第3回名曲探訪 『長崎は今日も雨だった 』〜酒に恨みはないものを〜
今回は内山田洋とクールファイブの『長崎は今日も雨だった』を取り上げたいと思います。
「雨にしめった賛美歌の〜」で始まる『長崎の夜はむらさき』など雨が似合い、異国情緒あふれる街長崎が舞台で、愛しい女性を探しに長崎まで来た男の歌です。今の時代だとストー◯ーと言われても仕方のないことをやっている気がします(笑)
この歌で一番好きなフレーズが
「こころ こころ乱れて 飲んで 飲んで酔いしれる 酒に恨みはないものを」
です。だめだと分かっていてもつい酒に当たるが如く呑み潰れてしまう。何かに当たらないとやってられないという経験は誰にでもあるのではないでしょうか。非常に人間臭いものを感じます。
ある人生の先輩に嫌なことがあったらどう忘れるかと聞いたら「酒だね。やめた方がいいよ」と言われたことがあります。確かに健全な方法ではないですし、まして人に勧められる方法ではないですよね。でも「自分がやる分には」ということでつい酒に手を伸ばしてしまうのでしょうね。
また「分かっちゃいるけどやめられねぇ」で有名な植木等の『スーダラ節』に通じるものを感じます。
落語家の立川談志は「業の肯定」という概念を提唱しました。業の肯定とは簡単に言うと「人の弱さを認めること」です。落語の世界には酒や博打が止めらなかったり、間抜けな人間が多く登場します。談志はそのようダメ人間こそが人の本質であり、人の愚かさは愛すべき性質だと看破しました。
『長崎は今日も雨だった』の男も業を背負った人間であり、酒に恨みはないと分かりつつも酒に当たるが如く飲み潰れてしまう。そんな弱さが人間臭くて魅力なのではないか、と思わせくれる歌だと思います。
『長崎は今日も雨だった』は様々な歌手がカバーしていますが、僕はテレサ・テンバージョンがベストだと思っています。特にラストの「こころ こころ 乱れて 飲んで飲んで酔いしれる 酒に恨みはないものを」のフレーズは痺れます。前川清のオリジナルも悪くないのですがどこか客観的な感があります。しかしテレサバージョンはどうしょうもなくヤケ酒をしている情景がありありと浮かんできます。お時間のある時にでも是非聴いていただきたい一曲です。