”評価”とは一体なんなのか(後編その3)
プロ雑用です。
引き続き評価についての考察!
今回からは評価に与える人間の認知バイアスについての解説。
その一番目の特徴「脳は、最初に”好き嫌い”で判断する」について。
人は常に”好き嫌い”で反応する
ほとんどの人は、こう言われると驚くはずです。自分のことを理性的で論理的だと思っている人ほど、そんなバカな、と思うでしょう。
しかし、認知機能に関する研究や実験から、これは事実であることが明らかになっています。参考資料として前回紹介した書籍には、さまざまな実験とその結果がエビデンスとして提示されています。
そして、そのどれもが、すべての人間は最初に感情的な反応、つまり”好き嫌いで反応する”ことが示されているのです。
感情がヒューリスティックを呼び起こす
人間は、生活の中で、無意識に多くのことを判断しています。その時、思考を伴わない判断のことを、直感と呼ぶわけですが、その道のプロフェッショナルと呼ばれる人々の直感は、他人からみると信じられないほど的を得ていて、あたかも神秘的な能力のように感じられる場合が多い一方、ときに全く当てにならず、大失敗をもたらすことも知られています。
直感によって大失敗するケースには、感情ヒューリスティックが深く関わっています。ヒューリスティックとは、簡単に言うと「経験則」のこと。
その中でも特に、感情に基づいた経験による直感を、感情ヒューリスティックと呼びます。
感情によって経験が想起されるとき、最初に反応するのが「好き嫌い」の経験です。それまでの人生なかで出会った人、された事、思い出などなどを基準に、目の前の人物事に対して「好き・嫌い」を無意識に判断しています。
この感情ヒューリスティックは、あらゆる場面でよく働きます。
↑の話は、ある投資責任者が、とある会社の株を買うかどうかを、その会社の商品に対する感情、株価とは関係のない”好き嫌い”で決めてしまったという事実を元に述べられています。
さらに重要なのは、他人が見たら明らかな問題のすりかえを、当の本人は全く気づいておらず、明確に合理性をもって判断した、と思い込んでいるということです。
イケメンはすべて許される?坊主憎けりゃ袈裟も憎い人間心理
これは政治にもよく反映されていて、例えば好みの党、あるいは政治家が主張する政策は、正しい主張であると思いこむ癖が我々にはあります。だからこそ「何を言ったか」より「誰が言ったか」が、とても重要なのです。
主張の正しさより、顔が嫌いのほうが強い記憶なのです。
逆にいえば外見が好みの人の主張は中身を問われません。
少なくともファーストインプレッションはそうなのです。
多くの人に嫌われている人の主張より、好かれた人の主張のほうが、同じ内容でも遥かに支持されます。多くの人にとって耳が痛い正論を主張する人が、多くの支持を得られない、それどころか徹底的に嫌われることも、これによって説明できます。
ハロー効果は、感情的な印象で、その人の見たもの聞いたもの触れたもののすべてを”自動的に”評価します。最初に判定された”好き嫌い”は、その後の行動にも大きく影響され、すぐに覆ることはありません。一瞬で判断されたことが、後々もずっと続くのです。
たとえば、現在の日本のように清潔であることが当たり前になった社会では、見た目が汚らしく、だらしない格好の人は嫌われやすいですよね。これは生存本能が、群れへの異分子の侵入に危機感を感じることを、好き嫌いという反応として再現されているわけです。群れ全体が同じように汚らしく、だらしない格好であれば、嫌いという反応は生まれにくい。
坊主憎けりゃ袈裟まで憎い、というのは、まさにこれを指します。
形の悪い野菜が売られない理由
とある店の野菜売り場で実験が以下のような実験が行われました。
売場A:形のきれいな野菜だけを並べる
売場B:形のわるい野菜だけを並べる
売場C:形のきれいな野菜とわるい野菜を同じだけ並べる
(※価格はすべて同じものとする)
さて、どの売場が一番売れなかったのか?
ここまでの話を理解されたかたはすぐに分かると思いますが、売れ残りが多かったのは売場Cです。形のきれいな野菜だけが売れて、形のわるい野菜はほとんど売れ残りました。同じ形がわるい売場Bは、売場Aと変わらないという結果が出ているのに、です。
つまり、比較対象のある無しで、人々の行動は大きく変わってしまうことを示しています。ふだんの買い物をするときに自分が感情的に反応している、と思っている人は、ほとんど存在しないでしょう。上記の野菜売り場に訪れた人も、意識している人などいなかったはずです。
感情の動きは自動的に行われ、自分ではほとんど気づかないレベルで日々の判断に影響を及ぼします。つまり、これは自分の考えや意見は、かならず”好き嫌い”という感情によって支配されている、ということです。
さらにこれを厄介にするのが、続く二番目の特徴
「脳は、連想して”好き嫌い”を強化する」
です。
ということで、続きはまた次回。
それじゃ、また👋