kintoneモンスター図鑑2
プロ雑用です。
さて、モンスター図鑑二匹目は…
膨大であいまいな文字の塊・びっぐでーたん
当時のkintoneアプリは、ほとんどの項目が、文字列(1行)と、文字列(複数行)で作られていました。文字列はフリーワードで制限がありません。全角半角アルファベットひらがな漢字…じつに様々な文字を自由に入力することができます。いわゆるフリーワードテキストです。
勘の良い方は、もうすでにお気づきだと思いますが、そうです、フリーワードテキスト、特に長い文章は、データとしては、ほとんど役立ちません。
さらに日本語のハイコンテキストが、これに拍車をかけます。
状態異常技:バベルののろい
効果:同じ現象を、さまざまな表現に変えてしまい、
別の現象のように錯覚させる。
どういうことか、もう少しくわしくお話します。
カスタマーセンターのオペレーター・ワニ子さんは、
お客さまから、こんなお問い合わせを受けました。
プレゼントでうさぎさん用に買ったが、
間違えて自分のサイズで買ってしまったので、
返品して、うさぎさんに合うサイズが欲しい
そこでワニ子さんはマニュアルにもとづき
「返品は受けるが、交換はできない。
一度返品してから、返金されたお金で、
あらためて正しいものを買ってください」
という内容の返答をしました。
お客さまは納得し、対応は完了します。
ワニ子さんは、対応履歴アプリに以下のように記述しました。
サイズ間違いによる交換希望。
交換不可を伝え、返品後の返金で
買い直してもらうようにお伝えする。
別の日、ほとんど同じ事象のお問い合わせを、
こんどは別のオペレーター・アヌ美さんが受けました。
マニュアル通り対応を行い、今回もお客様は納得して対応は完了します。
アヌ美さんは、対応履歴アプリに以下のように記述します。
トラのサイズで買ってしまったので、猫のサイズへ買い直しを希望された。
買い直しのためには、一度返品してもらう必要があるとお伝え。
お金が戻ったら、改めて猫のサイズを購入してもらうようとお伝えし、
お客様が納得されたため、通話を終了した。
この2つは全く同じ対応にも関わらず、記録の内容が異なっているため、
データとしては違うものとして扱われます。
なぜでしょうか?
それは、文脈を理解できるのは、抽象的概念を持つ人だけだからです。
具体的な「言葉」が揃っていないため、一見異なる内容のように見えてしまいます。これが数件なら良いでしょうが、数万件溜まっていたら…?
さらに、抽象化の解像度は人によって異なるため、
多くの解釈を生まれる効果があります。これが「誤解」です。
状態異常技:こえまね
効果:別の事象を、似た言葉で表現することで、勘違いさせる。
さて、フリーワードでは、入力した人によって言葉が変わることがありますが、さらに日本語には「一文の最後まで読まないとわからない」という特徴があります。
どういうことでしょうか?
”完了”という言葉があります。
言うまでもなく、物事が終了したという表現の一つです。
ですが、完了の後に”〜していない”とつくと、完了という言葉の意味が否定されます。逆に”完了する””完了した””完了している”などと文脈によって単語の意味を強化したり打ち消したりされます。
つまり、完了という単語を抜き出しても、それが文脈上どの意味になっているのかは、結局、人が確認しなくてはならないのです。
さらに、完了、終了、終わる、おわり…などなど、同じ意味の単語は無数に存在していますし、「対応が完了」なのか「通話が完了」したのかも、前後を確認しないことには判別できません。
「対応が完了しているデータ」を除外してみよう、
と、考えても実際には、ほとんど正確なデータは出せない、
ということになります。
結局の所、びっぐでーたんも、
アプリ本来の目的が失われてしまったことで、
記録することがアプリの目的となってしまった、
「手段が目的化」したことで生まれた悲しいモンスターなのです。
文字列フィールドのご利用は計画的に。
モンスター図鑑2は、
膨大であいまいな文字の塊・びっぐでーたん でした。
それじゃまた。