毎晩起きると体が動かん。死んだ爺様がおったベッドが青白く光っとる。目だけは動かせるが、見たくないんだが見てしまってな。でも、光っとるだけで誰もおらなんだが・・・」
幾晩かすると慣れてきてまた光っとる、体動かんがと思っとると・・・
「その時は死んだその爺様がわしの顔を覗き込んでな・・・そら、おそがかったに。でも声も出せれんでね。心で、ナンマンダブナンマンダブって言うしかないんだけれども」
その絵面を思いっきり想像してしまったので、私はかなり寒くなったことを覚えている。。
気がつくと花畑にいたという。歩いていると川があって、見たところ歩いて渡れそうにも思ったとのこと。川の向こうに木が一本立っていて、その手前で例の、病院で隣に寝ていた、なくなった爺様が手を振っていた。
「それでどうしたの?」
「そこまでだな覚えとるのは。次に気が付いたら家族が呼ばれて皆泣いとった」
祖父はそれから2年かけてなんとか退院した。退院してからの祖父は家族もびっくりするくらいおとなしくなって、近所の子供たちや、旅行者にススキで作る仏法僧(鳥)の民芸品の作り方を教えたり、畑を耕したりしていた。私が知っている祖父だ。そして、数年後。夕飯を食べて「おやすみ」といって寝室に入り、、老衰でなくなった。もっと色々怖い話とか山の不思議な話、聞いておけばよかった。
思い出したらまた書きます。